歳時記(diary):五月の項

一日

本日より若干身分の変更があった。
‥‥それで、っておもむろに各種書類を書けって依頼が来るのはどうよ。事前に書いとく方がいいんじゃないかって書類が山のようにきた。

二日

家にけっこう未読本が積み上がっているので、少し消化。「二十世紀少年」十二巻までと「星虫年代記1」を読了。

合間で相方が通っている鍼医に行ってみる。症状としては軽く肩が張って痛むくらいなのだが、施術してもらったところでは「自力で元に戻そうという作用が強い」らしい。自分で適宜弛緩させたり緊張させたりがうまいらしい。それはまあ便利な力ではあるのだが。
鍼もメンテナンス的に使ってもらえればなんて言われたので、まあ気が向いた時に行ってみるか。

三日

オンコールで病院へ。
血管外科入院中の解離性大動脈瘤患者。心臓手前から大腿まで解離が及ぶ激しい症例でしっかり乏尿。少しずつ尿は出てきているようなのだが、CHDF実施して対応。合間で机を整理したりなんだり。
帰ってきてから「二十世紀少年」を読み進める。話が大分盛り上がってきていてどんどん読み進めてしまう感じで。前のめりに走り抜けていく感じで次々と手を出してしまっている。

四日

午前中から透析。大体目処が付いたあたりで一旦家に戻って帰省。

五日

「数学ガール フェルマーの最終定理」(結城浩/ソフトバンククリエイティブ)読了。前作よりはもう少し数学を知ることができたような気が。論理展開についていけた気がするのは「砕ける素数」のあたりまで。アーベル群の辺りからは感覚的に理解できないのでとりあえずなぞる程度にだけ理解した。
わからないのに、何故か楽しく読み終えることができたのは前作と同じ。

六日

病院で机が代わってInternet接続できる環境が得られたのだが、今度はプロバイダのOP25Bに引っ掛かってメールが送信できない罠。
Mewの設定を見直して、submissionの設定をかけてみると通るようになる。‥‥つーか、早くやっときゃよかった。

六日

総回診して、午後は少しゆっくりして、来週の発表の準備を進めて。
夜、「二十世紀少年」を22巻まで読了。盛り上げてきた割にはあっさりした終わりじゃないか?もうちょっとあるんじゃないかと思ったりするところで。でも、こういうお話は好きだ。

八日

日中忙しく働きながら、見学に来た学生さんのお相手。卒業後地元へ帰ることを考えて見学に来られた由。
自分が学生の時よりずっと、色々なところを見学にくる時代になったんだなあと思う。

九日

栃木まで透析診療所のバイト。終わってから車を走らせて都内へ。高校時代の同期生が結婚するということで祝う会。
大学入ってからあまり同窓会系の集まりにも出てなくて、久しぶりに会う人ばかり。「変わらないね〜」と言われるのはなぜだろうか。
高校時代の同級生は眼科医をやっていたり公務員だったり呼吸法のインストラクターだったり。色々で、それが面白く。飲んで喋って帰ってきた。

十日

母の日だということに気付いたのは、母親に会って帰ってきた後だった。

十一日

夜、抄読会の担当に当たっていたので気もそぞろな一日。
担当自体は無事にこなせてやれやれ。

帰ってみると相方が「21世紀少年」上下巻を揃えてきていた。
読み終えての感想としては、「マンガなんだからもっと盛り上げて終わってもよかったんじゃない?」って辺りだろうか。現実と仮想現実空間でのことが途中から混じり始めている感じで時系列もわかりにくくなってきて、最後は本当にあっさりと幕を閉じる物語。
ほんとに世界は救われたの?って問い掛けたい気分。ケンヂだったら「そんなわきゃねーだろ?」とか言いそうかもしれないが。

十二日

予定外に入院は入り、透析が大変な一日。

十三日

外勤。
午後の外来診察の終わったところで、看護師さんから「『今日は久しぶりに医者にかかった感じがした』といって帰っていった患者さんがいましたよ」と伝え聞く。
身体診察が診断や経過観察に占める割合は、各種検査が発達した現在必ずしも高くはない。腎臓病という自覚症状が出にくい疾患においてはなおさらで。それでも、聴診して脈を取ってもらうという「診察」に、患者さんは期待している部分があるのだろうと思う。だから、担当代わりばなでとりあえずたまには胸の音を聞いておこうと聴診をして回った若い医者のことを評価してくれたのだろう。

十四日

総回診。回診自体はつつがなく終わったけれど、集中治療室に重症患者が....。

十五日

入退院管理で憂鬱な一日。透析室のキャパシティを越える入院依頼が舞い込んできていて、どんな風に捌いたものか、と。
「すみませんが今は受けられません」と言わなければならないのはちょっとしんどいところ。

夜は今日でおしまいの先生方の送別会を催した後、集中治療室の透析を回す。ほとんどお泊まり。

十六日

もう明るくなってから帰ってきたら、息子は目を覚まして相方を叩き起こしていた。──さすがにそこからはあまり眠れなかった。
‥‥で、オンコールで出勤(核爆) 回診して、集中治療室の透析を対応して。何故かよくなってきたのでちょっと安心。
空いている時間でSASのプログラム組み。ううむ、解説書片手でもなかなか難しい。オンラインマニュアル英語だし。早く日本語訳してくれ〜。

十七日

相方が買って来た「ああ息子」(西原理恵子)を読了。うん、確かに無駄にダイナミックでエネルギーの使い方の方向性を間違っているとしか思えない行動ってあるよね。

十八日

今週から新しいローテーターの先生方が。約一月他の科で仕事をして来たところで科が変わる=仕事のお作法が変わる、ってことで、ちょっと気持ちを切り替えてお相手せねば。
今週は入院依頼が多い週。

十九日

‥‥気がついたら今日一日で透析室で扱うほとんどすべての血液浄化療法が実施されているという罠。CHDF・HDにG-CAP・L-CAP・IATにLDL-Apheresis。あとはPMXとPEくらい、か。

二十日

午前中透析室当番。患者さんの回診が終わるとそれほど大した用事もないので、PowerPointいじったり本を読んだり。「コペルニクス 地球を動かし天空の美しい秩序へ」(大月書店)読了。
「コペルニクス的転回」という言葉がある。この評伝ではその成り立ちを語りながら、宗教者で医者であったコペルニクスという人物を描き出していく。なんとなく、その人となりは同じく宗教者で生前は全く無名の研究者であったメンデルに似通っている気がした。

二十一日

総回診。患者数が多くなって時間がかかる。
夕方、研修医のカルテをみると身体診察の所見がほとんど書いてない。「どうしたの?所見取ってないの?」「いや、とってはいるのですが、どう書いたものかわからなくて」
しょーがないので所見一緒に取り直しましたさ。これはこう書く、と解説つきでね。

二十二日

一日、研究のための協力依頼で電話かけしていた気がする。一本一本は短いものなんですが、相手の先生の外来や手術の合間を縫ってかけてるので。
コンサルテーションに返事を書き、蛍光抗体法染色の所見を取り。‥‥統計データの解析迄手を付ける予定が挫折。

二十三日

子どもを預かる土日。
相方が飛行場まで行くのを車で送り届けてから、日本科学未来舘へGo。とっても久しぶりではあるのだが。三歳と一歳では正直展示を楽しむことはあまり期待していなかったが、ASIMOの実動展示は静かに見ていてくれたし、核酸がアミノ酸をコードしていることを解説した模型をブロック代わりに遊んでいたりとそれなりには堪能したのではないかな。
特別展示の「お化け屋敷を科学する」も見たかったのだけれど、言うこと聞けないガキ二人つれて一人で入るとメンド臭いことが起きそうだったのでパス。上の子、けっこう怖がりなので。
ほどほどで切り上げて、昼食を付設のロッテリアで食して帰ってきた。帰りの車の中で「楽しかった?」「うん」「何が楽しかった?」「ご飯」という問答があったのはこのさい放置することとしよう。

二十四日

雨模様の天気。午前中に洗濯物の乾燥に出かけて、道すがらに「獣の奏者」青い鳥文庫版の最終巻を買ってくる。
昼飯にうどんを作り、ごろごろしているうちに子どもが昼寝したのでその間に「獣の奏者」を読み。夕食の買い物に出て、本屋に寄り道したら「週刊 歴史でめぐる鉄道全路線」なる雑誌のポスターが。最近電車大好きな息子がじーっとポスターを眺めては「これ何?」「こっちは?」。しばらく他の棚を巡った後にまたポスターを眺めて「これは?」。──しまいには店員のお姉さんが同じ絵柄のチラシをくれたので大事そうに持って帰っていた。

二十五日

新型インフルエンザの話題もだいぶ食傷気味になってきたというか、きっと調べきれてないんだろうなって気分になってきているこのごろなのだが。安全宣言 国に要望 京都市長とかってニュースが飛び込んできてびっくりした。
へーそーかー、京都市では(このあと周辺市町村でどれだけインフルエンザが猖獗を極めたとしても)インフルエンザにかかる心配はないって主張であるわけですね。こいつは驚いた。ぜひみんなで京都に行きましょう。
感染症(それも飛沫での感染がある)が流行している場合人の往来はできるだけ少なく抑えたいところで。観光地の収入が減るのは予想されますしそれを保障する制度を作れとかはそれなりの理屈も通ると思うのですが、風評被害(‥‥そもそも人の往来を減らしたいのだから観光に行くなと呼びかけているのだが)を起こさないための「安全宣言」って発想は、「宣言しちまえばこっちのもの」って感じの非科学性を感じさせてなかなかイイ発想だと思います。

二十六日

午後は予定で腎生検。問題なく終わった....はずが、終了後しばらくして血圧低下。内部で出血が起きてしまったらしい。
内出血であれば血腫そのものが出血点を圧迫してそのうち止まる理屈にはなっているが、やはり平静ではいられず。出血が続いているか確認のための血管造影を夜に実施。出血は明らかではないので保存的にという方針になった。
ある一定の確率で起こしてしまう合併症の一つなのだが、どこか悪いところがあったのではないかと考えてしまうのも仕方ないところ、と思う。

二十七日

外勤。透析室の様子を見ながら来週の発表に向けてのスライドを作っていく。
午後外来やって、病院へ戻ると昨日の人は病状悪化なく元気にしていると。ほっと一息。

二十八日

総回診。終わった後はスライド作りとか。
夕方他の科の入院患者さんに病状説明。入院してきて血液検査したら腎不全、って患者さんで、透析が必要だよとはかかっていた医者に言われていたようだけれども、嫌がってそのままにしていたらしい。
悪いことが今後起きるだろうという予想を伝えられて、逃げ出してしまう人は存外に多く。それでも逃げ出している間は何も変わらないので、予測された事態は往々にして正確にその人に襲いかかる。正面から向き合える人ばかりならば人の世はもう少し変わったように動くのだろうけれども、つい逃避をはかってしまうのもまた人間なのかもしれない。

二十九日

ここのところiBookの調子が悪く。起動するときにうまく起動ディスクを見つけられなかったり途中で止まったりする。そんなわけでそろそろ欲しいな〜と思っていた新パソコンをApple Storeで注文。MacBookのメモリとHDDを増やして、MS Officeをセットにして。HDDはそれほどいらないとは思ったのだが、BootCamp使ってWindows使えるようにしようかなという野心もあって。

三十日

「海の底」(有川浩/角川文庫)を読了。
自衛隊三部作海編。まあ底というほど深くないというのはおいておきます。正統的怪獣もので群像劇。潜水艦の中も機動隊もいいキャラクターが沢山。望と翔のフルネームのエピソードが好き。

三十日

誕生日が先日恙無くすぎたということで(ぉぃ)、ケーキなぞ買ってきて食べてみる。息子が嬉しげに仕切っているのはどういうわけだか。単に"はっぴーばーすでーつーゆー"が好きなだけだが。(註:息子の中ではケーキイコール"はっぴーばーすでーつーゆー"になっていたりする)


Written by Genesis
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