歳時記(diary):一月の項

一日

毎年恒例で朝から実家に年始の挨拶。妹夫婦も来ていて、子どもたちが大騒ぎする。
年齢の違う子ども集団は見ていて面白いな、と思う。来年はここに(海外にいる妹夫婦の子も含めて)三人加わる予定なのだが。

二日

透析当番で出勤。病棟の患者様方は割と落ち着いていて何より。
仕事が一息ついた夜には待機しながらCPC向けに分厚いカルテの読解を進める。当日に病院見学に来る研修医がいるとかで、いいところをみせろとかプレッシャーかかってるし。

三日

寝て曜日。三が日みんなそうだったような気も。(爆)
谷保天満宮に初詣。一部ではアニメ版「AIR」の神社のモデルとか言われてるらしい。

「ARIEL」新装版を読了。出す方も出す方、買う方も買う方とか思うけれど。でも書き下ろしが入ってると言われるとついつい買ってしまう哀しい性‥‥。

四日

仕事初め。
外来やって入院二人入れて午後カンファレンスして。せわしない日常が始まる‥‥。

Fink使ってfdcloneをインストールする。自分が本家のFD使ったのはかれこれ15年も前になるのか‥‥。

五日

自分の患者診てとっとと退散する予定がきっちりあれこれの仕事をこなさなきゃいけなくなる罠。さすがに土曜日はちょっとイレギュラーな事態が起こると人手不足になりますな‥‥。

六日

相方がそろそろ出産なのだが、未明から陣痛発来しているようで、夜明けを待たずに病院へ。おお、休みの日に生まれるとは親の都合をきちんと把握している賢い子だと喜んでいると‥‥それ以上進まずにだんだん陣痛が治まってしまう。こうなると病院いてもしょうがないという話になって夕食後に退院。なにしに行ったんだかって気分になる。
しかし、一日入院で三食きちっと食べられる患者も珍しいと思ってみたり。

「ブラッカムの爆撃機」(ロバート・ウェストール/岩波書店)を読みながら付き添いしていた。

七日

べつに識者じゃないですが、まあご指名なので。
被害に遭われた方にはかけるべき言葉もないのだが、何がどう悪かったのかといえばやはり「運が悪かった」となるだろうか。受け入れ力を整備すべき責任は国・自治体にあると考えれば「政治が悪い」ってことになるかもしれないが。
現実にはそれぞれの救急症例は、受け入れても大丈夫だった可能性はある、と思う。消化管出血・全身やけどなどがこの間話題になったけれど、それぞれはそれなりに重症で慎重な対応を必要とする病気ではある。けれども翌朝まで待てる消化管出血や一般病院でも対応可能なやけども存在する。受け入れてから判断、というやり方もあるわけだ。
けれども一旦受け取って、診察して対応しきれないときには転送、というやり方はあまりとらない。転送に時間がかかって結局行き先が無くなったとか、自分のところで対応せざるを得なくなる可能性のほうが高いということがあるためだ。
加えて当直医は他の患者さんのことも考えないといけない。重症を受け取っててんやわんやしているときに他の患者が調子悪くなったらどうしようと考え出すと、キャパシティを残しておこうと守りに入りがち。
さらにいえば、救急患者というのは基礎疾患や治療、患者の個性などがわからないままに対応しなければならないという特徴がある。来てみたら複雑な病態でまず把握に困るような状態だったり、もともと何かの病気があるらしいのだが聞いてもさっぱりどんな病気だかわからなかったり、札付きの問題患者であったりすることがある。問題がこじれて訴訟になることもそう珍しいわけではない。訴訟リスクを考えれば受け入れない方が無難、という考え方がここで出てくる。
いろいろ書いたけれど、「医療における不確実性」ってものがあって、医療機関は後から見た正確なところをみて動いているわけではなくて、その時点で判っている断片的な情報をつなぎあわせてリスク分析をせざるを得ないというところをまず把握しないと、「とにかく要求に応じろ」的に医療機関に義務を背負わせて解決しようという考え方になってしまうのではないかと思う。救急搬送がうまくいかないケースを減らすには、できるだけ医療機関に「救急患者を受け入れた方が得」と思わせるような投資が必要なんだろうなと思うし、救急を受け入れることへのリスクを下げる手だてが必要だと思う。一つの手だてとしては夜間に重症対応用ベッドを届け出た医療機関に用意したベッド数に応じて補助金を下ろす、なんてものがあるかもしれない。そこに患者が入ればさらに治療費が請求できる。空きベッドは現在何も生まないのだけれど、環境の整った空きベッドを用意すれば収入が上がるとなれば、急患対応用に空床を確保する医療機関も増えるだろう。あるいは、訴訟になったときの訴訟費用や賠償額の一定程度を国が援助するなどがあるかもしれない。もちろん医療内容の評価はきっちり入れるにしても、現在の医療事故関連訴訟の中には難癖に近いものもあり、しかも裁判所は最近説明義務や注意義務を広く取ろうとする傾向にある。訴訟リスクが軽減するだけで、救急の受け入れへの抵抗は少なくなると思うのだがどうだろうか。
ただ、結局のところ、これらの措置をとるためには予算出費が不可欠で、どこまで国が金を出す気があるか、ってところがキィじゃないかと。診療報酬引き下げに躍起になっている厚生労働省や財務省に、どこまで期待できるのかは疑問と思う。わたしとしては高速道路や空港よりもこっちに金を回して欲しいとは思うが。

八日

何だか順調に受け持ちが増えており。午前中の透析当番は処置てんこ盛りで弁当食べるのがやっとの状態で午後の外来へ。こっちはこっちで予約がいっぱいの上に予約外で診てくれと来る患者までいる始末。ぐったりして帰ってくる。

九日

‥‥すでに過去最高級の入院受け持ち数になってるところにさらに二人入院追加。
ただまぁ普段より効率重視な仕事の仕方になっているせいか、帰りが普段よりめちゃくちゃ遅くなるということはなく。気が急いている分密度は上がっているとは思う。その代わり昼休みに一息入れるような余裕はないが。
忙しくなってるわけは別に誰かの陰謀というわけではなさそうなので黙って仕事をするしかなく。でもストレスかかると全体に多弁になるんだよな>わたし 割と多弁な今日この頃。

十日

まだ退院出ないのにもう一人入院受け持ち追加ですか(吐血)
救いは患者様方が予想外のトラブルを起こしていないことか。

十一日

午前中外来。忙しかったけど忙しいだけ。対処に困るようなことがないのが何より。
夕方相方が陣発ということで早め帰り。

十二日

結局夜通し相方の陣痛につきあって、出産まで見届ける。たまたま夜だったのでそこまでつきあえたけれど、とりあえずよかった。

そのまま仮眠だけで仕事。まぁ当直したと思えばこんなもので。

夜は実家に泊る。子どもを実家に預けている関係もあり。
そこで「奥多摩登山考」(金邦夫)を読む。大多摩観光連盟や奥多摩観光協会などが取り扱っている自費出版の本。ウチの親達も山の会に入ってあちこちの山を歩いているので、その伝手で手に入れたものだろう。
登山、といっても奥多摩くらいだとかなり気楽な感じがする。そう思って甘くみて山に入ってちょっぴり痛い目にあったことがある身としては、甘くみた結果の重たさに思いをいたすわけだ。まず充分な知識。それに基づいた充分な装備。そして、ピンチに陥ったときのセルフコントロールと、原則に則った対応。そのどれかが欠けたときに事故に遭いやすく、そして運が悪ければ重大な被害を被る、そんな気がした。

十三日

日曜日。子ども連れて一旦自宅に帰って荷物整理を少々。ひとりでおもちゃを引っ張り出して遊んでいるこどもを横目にものを出したり仕舞ったり。まとわりつかれると仕事にならないのだがまぁ手のかからない方か。最近は寒いのもあってかあまり外に連れてけと自己主張しなくなってきたらしい。

十四日

透析当番で出勤。初手っから効率重視でさばいていくとそれなりに仕事は終わったけれど、さばくだけの仕事はあんまり楽しくなかったりして。患者さんとムダ話できるような余裕が欲しいと思ったりする。

十五日

実家に帰ってみるとまだ子どもが起きていて。すでに夕食食べた後のはずなのだが、わたしも夕食を頂こうと食卓につくと自分もと膝に上ってくる。──食欲小魔神ここにあり、か。

十六日

夕刻重症患者の依頼が開業の先生から舞い込む。──それはいいんですが「経済的にも困っているのでその辺も含めて対応していただけるところにお願い」で当院に連絡来るのはどういうわけでしょうか(死)。
Trouble is my business.と思ってやってますけど。関係ねぇって言って切り離していけなくもないけれど、いまやお金のない人は医療機関にかかれないですから‥‥。制度を利用するだけの知識があればまだましですが。

十七日

相方退院に付きあう。午後から仕事へ。
そしてCPC準備で夜が更ける。気分は八月三十一日の夏休みの宿題、ってところでしょうか。

十八日

午前外来に来院したとある人。わたしはカルテの最初に「主訴:道が分からない」って書きました。(炸裂)
話聞いていると高次脳機能障害を発症したようにも思えるのだが、今一つはっきりしない感じがあり、神経内科へご紹介。麻痺とかだと分かりやすいんだがこういう行為障害なんかは実際に障害されているのかも含め、評価が難しい。

夜は問題の臨床病理検討会を片づけ。ほっと一息。

十九日

休日といっても子どものお守りで暮れる。上の子が赤ん坊みてどんな反応するかが興味深かったのだが、興味津々で触りたがる。それ自体はほほ笑ましいのだが、力の加減が全く判っていないので首が座ってないのに抱きかかえようとするとか力いっぱい乗っかろうとするとか危険行動が次々と。警戒されるよりはましだと思うのだけれど、気疲れ。

iBook G4のiTunesにCDを読み込もうとして、CDを認識しないのに気付く。再起動してマウスボタンを押しっぱなしにしても出てこず、command+option+O+Fの同時押しで起動してオープンファームウェア画面からeject CDしても出てこない。こんなこと前もあったなあと思って、今度は自分で修理を試みてみる。
iBook G4はキーボードの最上列に二ヶ所のスライドロック
キーボード上部があって、ここを手前に引いて持ち上げればキーボードが外れる。
開けるとAirMacカードを収めるスペースが出てくるが、わたしはカードをもってないので空。
AirMacカードスロット
四隅を止めるねじ(小さなプラスドライバーが必要)を外すとぱかりととれて基盤が見えてくる。
基盤が見える
写真で丸をつけたところがDVD/CDドライブからの配線がつながる場所。見ると持ち上がってきていていかにも外れかけな感じだったので押し込んでやる。これで修理完了。あとは元の通りに戻すだけ。

二十日

在宅日当直。電話に拘束される一日‥‥。

「しにがみのバラッド(5)」を読む。昨日は「"文学少女"と月花を孕く水妖」を読み終えた。未読の山はまだまだあるけれど。

二十一日

bsfilterの挙動に悩む。何故かうまく仕分けができなくなっている。データベースがうまく構築できてないっぽいのだが何故?
MacOS 10.3.9付属のrubyは1.6.8で自分で入れ直した最新版は1.8.1であるらしい。付属のrubyの名前を変えて最新版が使われるようにしたり色々いじっていたらメールが仕分けされるようになった。でも原因ははっきりしないまま。
ちなみに、そもそもの目的であったbsfilterの高速化は目に見えるほど達成できず。まぁやむを得ないですな。

二十二日

朝、子どもを乗っけて車で出勤、になっているここ数日。そのうち自転車に切り替える予定なのだが。
車内で久しぶりにラジオを聴いている。まぁさだまさし生放送シリーズをラジオ番組の一種と思えば久しぶりでもないが。
「ながら」で聞けるのはよいことかもしれない。携帯ラジオ買おうかなぁ。

二十三日

久しぶりに普通の当直。相方の出産もあるので配慮してもらえていたため。
でもこういう配慮を貰えるのは、相対的に職場の体制が豊かだから、だろうなと思う。相対的にはウチの病院は医者がわりといる、らしい。日々仕事しているとちっともそんな実感はないのだけれど。

二十四日

当直明けで普通にお仕事。
ひところの嵐のような入院がおさまって、少しは余裕を持った仕事になっている。患者さんへ目が届くようになってきた気がする今日この頃。

二十五日

午後の総回診では現在苦慮中の患者さんの診断と治療について意見交換。診断もさることながら、治療をどうするかも議論の種で。何を目標に治療するか、なにで効果判定するか。時に見失いがちなことだけれど何かの行動を起こす上ではとっても大事なことで。

二十六日

午後、IgA腎症研究会に参加。診断から基礎研究から治療まで幅広いけれど面白く聞く。結構数の多い病気であるだけに、押さえておきたいところ。
行き帰りでは「時砂の王」(小川一水/ハヤカワ文庫JA)を読了。時間を越えた戦いの、最終盤の山場を抜き出したようなところか。メッセンジャー・Oと、彌与のそれぞれの想い、哲学に熱いものを感じる。
小川さんの「復活の地」にも似た、架空世界なのにしっかりとした歴史を感じさせるような重厚さがあると思う。最後の援軍登場シーンは素晴らしい盛り上がり、と思った。

二十七日

夜、「夢の守り人」(上橋菜穂子/新潮文庫)読了。面白い面白いと思いながら一気に読み通す。

二十八日

PT学生の不適切書き込みでblog炎上、なんて2ちゃんねるネタを読みながら「明日は我が身‥‥」と呟いてみる今日この頃。
ネットワーク上に個人情報乗せるのは怖いんだぞー。‥‥でもとくめいきぼうなはずのこの日記がリアル知人に少しずつ知れているらしい。やはり明日は我が身か。

二十九日

正月からもう一月。今日の外来の予約はごく少なく。正月休みからちょうど四週間という日取りが影響してるんだろうな。

三十日

家に帰ってきてみるとTVでは輸入の冷凍食品に農薬混入があったということで回収祭り真っ最中。それを見ながら相方が「これ、こないだお昼に出しちゃった」
‥‥幸い当たりは引かなかったらしいが、自分が食べた製品が回収対象になるってのはぞっとしない。

三十一日

え、もう一月終わり?(滅) 慌ただしいことだ‥‥。
まわりでは後輩が内科認定医にむけて症例報告のまとめを作っている。自分は昔に通った道ということで、参考までにと昔の資料をみせてあげたりしている。──複写厳禁とは言い渡しましたが。


Written by Genesis
感想等は、掲示板かsoh@tama.or.jpまで。リンクはご自由に。

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