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夕方から思わず見入ってしまったNHKスペシャルの再放送・・・日大病院で現在行われている脳血管性疾患に対する最新の治療法の紹介とその治療によって「死」から蘇った患者のドキュメンタリーでした。 患者の体温を極限まで冷すことで脳内温度の上昇による神経細胞の死滅を止めるという、きわめて素人にも分りやすい単純素朴な療法の上に、奇跡的な生還例が続出しているようで、いわゆる「マスコミ受け」のする治療法であることは確かなようです。 カメラは、これまでの例では手術の対象にすらならない重篤な「くも膜下出血」の患者の入院から、その低体温療法による回復の課程を丹念に取材しながら、退院する患者のぎこちないが確かな笑顔で終る。肉親にとってはかけがえのない人の生還を喜ぶ映像には心打たれるものがありましたが、車椅子の彼のこれからの長いリハビリ生活を思って、ふとわが身を振返るのです。 低体温療法に付随する副作用としての免疫力の低下を押え込むために、免疫抑制剤は勿論、成長ホルモンまで投与される、いわゆる「高濃度治療」・・・レントゲン写真にのたうつように写り込むチューブの多さが、いっそう患者を何かの機械のように見せるのです。はい、わずか数円のワクチンが与えられないばかりに死んでいくアフリカの子供達の事を思えば、ひと月の治療費が数百万円にもなるだろうそうした最先端治療は、少なくとも僕の命に関してはあまりにも過剰な投資のようです。そうまでして延命を計る価値を自らの命に見いだせないのは不幸なのかもしれません。測るべきくもない命の軽重を、ついつい比べてみるのは、自分自身の後ろめたさの証明なのでしょう。どこまでいっても命の値段に恐ろしいほどの差があることが、いつも僕を落着かない気分にさせます。退院を喜ぶ家族に囲まれた患者の命と、死すべき為に生れてくるようなこども達の命が、等しく貴重だとはどうしても納得がいかないのです。クリスマスにユニセフ発行のカードを購入したり、年に一度、瓶詰めのコインを武道館に運ぶことで、なにやら果すべき義務を済ませた気になる「心優しき人々」を見つめながら、成す術もなく立ち止っているだけの人間には、誰に何を告げてよいのかが分かりません。ただ自分自身が罪深い人間であることだけを、もう一度再認識するだけです。 息子を自死による「脳死」で失った過去を持つ柳田邦夫の目には、あるいは?と思う愚かしい親の繰言が写っているように思えたのは、僕自身が親であるからでしょう。しかし、この日本ですらそうした最先端の治療に巡り会えるのは限られた人間だけでしょう。医療の力の及ばぬ重症患者は、今夜もまた、機械に繋がれ重い呼吸をくり返して鼓動の止るのをただ待っているだけなのでしょう。
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