歳時記(diary):十一月の項

一日

透析診療所の外来。少し待機時間があったので、銀河英雄伝説を読み進める。
話はヤン・ウェンリー元帥暗殺の辺り。もーちょいだな。

二日

透析の回診を済ませて中心静脈カテーテルを挿入して、腎生検をしてとえらくあちこち立ち回る。疲れた‥‥。

三日

休日出勤。普通の日よりやや密度が濃いぐらいの仕事をしていく。救い(といえるのか?)はルーティンワークであること、だろうか。

四日

こどもが中耳炎、ということでわりと穏やかに過ごす。さだまさしのアルバム「美しき日本の面影」とDVD「がんばらんば」を買ってきたくらいか。

銀河英雄伝説本編を読了する。帝国側、同盟側とそれぞれに魅力的な人物群像が描かれ、名作と思う。
ふと思ったことは、同盟側には事務職の元締めとしてキャゼルヌがいるのだけれど、不思議と帝国側にはそういう立場の人がおらず。なぜかしら。

五日

のんびりのんびり。気分はなまけたろう(ぉぃ
「攻殻機動隊−S.A.C.−」を観終わる。「笑い男事件」を話のメインに据えながら、直接関係のない話も多数混じる構成。伏線も結構あって観直すとさらに楽しいかもしれず。
相方とともに気に入っていたのはタチコマ。のーてんきなところが可愛い。最後はちょっとほろりとしつつ。

六日

週末で退院が複数。イロイロと追いつかないところが多く。
一番追いついていなかったのはレセプト。明日朝までに処理を、って言われて遅くまで病名付けと注釈の記載を。

臓器移植にからんで臓器売買の次は病気腎の移植ですか。
どんな病気だったのかによるってことはあるんですが、もともとの病気が大したことのない病気であったならば、その腎臓は患者本人に戻した方が良かったんじゃないですかとは思う。血液型やら拒絶などでの不適合はまずないし、手術リスクは同程度と思うのだけれど。
ガンなどの病気で摘出を行った場合には、いくら病巣を取り除いていたにしても、転移の問題をどう考えているのか気になるところ。転移のリスクがないと考えていたとしたら、その腎臓は手術を受けた患者本人に戻せばよいことだし、転移のリスクがあるので摘出を行い、それを他人に移植したとすれば、転移があってもしょうがないと思いながらやったと思わざるを得ない。それはやはり医療としては間違いがあると思う。
腎不全に対する透析療法はかなりすすんでおり、不自由は大きいが生命予後という点ではかなり改善している。移植術を考えるような元気な方では五年生存率は8割以上ある。あえて通常の移植以上のリスクを患者さんに背負わせる必要は、少なくとも命をつなぐことが目的ならば存在しないと思う。

七日

とある先生に会うと三回に一回くらいの割合で「書いてるか〜」と聞かれる。毎回「うぐぅ‥‥」とかうめきながら逃げ出すのだが。
要は「論文書き進んでるか〜」って会話で、診療に取り紛れてそこまで手をつけきれない日々なのだが、あんまりそれを続けるわけにも行かず。
ウチのボスが"Publish or Perish"な人なので、なかなかしんどい。

八日

当直。なんだか、交代したら急に患者さんが増えたような印象が。気のせいだとは思うのだけれど。

九日

高校の履修漏れ事件に関して、高校時代の話を書いたのだけれど、mixiの出身高コミュニティでの話ではどうも現在は第二外国語は無くなってしまったらしい。
授業時間の関係とかもちろんあるんだろうけれど、受験に必要ない科目から削減するって点で、履修漏れと同じ根がきっとあるんだろうな。同時に、高校って義務教育じゃないのに、ある程度自由なカリキュラム編成を認められるような指導要領になってないのも一つの問題なんじゃなかろうか。
ただの卒業生としては、なくなってしまったものを懐かしむしか、出来ないのだけれど。

十日

予約の多い外来の日。必死こいて診察していると‥‥なんかいつもよりいいペースで進んでいる‥‥。そうは言っても20人/3.5時間程度だが。
外来って数こなすほど収益上がる(逆言うと、一人当たりに時間かけても収益上がらない。検査をしたりすると収益になるけれど)ので、わたしのペースだと収益率としてはいまいちなのが実情。お医者さんからゆっくり説明をして欲しい方は、そういう医療保険制度にする努力をするといいのではないかと思うのだが。

夜は自分が指導している研修医が発表でケースカンファレンス。よい勉強をしているようだ。終わってから打ち上げまでして、帰った。

十一日

ここ数日この日記を置いているプロバイダの調子が悪いのか、ftpで日記の更新をしようとすると蹴られる。メールは読めるし置いているファイルにもアクセスできるのだが。設定も変更していないはずだが、謎。

十二日

サーバーのトラブルだったのか、今日日記の更新を試してみるとあっさり終了する。ftpdが落ちていたのか?

本屋であれこれ仕入れてくる。その夜のうちに読んでしまったりするのはいかんとも。
買ってみて当たりと思ったのは「宙のまにまに」(柏原麻実/講談社)。自分も星を眺めたくなるような、そんなお話。

十三日

午前中救急外来。心肺停止の患者さんの搬送依頼、ICU空床ないけど積極的な処置の希望ないってことなら受け入れできるかな、と思いつつ受け入れ。いざ家族の方に確認すると「できる限りの処置をお願いします」って、事前の話と違うし。いろいろやってなんとか蘇生して入院に。

十四日

検査入院中の患者さんの愚痴にしばし付き合う。
お孫さんがぜん息であれこれ薬を続けていて、通院を続けていたら通院先の病院の小児科の先生が退職してしまい、やむなく他の病院に通院先を変え。幸い新しい通院先の先生の治療方針がうまく合っている印象でよかったと思っていたら、今度はその先生も遠くの病院へ転職してしまったとのこと。
医者不足の昨今、医者のヘッドハンティングなど珍しくもない。どこの職場で仕事をするのも自由といえば自由なのだろうけれど、患者さんにとってみれば医師の退職に伴ってせっかくうまくいっていた治療を中断しなければならないのは辛いことだろうと思う。

十五日

外来透析診療所の回診へ。空き時間で研修医向けの勉強会の資料作り。

十六日

夕方医局へ戻ってくると、インターネットに接続しているパソコンを囲んでいる人々あり。某女性研修医の車購入計画に参加しているというかかき回しているというかな人々。
出てきた条件が「小柄でパワーがあってご飯をあまり食べない車」ということで、いろいろと。「それじゃ面白くないから」とか言いながら余計なことをあれこれ言ったりして。
その話の中でスカイラインがもともとプリンス自動車の車種の名前で、プリンス自動車は元をたどれば戦時中の中島飛行機に行き着くなんて話をして驚かれたのだが‥‥わりと有名な話じゃなかったのか、これ?
自分はどこで聞いたんだか憶えてないんだが、たぶんロケット祭りじゃなかっただろうか。

十七日

研修医向けの勉強会の資料作りを進めている。そのために参考文献を読んでいるのだけれど、あらためて読み直すとウチの病院で行われている治療がヌルいというか、文献に書いてある治療がアグレッシブに過ぎるように感じられるというか。おそらくは軽症患者が多いということなのではないかと思っているのだけれど。

十八日

休日にも関わらず普通に起きてIKEAの港北店へ。転居以来残っている最後の懸案、照明を仕入れにいったわけなのだが、気がつくとそれなりの散財をしていた。もっとも照明自体はわりといいのを買えたし、他の散財も小物中心だったからそれほどでもなく。
帰ってきてから照明取り付けのためにドリルとか買いに行った。

十九日

照明取り付けしたらあとはゆっくり休日を過ごす。
某所でTesla Roadstarのことを知る。電気自動車のスポーツカーですか、個人的には非常に魅かれるものが。
ハイブリッドカーもかなり技術的には完成して来た感じなのだけれど、デザインなんかをみるとそれほど魅力がなくて。燃費だけしか魅力的じゃない、じゃあこれからは需要が伸びないだろうしね。

二十日

ここのところローテンションな日々。入院の受け持ち患者さんは少ないのだけれど、その少ない患者さんがともに問題山積となると達成感も少なくなる。
小さなことでも一つずつやり終えている感じがしているときは気持ちも張っているのだが、まったりぐずぐずしてちっとも進まない感じになると、少ない仕事に精気を吸われているような感じになる。

二十一日

「ライオンハート」(恩田陸/新潮文庫)をちまちまと読んでいる。時間と場所を越えたすれ違いドラマ。とても面白いと思うのだけれど、映像にはしにくいだろうなと思ったり。

二十二日

攻殻機動隊DVDを順次観賞中。現在2nd GIGに入ってきている。オープニングがかっこいいので毎回見ている(エンディングは大体飛ばしてしまっている^^;)のだが、相方は「毎回見なくても‥‥」という反応であったりする‥‥。

二十三日

透析当番。なんだかやけにトラブルてんこ盛りで。

二十四日

寝てるときから体熱感があったのだけれど、朝起きて計ると39度。体は動くから無理やり仕事できないわけじゃないのだけれど、相手のことを考えると休むしかない。
それでも、昼ごろ再びベッドに入って起きたら午後六時。疲れてたのかなあ。
こんなときはふとボヘミアンガラス・ストリートが読みたくなったりする。昔NIFTY-serveで公開されていたのをダウンロードして読んだのだが、今探してみるとなくしてしまった様子。残念。

二十五日

大分体調も戻ってきてはいるけれど、自重して過ごす。
「ライオンハート」(恩田陸/新潮文庫)を再読了。前も気になったのだけれど、一角獣と若い女を配した紋章が果たしてどのような意味を持ってくるのか知りたくなってWeb逍遥。けっきょくこれはというサイトには当たらなかった。

二十六日

大分調子も戻ってきたところで、休日出勤で病院の様子を伺いに。著変はなく経過していたようであった。

二十七日

午前中の救急外来は、入院希望で救急車で駆け込んできた患者さんの対応で追われる破目に。それ以外の患者さんもいたけれどまぁ対応は型通りにやればよかったし。
高齢患者の介護が限界、ってのがまぁ主訴で。食事をあまり摂らないとか歩かないとか夜寝ないとかあるんだがそれらの問題は根本的には介護体制の問題で、奥さんが面倒見られなきゃ施設にでもお願いするしかないって評価がされたのだが、介護施設ってのは緊急で受け入れてくれるようなところはほとんどない。数ヶ月先まで予約でいっぱいってのが当たり前で、長期療養介護なんて依頼しにいった日には真顔で「三年くらいは待ってください」とか「生きてる間に順番が来るか分かりませんが」とかって返事が返ってくる。
じゃあ病院に入院させてあげれば、といっても、単に寝かせておくだけの人を入院させておけるほど病院経営は余裕がない。いろいろ検査したって高が知れてるし、入院期間が長くなるほど病院の経営を圧迫する。いきおい帰り先がなさそうな入院患者ほど追い立てを食わせていかないと今度は病院が潰れる。
それが現実です、って言ったって目の前の奥さんの介護負担が軽くなるわけじゃないし、「連れて帰るしかないならいっそ殺してしまおうかと思います」とかややキレぎみの真顔で語る奥さん相手にどうぞご自由にとか言えるほどこちらも冷たい対応は出来ず。すったもんだの揚げ句入院することにはなったようす。
とりあえず、診察室で政府の無策について意見交換しなきゃいけないような現状は何とかならんものかと思うのだが。療養病床削減とかいってるけど、それが実行されたら確実に不幸なひとが増えるんだがねぇ。

二十八日

昨日はなんだかんだで昼飯が夕飯近くまでずれこんだのだが、今日は普通の時間に食べたら夕方にえらくお腹が空いた‥‥。うまくいかないものである。

二十九日

夜、研修医向けレクチャー。お題は電解質異常。
ナトリウムとかカリウムとかそういった話。メンドくさくてしかも理屈っぽいという嫌われやすい分野なのだが、知らないでは済まされない話でもあったりする。

三十日

本日の名(迷)言。透析の回診にて。
「体重の増えが多いですねぇ。水分摂りすぎてませんか?」
「いやあ、注意はしてるんですがねぇ。──アルコールは水分に入りませんでしょ?

だれかこの人にアルコール飲料が体水分量に与える影響についてじっくりみっちり教え込んでやってくださいな。(sigh)


Written by Genesis
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