デーテーペーな1日

日記関係の発言はこちらで。
7月11日(Fri)
僕と

 僕の内側にはいつも、僕にピッタリと貼付いた、裏返しになったもう一人のがいた。脱皮前の昆虫のさなぎに似て、内側の変貌にたえきれなくなった薄皮が弾けるように破れて、その亀裂からもう一人のが突然顔を出したときも、それほど驚いた記憶がなかった。ただし、いつも鏡の前で見る僕とは何処か違っているのも確かだった。裏返しの鏡像とは少し違う、その見慣れぬの顔つきの落着かぬ印象とは・・・そう、ビデオモニターで見る僕自身だった。
 電子的なノイズの混じった映像の何処かアンバランスな色調と立体感を失ったディテールの粗雑さで、誰もが狂人のようにみえるビデオカメラの眼で僕を見る。卑しい笑顔を浮べながら落ちつきなげに周囲を見渡すもう一人のが、そのまます〜っと僕から離れていく気配がする・・・と同時に自身の意識も二つに分裂し、そこでを見ているのははたしてもう一人の僕なのか?

 視線と意識の混乱が一層を曖昧な混乱に包み込む。

 気がつけばは昼下がりの人気のない路上を歩いていた。濃密な緑の匂いが丘を下って、同じような家並の続く通りを駆抜けていく。小高い丘の上には一瞬反射するモノの姿が見えたような気がしたが、ただの幻だったかも知れない。
 頻繁に通り過ぎる自動車は、海側の国道を目指してバイパスを無言のまま右折すると、そのまま加速して視界の向うに消えていった。
 左手には学校のグランド。低く続いたフェンスの向こう側には灰色の校舎とアンツーカーの真っ赤なテニスコートが日差しのなかで何処かしら滲んだように見えた。校舎の窓は真っ暗で、中の様子を窺うすべがなかったが、じっと息を殺して何者かの到来を待っている者達の気配だけは濃厚に漂っていた。
 不意に大音量でチャイムが鳴るが、校庭にでてくる生徒の姿はやはり無かった。
 午後の海風に舞上がった砂埃りで白茶けた街並は深閑として、白昼夢のなかで見る世界のようだった。かすかな苛立ちと不確かな予感に立ち止ったは、そこで再びもう一人の僕と出会う・・・おずおずと差出した僕の手を取ったは、背後に見える丘を振返ると、頂上へ続く小道へ向けて歩き始めた。

 いつの間にか、僕はひとりぼっちだった。

 あまり解説めいたモノを書くべきではないのでしょう。ふとした印象とは・・・自分自身にしか窺い知れないある種の妄想の記憶なのです。ひょっとすると、それは自分自身の裡なる恐怖なのかも知れません。


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