デーテーペーな1日 デーテーペーな1日

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12月24日(Wed)
一人芝居

 この季節の街の喧噪ぶりに耐えられなくなると、私は私にしか意味のない一人芝居を始める。

 駅前の雑踏の渦に逆らうことをせず、人だかりのする店先にうず高く積まれたケーキを手にレジへむかう。
 気ぜわしげな若い娘の、ケーキを包む指先をぼんやりと眺めていると「ロウソクは何本お付けしましょうか?」
 ひょっとすると家族の数だけロウソクを立てるのだろうか・・・私は黙って右手の指を4本立てると、内ポケットから財布を取出す。
 名刺入れに入った家族の写真が足元に落ちた。微かに笑っている妻と子供達の足元には、太陽を背にした私の影だけが映り込んでいて、まるで私と彼らの関係を象徴しているようだった・・・「おまちどうさまでした」と、大きな声に我に返ると、色とりどりの小さなロウソクが4本、ピンクのリボンの下に挟まれ緑と赤の包装紙で一緒に包まれて私に手渡たされる。
 片手で下げるにはいささか大きすぎるその包みを、しかたなく私は両手に抱えて歩く・・・そう、まるで遺骨を持つように。
 耳元で振ってみると、確かにカサコソと乾いた音がしたような気がした。

 駅から続く道を同じような包みさげた男達が歩いている。幸せな家族の待つ我家へ向う父親・・・私の一人芝居はまだ続いている。
 途中のオモチャ屋で大きなぬいぐるみをふたつ買った。いきかう人間が私の荷物を眺めてはかすかに笑いかける・・・えぇ、この季節はお互いになにかと大変です。

 灰色の高層マンションの前に立ってふと見上げる。ほとんどの部屋の窓には明りが灯っている。私の部屋は何時ものように真っ暗なままだった。エレベータを降りて薄暗い廊下の奥にあるドアを開けた時点で、私の一人芝居は観客を失う・・・さて、この緑と赤の原色に彩られた包みをどうしたものか。

 家具ひとつない部屋の中央に立った私の姿が窓ガラスに写っている。その灰色の顔色をした男が乾いた目で私を見返していた・・・観客のいない一人芝居の幕引きをいつまでも先延しにする事もないだろう。
 窓を開けると、そのまま何もない空間に向って私はダイブする。もはや最後の観客の反応を知る術はなかった。

 人が浮れるている季節というと何かと不機嫌になるというのは・・・まぁ、不幸な性格なんでしょう。
 実はこうした「終り方」がキライではないのかも知れません。


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