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飢餓の記憶と言うヤツは、いつまでも遺伝子の記憶情報の中に残り続ける物のようです。縄文時代の冬の飢餓も応仁の乱による大量の人死にも、あるいは天明の大飢饉による飢餓からも生き延びた僕のご先祖さま・・・何代さかのぼっても、所詮はいつも飢えている水飲み百姓の小せがれか、人買いに売られていくのが唯一の生きる術と思い定めた女達に違いない・・・そんな彼らの抜きがたい"飢え"の記憶が、「ハレ」の日は何かを食べる日なのだと言う思いこみを、僕のDNAの螺旋の中に埋め込んでいったらしい。 いや、あらゆる飢餓や疫病に勝ち残って子孫を残すことに成功したのが現在の僕たちだとすれば、その記憶は全ての人間に共通するのでしょう。だからこそ、季節ごとの行事の度に、この日はこれを食べるのだという妄想に憑かれた人間がスーパーに殺到して、右にならえで買物する事になる。 このクリスマスシーズン、日本では一体何十万羽の鶏の首が切られたことになるのか?世界中で腹を割かれた七面鳥の数はたして何百万羽?詰め物するために掻き出された内臓はディスポーザーから暗い下水道に流され、汚物と一緒に沈殿マスで浄化されて再び川や海に戻される・・・ この夜のために特別に作られた豪華な料理を味わいながら、淫らな欲望を隠して談笑する男女が向かい合うしゃれたフランス料理のレストランも、小さなこども達が危うい手つきで母親の作ったフライドチキンを手掴みで食べる食卓でも、等しく「命」を貪り喰いながら聖夜を過ごし、微笑みを交わす。 これがある種の「地獄」の光景に見える処が、愚かしい僕の妄想癖と言う奴なのでしょう。 はい、もちろん我が家でも鶏の死肉の唐揚げは食卓に並びます。こども達の手造りケーキなんてモノも登場するかも知れません。あの、「シャンメリー」なる飲み物も冷蔵庫に冷やしてあるようです。ごくごく当たりまえの、平均的な日本の家庭の風景なのでしょう。
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