歳時記(diary):十月の項

一日

起きて例によってSUBWAYで朝食を買ってくる。
そのあと海岸で遊ぶ。やはり水は冷たいので遊泳には向かないが、しっかり日が照っているので寒くはない。──もっともその日光が思い切り紫外線が強いというおまけがついているが。一時間程度で撤退する。
子どもつれてレストラン行くのがだいぶ気疲れするということで避けていたのだが、せめてオージービーフ一度は食べたいと主張したので昼にハードロック・カフェへ。けっこうテラス席があってそちらを選択して、山盛りの料理を食べる。ホントに山のように出てきたので、少し残してしまった。ただステーキは(味は悪くないが)ウェルダンで肉の味がよくわからなかった感じで。こんどはできたらちゃんとしたステーキハウスに行きたいなあ、とおもった。
あとは子どもらと散歩したりしてだらだら過ごし。相方へのお土産として、オパールのネックレスを買ってきた。何でもオーストラリアがもっとも生産多いらしい。安かったしね。

二日

豪州より帰国の途に。
行きは子どもらが疲れ切って寝ていたが、今回は午前中の出発ということで元気。とはいえ、それなりに疲れていたらしく寝ている時間もあったのは救い。何度か機内を散歩したりはさせられたが。
機内で「ビートのディシプリン」を読み通す。この作品の中で既に「ヴァルプルギスの後悔」は始まっていたことを見事に忘れていた。ホントに読んだのかってくらい。
あとは帰りの成田エクスプレス車内で「とある飛空士への追憶」を読了。しっかりした作品世界を感じるお話。ヒコーキのお話はよいですね。盗聴されてる軍事回線で秘密を暴露しちゃうバカ皇子とか、いいですね(なにがだ)

三日

腎臓学会東部会へ。とったばかりとはいえ、腎臓専門医の資格更新には50単位が必要で、こつこつとりためておかないとあとでムンクするはめに陥ったりするらしい。
後輩の発表聞いたりして過ごす。

行き帰りの電車で「ナ・バ・テア」(森博嗣)を読む。

四日

休日。お子様たちの相手をして、ホームセンターへ買い物をしにいって。そのくらいで日がすぎる。

五日

出戻りで初出勤。
勉強のため留守にしていた位置づけなので「お久しぶりです」って感じ。皆様早速仕事を用意して待ってくれていた感じで(哀)。
外来透析の回診して、入院患者一人受け持ちして。普通に仕事の開始。

六日

「久しぶりですね」とか「お帰りなさい」とか、たくさんのスタッフから声をかけられる。
プライマリケアにおける5原則って考え方があって、近接性accessibility、包括性comprehensiveness、継続性continuity、協調性coordination、責任性accountabilityより成ることになっている。 このうち、日本のプライマリケアでは、accessibilityは比較的担保されていると思うのだが、comprehensivenessを持つような医療提供者があまりいなくて、複数の医師の協同でcomprehensivenessを確保すると今度は医局人事などの関係でcontinuityに難があることが多い、ってのが現状ではないかと思っている。
平たくいえば、開業医は長く続けて診てくれるが幅広く診るトレーニングを積んでいる医者は少数で、一つの診療機関にまとめて診てもらおうと思って病院へ行くと今度は確かに全科診てくれるけれども医局派遣だったりして頻繁に医者が変わる。なかなか全体として責任もって続けて診てくれる環境がない。
その現状に対してのわたしなりの答えはプライマリケアと地域医療を掲げる病院勤務、ってことなのだが。大学医局からの派遣がほとんどないので、少なくとも医局の都合で人が差し替えられるということはない。きちんと必要な医師数が確保されるならば、この形が一番患者さんの期待に応えられる形ではないだろうかと思っている。

七日

透析の回診をして、夜は透析当番して。
合間でSASいじり。まだ終わらない‥。

八日

今日から一人研修医が回ってくる。
ゆっくり考え方を学んでもらう方向で。

手持ちの電卓がなくて、机の中から電池が切れた電卓を見つけ出してボタン電池を入れ替える。いざ電源入れたら、液晶が死んでいたという罠。うぐぅ。

九日

普通にゆっくり業務。
夜は透析当番をして。

十日

午前中にちょっと子どもを連れ出そうとすると小降りの雨。回れ右して家に戻ろうかと思ったら「行く」と。ちょこっと自転車に子どもを乗せて一巡りすることになる。さいわいちょっと濡れるかな程度の雨で済んだのだけれど。
家に戻ってしばらくすると雨がやんだということでふたたびお出かけのご要望があり。今度は公園まで出かけた。

夜、布団収納庫が届いたということで組み立てを始める。YAMAZENの布団収納庫を二個組で。気がつくとやたらと組み立て式家具が多いような気がする。本棚にラックに大型タンスに小タンスふたつ。あとハイチェアも組み立てだったな。
しかし、今回はかなり大物。なんたって、組み上げてしまうと部屋から出せない。110cm×90cm×83cmで、戸口の幅が75cmしかない。引っ越す予定はないのだが、もし引っ越しすることがあったら壊して捨てていくか次の住人にプレゼントするか窓を外すとかの荒技を用いて出すか、というブツである。
まあ組み上げ自体はそう苦労もせずに出来上がった。一応工具箱にラチェットドライバーが入っているし、ねじの形でドライバーのトップを変えることもできるので。しかしさすがに一個組んだら疲れたので残りは翌日まわしに。

十一日

午前中に布団収納庫組み立ての続きを。さっさと組み上げてふたつ重ねると、結構な圧迫感。(笑) おかげで寝室に山積みされていた布団のほとんどはしまい込めた。

夜、「神の守人」(上橋菜穂子)を読む。上下巻一気読み。
一人一人の命を大事にするバルサの意思がさりげない行動の一つ一つに感じられるように思う。"守人"と名付けられる所以と思うが。

十二日

祝日透析当番で出勤。
空き時間で(結局まだ完了していない)論文やら統計解析やらを進めてみる。

十三日

日中透析当番で処方日。
なぜか院内ネットワークの動作が遅く、入力を終えてから処方箋が出力されるまでに1−2分の間があるような状態。自然と入力にえらく時間がかかる罠があり。疲れた‥。
ストレスなく仕事できるような電子カルテシステムは実はえらくお金がかかるので、その点から電子カルテをあきらめたり導入したものの効率が落ちている病院はあると思われ。すぐになんとかするのは難しい問題なのですが。

十四日

‥‥今日も処方日。夜の透析でも処方を出していたので、なんか一日処方をしていたような気分になる。

十五日

午後の外来は入院適応な患者を相手しているうちに終わってしまった.....

十六日

エア参拝。英語版なのは何故だろうと思ったりしつつ。仕事に疲れたとき、ふと立ち寄ってもいいかもしれないと思いました。

十七日

患者・家族のウラ事情って時にネタとしか思えない実話があるんですが。
精査目的入院したら大した問題はないとあっさり判明して、それならすぐ退院だねと奥さんに話を持っていったところ「もう少し長く居させてほしい」。実はこれだけならけして珍しい話ではないけれど、その理由を聞いたら唖然とする理由が。
「夫が留守の間別な男性のところに泊まり込むつもりだったのでもう少し長く居させてほしい」‥‥そんな理由で入院継続させられるわけないじゃないですか。「主人には内緒にしといてください」って言ってたらしいんですが、何も知らないとしたら夫もちょっと不憫かも。

十八日

朝方にちょろっと病院へ行って患者さんの様子をうかがって、その後自宅の枝払い。払うのはいいんだけど、落とした枝を集めて適当に刻んで袋詰めするのが非常にめんどくさい。
先日ラウンドアップを撒いてみた雑草地帯はきれいに枯れたので、そこは焼いてみたり。あとで敷石をしいて草が出にくくなるようにする予定なのだが。

夜、日付が変わろうかという時間にそろそろ寝ようと思ったら当直医から電話がかかってくる。緊急透析適応の患者来たる由。‥‥はあ。

十九日

病院行って緊急透析やって終わると四時過ぎ。そのまま仮眠して通常業務へ。
「泊まってたのに元気だね」と言われたのだけれど‥‥職業意識、ってやつですかね。

二十日

そろそろ出かけようかという朝方にまたもや当直医から電話がかかってくる。昨日緊急透析した人が朝方呼吸状態悪化した由。‥‥まだ水分が引け残っているのかよ‥。
昨日未明に一回、日中に一回透析して、合計5kgばかり水分を除去している。それでもなお水がたまってあっぷあっぷしているってことは、元々の状態っていったいどんな状態だったんだろうと思ったりする。

二十一日

子どもにつき合ってみいつけた!とかいないいないばぁっ!とか、見ることが増えている。
んで、なんでみいつけた!ではやたらとイスが出てくるのか、気になっている。

二十二日

朝の申し送りで夜間に精神疾患と思われる人が入院したとの由。紹介元はとある精神病院(‥‥)。当院精神科入院が受け入れられる病院ではなく、早々に精神科へ転院、という方針になったのだが、あちこちあたったあげく「精神科ベッドの空きを待ってください」って話でまとまったらしい(というか、耐えるしかないことになったらしい)。
今後「東京ルール」って名前の救急患者受け入れ輪番制が動き出すことになっている。要は救急病院にとって受け入れするのが大変な患者さんを、回り持ちでできるだけ受け入れて、適切な病院へ振り分けるようにしましょうって話なのだが、「精神科疾患もち」「高齢者」なんてのがしばしば受け入れ困難症例になっている。受け入れた後行き先がなくなるようだとますます救急の受け入れはやりにくくなるのだが、何とかならないものかね。
午後の外来には妄想チックな話の長い患者さんが。以前の記録を見るとあんまり変なことは言ってなかったみたいなんだけどなぁ。もしかして最近発病しちゃったかな?

二十三日

医局でとっている毎日新聞「ワクチン希望の医療従事者 想定の倍超す」という記事が出ていた。
記事では触れていないが、申請した数のワクチンが届いていないところが少なくないらしい。当院では申請した数だけ届かず、何割か減らされた量しか届かない由。院長曰くそりゃあないんじゃないかと東京都に問い合わせしたけれども抗議は受け付けない由で、東京都医師会と相談して決めたので変えられないと。ちなみにこのあと届くはずの患者用ワクチンを職員へ流用することはいっさい認めないと、なかなか強気な返事が返ってきたらしい。
‥‥戦力の重点配分ってことがわかっていないのだろうと説教したい気分で。新型インフルエンザ対応のワクチンが竹槍程度のものなのか十二分に爆装されたB29程度の威力があるのかまではわかりませんが、役に立ちそうなものはそれしかないってのに、出し惜しみしてどうするんだと。
病院って医者と看護師だけで業務をこなしているわけじゃないんだから、補助業務を担っている人まで含めて、実動部隊なんですけどねぇ。案内役の事務職が倒れて看護師がかり出されたり、放射線技師が軒並み発病してレントゲンが撮れなくなったりしたら、病院の機能は著しく低下するだろうって読みは働かなかったのだろうか。
まだ間に合うはずなんで、さっさと方針転換していただけるのを望みますが。

二十四日

出勤して透析当番やって、午後は病理解剖者慰霊祭。
去年は直接ご遺族への説明はなかったのですが、まぁだいたい毎年のように剖検とってる関係で、今年も説明に。それほど大きな問題はなかった方だったし。

そのまま当直へ。

二十五日

深夜はほとんど何もなく、朝日が昇り始めた頃から引きも切らずに患者さんがくる罠。
終わった後は家に帰ってちょっとのんびり。

二十六日

夕方、除細動器の説明会。機能が増えているのはよいと思うのだがその分面倒な扱いになるのは困り者。微妙なバランスなのだが。

二十七日

夜は飲み会。
一次会二次会とはしごしたら、結構食べ物が注文されていて、ついつい食べ過ぎた....

二十八日

namazuで過去メールの全文検索を作り直そうと思ったらエラーが出てうまく動いていないのでインストールし直しを開始。
分かち書きもMeCabに変更してみる。
GNU gettextとmecabはMacPortからインストール。途中でこけたのでいったんあきらめて寝ることにした。

二十九日

昨夜当直帯で入院した若い女性は、発熱で他院を受診したところ「検査では陰性だけれどインフルエンザだろう」と言われてタミフル出されたけれど一向に熱が下がらないので当院受診して、検査で腎盂腎炎と診断されて入院となった由。
午後一般外来やっていたら「サブイレウスだと思うので入院よろしく」と言われてさらに調べたらどうも心気的な訴えだろうという結論に至ったり。
診断って難しいんだけど、患者さんの病状以外のものが気になるとついつい判断がブレやすい気がしている。自戒も含めて、なのだけれど。

三十日

「秘密 top secret 7」(清水玲子/白泉社)読了。
今回は絵的な異形さは少ないものの筋書きや登場人物の心理はとっても痛いお話。「親と子っ」て」とか「命を守るって」とか、いろいろ考えてしまう仕上がりと思う。

三十一日

「獣の奏者エリン」本日は「セイミヤの涙」
政を進める中で、さまざまな「力」を行使しなければならない場面は必ず存在すると思う。「エリン」の世界では血を流すような「力の行使」は大公が引き受け、真王は清らかさを保つことで権威を保ち信仰を集める、そういった形をとっていることになる。けれども結局のところ大公は真王に仕える臣であり、真王の統治のために血は流されている。そう思った。
「十二国記」で景王陽子が腹をくくったとき、どのような形にせよ、国を治めるときに必ず血は流れる、といった意味の文があったと記憶している。
血を好むのは多分誤った政治につながっていくと思うが、血を流すことを回避することが目的になった政治は多分それも間違っていくのではないか、そんなことを思った。


Written by Genesis
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