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僕の内側にはいつも、僕にピッタリと貼付いた、裏返しになったもう一人の僕がいた。脱皮前の昆虫のさなぎに似て、内側の変貌にたえきれなくなった薄皮が弾けるように破れて、その亀裂からもう一人の僕が突然顔を出したときも、それほど驚いた記憶がなかった。ただし、いつも鏡の前で見る僕とは何処か違っているのも確かだった。裏返しの鏡像とは少し違う、その見慣れぬ僕の顔つきの落着かぬ印象とは・・・そう、ビデオモニターで見る僕自身だった。 電子的なノイズの混じった映像の何処かアンバランスな色調と立体感を失ったディテールの粗雑さで、誰もが狂人のようにみえるビデオカメラの眼で僕を見る。卑しい笑顔を浮べながら落ちつきなげに周囲を見渡すもう一人の僕が、そのまます〜っと僕から離れていく気配がする・・・と同時に僕自身の意識も二つに分裂し、そこで僕を見ているのははたしてもう一人の僕なのか? 視線と意識の混乱が一層僕を曖昧な混乱に包み込む。 気がつけば僕は昼下がりの人気のない路上を歩いていた。濃密な緑の匂いが丘を下って、同じような家並の続く通りを駆抜けていく。小高い丘の上には一瞬反射するモノの姿が見えたような気がしたが、ただの幻だったかも知れない。 いつの間にか、僕はひとりぼっちだった。 あまり解説めいたモノを書くべきではないのでしょう。ふとした印象とは・・・自分自身にしか窺い知れないある種の妄想の記憶なのです。ひょっとすると、それは自分自身の裡なる恐怖なのかも知れません。
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