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8月30日(Sun) 明け方、ふと目覚める。 外は未だに薄暗いままで、ゆうべから降りしきる雨は一向にやむ気配すらなく、ひさしを伝い落ちる雨垂れの音が、こんな明け方の時間にはひどく大きく響いていた。 「・・・眠れないの?」 「あ、おこした? ごめん」 夢を見ながら泣いていて、そんな自分があまりに可哀想になって目が覚めてしまったと彼女が言い、「どんな夢だった?」とわたしが訊くと、「なにも覚えていない」と答える・・・ここの処、同じような事が何度もあったような気がする。 「ず〜っとここにいるの」 なぜそんな事を言うのかと尋ねることの出来ぬまま、わたしは彼女のパジャマのボタンをひとつずつ外す。
「いや」と言い「もっと」とせがみ、「やめて」と拒絶する彼女が、そうしながら泣いていることに気付いたのは、何度目かの絶頂の後の事だった。 ワタシ ハ シッテイルガ ユエニ ワタシ ハ オマエ ノ ナミダ ヲ ヒタスラ オソレルノダ まるでおなじなのだ・・・記憶の中でわたしが抱きしめ、わたしが殺し、わたしが森の奧に埋めた女と、いま私の下で淫らにうごめきながら声をたてずに泣く女の身体や顔つきばかりではなく、わたしの耳元で囁くそのかすれた声や枕を顔に埋めるようにして堪えようとするその様子が、すべてにおいて生写しなのだ。なぜ今ごろになってそんなことを思い出したのか? 或は、わたしは本当にその事を忘れていたのか? 今度の彼女を埋めるための森が何処にもないことに気付いたわたしは、そのまま、いつまでも途方に暮れていた 過去の記憶が少しずつ現実に重なるような予感がするとき、その結末を恐れるのはまさしくわたし自身がその過去の記憶からいつまでも逃れることが出来ないことの証明なのでしょう。改変することの出来ぬ過去によって身動きがとれぬことの言訳は、やはりこんなカタチでしか伝える事は不可能なようです。
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