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執拗に鳴り続ける玄関のチャイム・・・その音に目覚めると、海の底のように蒼黒い光が何重にも閉ざしたカーテン越しに部屋中にゆらめいているような気がした。今は夜なのか昼なのか、それすらも判らない。なにやらひどく長く寝ていたような気がする。昨夜の記憶を探ってみても、まるで突然の記憶喪失者のように一切が曖昧で、何ひとつ浮んでこない。方向感覚を失ったまま玄関に向う間もしきりに記憶の襞を探ってみるが、真っ黒な記憶の闇だけが頭の中でカラコロと音をたてるだけだった。 「印鑑お願いします」 Tシャツ姿に宅配業者の帽子だけをかぶった男が認め印を返すと、かなり大きめの荷物をドア越しにズルズルと押込んだ。長さはおよそ1M以上・・・精密機械の移送にでも使いそうな厚手の段ボール製のその荷物は固く凍り付いていて、ひとりで持運ぶのに苦労するほど重かった。傾けると何かがゴトリと動いた。宛先欄の書かれたシールはひどく傷んでいて。辛うじてラベルにある私の名前だけは読みとれたが、後は破けたりインクが滲んだりでどこから届いたものか、まるで見当もつかなかった。ガムテープを剥がすと、中の荷物も凍っていた。 ポーズを取ることを拒絶するトルソーの、それ自体がもつ厳しい美しさに魅せられた私は、ただ黙って「それ」を眺める。 そこにもう一度玄関のチャイムが・・・今度はみかん箱ほどの荷物が届く。そう、この中にはやはり私自身が荷造りしたおまえの首が凍り付いたまま入っている。午後には両腕と両足が届くのだろう。お前のトルソーも荷札を貼替え、もう一度宅配業者に持たせることになる筈だ。 見知らぬ宛先から荷物が届いたりすると、妙に胸騒ぎがすることがあります。何が出てくるのか・・・いろんなモノを宅配便で送る人間と言うのは確かに存在するようです。
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