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バブル以後の社内は、5時半を過ぎると人の姿は殆ど無かった。いったん社内を出てから、駅前でUターンすると、通用門からもう一度6階にあるオフィスに戻った。 仕事をする訳でもなく、ただぼんやりと時間の過ぎるのを待っている。 7時、8時、9時、10時、11時・・・ 電話をかける。 「あ、私だが今日も残業で遅くなったので帰れないと思う。」 社内恋愛で会社の事情に詳しい妻は、私にこなすべき仕事のないことなど先刻ご承知だった。黙って電話をきった妻の、冷え冷えとした背中が電話口からよみがえるようだが、私はその事には気づかない振りをする。 殆ど反射的な動作で定期券を改札口からとると、目の前の大通りを左に曲がる。ガードをくぐると、暗がり立つ女が何人も見える。 先ほどまでの男と女の欲望の残り香がいまだに漂ってい部屋には、ベットと小さな応接セットしか無かった。シャワーを浴びた女の浅黒い素肌からは、大陸の微かな兆候が混ざっていた。全裸でベットに横たわったままの彼女の、薄い胸と僅かな陰毛を眺めながら私は「ある種の兆候」を探していた。茶色の斑点と気怠い咳、あばらの浮きでた体からは枯れ木のような匂いがした。 緊張が彼女の体を走り、凍り付いた彼女の口元から唾液が垂れる。 噴き出した赤い血が私の全身を染め、彼女の上にぽとりと落ちた。 午後から熱がでたせいでしょう。本日は不明な日記を書くハメになっているようですが、例によって何の意図するところもありません。熱にうなされた故の妄想である可能性は・・・かなりの部分正しいような気がします。
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