デーテーペーな1日

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2月23日(Sun)
今日からは・・・

 部屋の外で待つように言われた私は、禁煙した筈の煙草を探って胸元に手を入れる。ポケットをしばらく探ってみるが何枚かのレシートが出てくるだけで、手持ちぶさたなまま、訳もなく腰のあたりで掌を拭った私は、部屋で行われている作業を覗いてみたいと言う欲望とじっと闘っていた。
 ストレッチャーに何かが当る金属音・・・作業を続ける人間達がベットの脇を行き来する乾いた足音・・・ほとんど無言のまま続けられる作業の間に部屋から漏れるのは、病院ですっかりお馴染みになったの筈の消毒液の匂いと微かな腐臭が混じった・・・そう、諦念と疲労の匂いとでも呼べばいいのか。
 責任者と思える男が処置の終ったことを告げると、残りの2人の人間を連れてそそくさと出ていく。ドアの閉る音を聞くと、後はこの家には私ひとりが残った。そう、もはや妻は何かの「物体」に変質しようとしていた。

 ベットの上には、それまでのさまざまなチューブや機械から解き放たれた妻のからだが横たわっていた。頭にまかれた包帯を除けば取立て変った処のない、いわば眠っている彼女そのものに見える。胸元まで引上げられたシーツの下が少しばかり盛上がって見えるのは手を組まされているからか?それだけが、普段の寝姿とは少し違っていた。しかし、これを何かの「物体」と思い込むのは少しばかり努力が必要かも知れない。
 薄いシーツを剥ぐと、古風な寝間着を付けた「それ」をじっと見つめる。表情には苦痛の様子も安堵の様子も何も見えない。ただただ空虚な表情は、いつも通りと言えば言えなくもなかった。少し開いた口に耳を近づけてみる。
 綿や脱脂綿による処置を施さないようにと言った時の、男達の微かにゆれた表情の中に浮んだ嘲りの調子と嫌悪感に、そうした申し出は意外と多いような気がした。閉めきった部屋で死んだ妻とすごす男の、萎えきれぬ欲望と妄想
 せっかく着せた寝間着を脱がせると、私はしばらく「それ」を眺める。蒼ざめて見えるほど白い肌に触れてみると、まだ少し温かい。
 小ぶりな乳房はいくらか弾力は失っているが、私の掌の裡で未だ柔らかく揺れる。死後硬直も始っていない「それ」は、まさに柔らかなマネキンそのもの・・・扁平な腹部から続いた茂みの奥の、幾度となく私の欲望を飲込んできたものを妄想するまでもなく、すでに私自身は耐え切れぬほどに固く勃起して、ひたすら従順で物言わぬ「それ」を抱きしめていた。

 何もない一日・・・しょせん、我々の人生に何かが待ち受けている筈もないのはすでにご存じの通り。何時ものように何時もの結果をくり返すしかない事を、今さら嘆いても仕方がないのかも知れません。不明な日記に特別意味のないのは、また当然なのでしょう。


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