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ボクが小さい頃から秘かにカバンの中に入れて持ち歩いているちっぽけなノートを、昨日学校でなくしてしまったようだ。 最初の頃はたどたどしい平仮名で、いま開いているページなどには几帳面な楷書体でずらずらと人の名前が書かれているだけなのだが・・・お前は字がきれいだと、いつも担任からほめられる。そのきれいな字で、担任の名前もこのリストにチャンと入っている。そう、「やつら」の運命をボクが決定するためのリスト。 校庭の片隅で3人がかりで押えつけて、ボクのパンツをはぎ取ってケラケラ笑っていたあいつ・・・食器を戻すときに必ずボクの首筋にスープの残りを流し込んでいくあいつ・・・泥まみれの長靴で大きな足形をボクの背中に付けていったあいつ・・・でも、こんな「やつら」はボクのリストの中ではたいして意味がない。所詮は自分達もこの世界のあり方に不安を抱いているだけのバカな人間だから。 ボクにとって、世界そのものがボクを窒息させボクを押しつぶそうとしているときに、その世界を維持することになんの疑問も抱かない人間などに、ひとかけらの価値もない。したり顔で同情してみせても、自分達の頭の上のこの巨大な重石を支えることを選んでしまった「やつら」などに何一つ期待することなどできる筈もなかった。そう、暴力反対をさけびながら、この世界そのものが暴力のメカニズムによって動いている事の意味に気付かない人間こそ、ボクのノートの一番最初に記されるべき人間なんだ。 ボクはボク自身の声でボク自身の腕でこの世界を切裂く為に、ポケットの中にしまってあるバタフライナイフとちっぽけなノートで秘かに自衛する。 誰か、ボクのノートを見つけたらあの保健室の教師の名前に赤いバッテンを付けておいて・・・ うまく説明する事ができません。誰が犠牲者で誰が加害者なのか・・・どちらもが「この世界」の紛れもない被害者であることは確かなのですが、「この世界」はそうした事実を許すはずもないのでしょう。少なくとも「否や」を叫ぶ権利はどちらにもある筈です。
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