デーテーペーな1日 デーテーペーな1日


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11月29日(Sun)


「手紙」

 うかうかとやり過ごす時間の、なんという気ぜわしいことか・・・そう、あなたとの思い出にひたる暇もないままに、またもや時間だけが通り過ぎてしまったようです。

 現実の不確かさに比べて、通りすぎた「時間」というモノの確かさだけがわたしの裡に残されている事に呆然とすることがあります。
 あれからも、書いては消しであなたには何度も手紙を差上げようとして、結局は果せぬままでした。自分自身があなたになにを伝えたいのかが良くわからないせいもあります。いや、例によってあまりに不明すぎる想いの故に躊躇していただけなのかも知れません。

 つくづく懲りないヤツです。

 お元気でしたか? 相変らずの日常でしたか? と書いても、あなたの「日常」についてわたしは何一つ知る由もありませんでした。あなたの身体についてなら、どこにホクロがあって、どこに口づけすれば一番に感じるのか、或は・・・じれたあなたが漏す喘ぎ声までわたしの記憶の中に残っている気さえするというのに、現実に生きるあなたについて知ることのあまりの遺漏ぶりに、改めてわたしは呆然とするしかないようです。

 そう・・・ただ一度出会っただけのあなたの肉体は、今ごろはあの森の奧の厚く堆積した腐葉土のしたで蠢く甲虫達によってきれいに食べ尽くされ、真っ白に退色した骨と長く伸びた黒髪だけの存在となっている筈です。わたしの手によって埋葬されたあなたの肉体は何年もかけて根を張る木々によって何重にも護られ、その褐色の土くれの棺で眠りつつ、いつしかうつろな空洞そのものと化していくのでしょう。長い時間をかけて土と石の存在に戻ろうとするその肉体を思い出す度に、わたしはこうして宛先のない手紙を何度も書き続ける事になるのだと思います。

 虚無へ向けた手紙こそがわたしとあなたを繋ぐ唯一のきずなであったことに改めて気づいたようです。

 どこかに見失ったもの・・・それはつまり、わたし自身の手によって秘かに埋葬されたものだったようです。


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