歳時記(diary):九月の項

一日

最近多い腎生検。本日の患者さんは高齢の女性の方。貧血精査で消化器科が担当中に腎障害が出てきたということで検査になった。
主治医は消化器科の科長の先生。内視鏡の腕は院内一、ややこわもての先生なのだけれど、検査の間後ろで見ていてくださって、検査が終わるとやさしく患者さんを労っていた。
時間の都合がついたから、ではあるのだろうけれど、受持の患者さんにそうやって対応している姿は見習いたい姿だと思った。

二日

最近台所に立つことが多い。学生時代は自炊で生活していたけれど、最近ではメンドウがって外食で済ませてしまうことが多かった。
自分で作るのは嫌いではない。時間と心の余裕があるならば、自分で作って自分で食べるのはわりと楽しい時間だと思う。自分で片づけまですると一仕事きっちりやった気持ちになれる。

三日

出勤日。
夜から当直ということで、中抜けして電気屋へ。──昔入院で診た患者さんに遭遇したけど。
買ったのはセキュリティロック。ワイヤーで固定して盗難を防ぐものなのだけれど。試しに鍵をかけてみたら開かないし。実際に使ってたらえらいことになるところであった。

四日

当直明け。
ふらふらと都内へでて、映画。ヒトラー〜最期の12日間〜(原題:Der Untergang)を観賞。
二時間以上あるのだけれど、長さを感じない重厚で面白い作品。第二次世界大戦末期、ドイツの敗勢が確定的となってから、ヒトラー他中枢の人々がドイツ首相官邸地下の要塞にこもり、最期を迎えるまでの12日間の物語。ユンゲとして登場するヒトラーの秘書の手記を下敷きにしているというだけあって、リアルに情景が描き出されていく。敗戦を前にベルリン脱出を考えるもの、最期までの徹底抗戦を主張するもの、少しでもよい形での降伏を模索するもの──。
そして、アドルフ・ヒトラーは、頑固で、時にヒステリックで、冷酷でかつ優しく、誇り高くあろうとする衰え始めた老人──そんな風に描かれていると思えた。
映画の冒頭と最後に登場する、トラウドゥル・ユンゲ本人へのインタビューも興味深い。ユンゲ自身はヒトラーという人間の様子は実際に見ていたが、ヒトラーの指令でどのようなことが行われたかは知らなかったとのこと。ラストでも「若さは無知の言い訳にはならない」と語っている。かつて聞いた、「ヒトラーも選挙で選ばれた」という言葉が頭をよぎった。ちょうど現在進行形の総選挙で、未来にヒトラーと呼ばれる人物が当選していくのかもしれない、そんな風に思って。

五日

長期入院だった人とか退院が続いて、ちょっと一息な週頭。
‥‥とかいいつつ、日付変更間際に重症患者さんで呼び出される罠。朝近くまで透析〜。

六日

昨日の人は結局自分で主治医に。予後厳しそうだな‥‥。

七日

強い雨風が吹き荒れる。こんな日でも来院される患者さんは、たいへん、としか言いようがないだろうと思う。

新聞もテレビも日々選挙報道。
「コイズミさんの姿勢がいい」みたいな意見もあるけど‥‥もう何年もやってる首相なんだもの、イメージはどうあれ、実績で選ぶもんじゃないの?とか思ったり。郵政民営化しかやりたいことないのかね。それほど実績を語れない首相なのだろうか。

八日

とこしへはあるよ。
ここにあるよ。

というわけで(どんなわけだ)さだまさしのニューアルバム「とこしへ」を購入。いや、病棟で副主任さんから「買いました?」って聞かれたもんでね(超爆)
週末で聴こうかな‥‥。

九日

病棟で腹痛起こし始めた受持患者。結局緊急手術〜緊急透析へ。
透析が回り始めた十時過ぎ、夕方遅くに入院になった患者さん対応やら夜間透析当番やらで結局腎内科スタッフ三人全員が残っているという状態に。好きで残っているわけじゃないんだよぉ。

十日

先日買ったワイヤーロックを持って販売店へ問い合わせ。交換してもらえて、家へ帰って試してみるとしっかり動いた。
病院って個人情報(それもかなりデリケートな)をばんばん扱っているところだけに、慎重になりたいと思う。

十一日

眼鏡の修理で白山眼鏡店へ。鼻あてとフレームをつなぐ金属が緑青を吹いてしまって汚れた感じになっていたので鼻あてを取り換えがてらフレームのゆがみ直し。それなりの会計を覚悟していたら部品代だけでちょっと拍子抜け。

帰ってきてからTeXShopGIMPのインストール。目指せ総オープンソースiBook。(ぉ
もともとpTeXはインストールしてあったのだけれど、TeXShopをダウンロードしてアプリケーションフォルダにいれるだけでGUIでTeXが利用できる環境ができ上がった。

十二日

夜間透析当番しながらTeXShopをいじってみる。クリック一つでプレビューを見ることができるのはラクといえばラク。でも、TeXのコマンド自体をあまり把握してない人間としてはコマンドリファレンスを手もとにおいて使う必要があるかも。

十三日

外来透析と入院透析の掛け持ちでばたばたばた。間に面談までしてたから余計に。
お医者さんとゆっくり話をしたい患者様がた、ぜひとも医者の数そのものを増やしてくださいな(切実)。

十四日

ニュートラ:適性・適職診断

仕事
ユニークな発想でベンチャー向きのタイプ
性格
型破りのクリエイティヴ・タイプ
恋愛
恋も仕事も結婚もゲットする欲ばりタイプ

特に向いている職種は?

マスコミ関係、デザイン、スタイリスト、カメラマン、イラストレーターなど広告や出版の企画。コンピュータのソフト関係ならゲームデザイナー。アパレル、ファッション、化粧品関係。輸入関係、外国関係なら独立して自分の会社で。飲食関係ならフードコーディネイター、オーナー・シェフなど

攻めのタイプです。
病気やトラブルをかかえると、落ち込みやすいので要注意

内向性(ディフェンス型)
1■□□□□
外向性(オフェンス型)
5■■■■■

ユニークな発想でベンチャー向きのタイプ

社会のルールにしばられず、人に言われなくても自分で仕事を見つけて、どんどん進めるプロジェクト・リーダータイプです。規則やルールに厳しい会社では能力が活かされませんが、ルールがわりと緩やかなクリエイティヴ系、ベンチャー系の仕事なら、組織のなかでもなんとか活躍できるでしょう。せっかくポジティヴで素敵な性格をもらったのですから、大きな夢にチャレンジしてみてください。新しい分野の仕事、人前に出る仕事、自分で考えたり、企画する仕事などであなたの個性は活きるでしょう。ただし、自分の分野で自信過剰になり、調子に乗りすぎると足をすくわれますので気をつけて。周囲への気配りも不足しがちですから、ときには大人のふるまいを。

型破りのクリエイティヴ・タイプ

考え方はポジティヴでいつも前向き。明るく元気で賢い人で、仕事もできるのに、なぜか規則を守らないタイプ。組織としては、かなり使いづらいタイプです。やさしいのですが、特別な気配りは下手というより、キャラクターとしてしないタイプ。そこに親しみがあって人気が出ますが、組織のなかでは、所詮「出る杭」になりがち。上下関係や社会のルールをきちんと守ることが苦手ですから、結果として一匹狼になりそうです。ただし、本人としても、会社や組織にそれほど未練もないでしょう。若いうちは組織に入って、自分のスキルをしっかり磨いておいてください。スキルが高まり、人間関係のネットワークができたら独立のチャンスです。このタイプの人は好奇心旺盛で、人生を楽しむことができます。ただし、社会的には少数派であることを自覚しておきましょう。組織から出てしまえば、あなたの能力だけが評価の対象となります。社会の価値観や常識に左右されないので、ユニークな仕事を自分で始めてみてください。

恋も仕事も結婚もゲットする欲ばりタイプ

前向きで明るいから、恋にも積極的。社会の価値観や道徳にしばられないタイプなので、難しい恋愛でも悩みは少ないかも。恋と仕事を天秤にかけないので、両方ともゲットしてしまうでしょう。とくに女性の場合、同じ年代の男性たちはちょっとあなたを持て余すかも。あなたから見ても、同世代の男性たちは幼稚に見えるかもしれません。男女共に結婚しても、恋はできるタイプ。自己責任で、恋愛だと言いきれる強さをもっていますから、もう何も心配いりません。どうぞ、この世をしっかりと楽しんで充実した人生を送ってください。

‥‥そんなにわたし、好き勝手生きてますか?(滅)
個人的には組織の中の反体制派って感じにとらえてるんですがね。

十五日

少しずつ受持が増えて、それなりに忙しく。
患者さん診察しているだけで日が暮れて、当直に突入して。

十六日

外来。
比較的数が多い日に限って慢性腎不全の新患が飛び込んでくるってどういうわけだか。
日本って健診が盛んな国って印象があるんだけど、今日の二人は「健診ではいつも尿蛋白って言われていたけど気にしていなかった」「健診は若い頃に受けたっきりもう二十年も受けてない」‥‥。
こと腎疾患に関して言えば症状が出て受診する人は多くなくて、症状が出ないうちに末期腎不全まで進むことが珍しくない。調子が悪くなってから受診したら「透析をしなければ」といわれてショックを受ける人がいるのだけれど。はぁ。

夜、仕事終わって机に戻ってみると、内科学会からの書状あり。なんとか内科認定医試験合格の通知。
中開けてみると「病歴要約について○○の記載が抜けている」とか、指摘がされており。一応それなりに努力して書いたものだけに、ちゃんと見ていることがわかってよかったかな。

十七日

透析当番で出勤して、夜は他院の方も含めてのカンファレンス。
コメンテーターでお招きしている先生が出身地へ帰られるとのこと。今夜は奥様も一緒においでになっていて、終了後の飲み会もご一緒に。
奥様も医師資格をお持ちのようだったけれど、結婚後は家庭に入られていたようで。学問ひとすじで来た夫との日々は不満もあれど、大切なものだったと語られていた。今のところは自分の思いをパソコンで文章にしている最中とのこと。「ぶろぐ」にも興味をお持ちのようだった。
「少くして学べば壮にして為すことあり。壮にして学べば老いて衰えず。老にして学べば死して朽ちず」昔図書券の袋のうらに印刷されていた言葉がある。調べたら佐藤一斎という人の言葉だそうだが、老いてなお学び、表現する意欲をお持ちなのは、見習いたい姿だと思った。

十八日

思い立って出身高校の文化祭へ。高校時代の部活の演奏を聴きに行く。
わぁレベル上がってるねぇとか感嘆しつつ。

夜は合格祝いでしゃぶしゃぶ食べに。久しぶりに腹いっぱい詰め込む。

十九日

日直勤務。
午前中はあっちこっちから呼ばれつづけ。PHSの履歴を見たら一分おきにコールがあったりして。合間に自分の受持患者も診たりして、午前中だけでおなかいっぱいの気分。
午後は少し落ち着いてきていたけれど‥‥。

二十日

久しぶりにゆっくりと仕事が進む。最近重症とか入院とか多かったしな‥‥。
そろそろ学会発表の準備もしないといけなくて。ポスターセッションって初めての経験だし。

TVで映画「黄泉がえり」をやっていた。間でこの胸いっぱいの愛をのCMもやっていたのでページをみてみると‥‥綺麗にクロノス・ジョウンターが消えている‥‥。
このお話のいいところって、自分の「時間」を犠牲にしてもクロノス・ジョウンターを使って何かを成し遂げようとする、そんなところだと思うのだけれど。というわけで、お前ほんとに『原作:クロノス・ジョウンターの伝説』だと言いきるのかと小一時間問い詰めたい気分。

二十一日

夕方ふらふら病理室へ行くと何やら密談中(違)。お題は「次のCPCはどの症例でやろうか」であったりするが。当院ではいまのところ病理解剖をいただく数より臨床病理検討会の回数の方が少ない。全体の臨床病理検討会でやるとなると、解剖で診断がつくようなケースとか、臨床経過の謎が病理所見で解けるようなケースがいちばんためになるのだが、そういう例ばかりではないし。むしろ専門家には非常に興味深い、けれどハデなところは何もない症例という方が多い。
そんなわけで、症例選びといっても簡単ではないというお話。

二十二日

夜、医局の医師有志にて宴会。若手から古株までいろいろ取り合わせて。
「勉強しなさい」とはっぱをかけられることしきり。そろそろ勉強中で逃げ回るわけにもいかなくなってきているしなぁ。「質問する」立場から「質問される」立場になるのはそれなりに気が重い。
ヒポクラテスの誓いでも、後輩を教えることを誓っていたな、そういえば。

いにしえの某学内ネットニュースの過去ログを見ていたら、ゲルルンジュースの原形かと言うようなあやしいジュースの話が。‥‥缶を振って崩さないと飲めないジュースって‥‥。

二十三日

再び日直勤務。今日は比較的平穏に。
外来対応でばたばたしているところに病棟から電話かかってきて、看護師の方では心配そうだったのだけれど問題なしと判断。でも家族は心配しているということで看護師の方が板挟みでたいへんだった由。まだ若手の看護師さんだったから、余計に悩んだようで。
病状ってやつがクリアカットにわかる指標が確立していればどんなにか楽だろうと思ったりする今日この頃。軽症そうな重症、重篤そうな軽症などをみていると特に。

衆院で憲法委員会が設置されるニュースを聞きながら、群青の空を越えてのページを読んでみる。つくばが舞台だから、って興味もあって。
グリペンって飛行機がおもろい。前もどっかで戦闘機比較してたの読んだときも面白いって思ったけど。「専守防衛」を掲げるなら、こーゆー戦闘機がふさわしいな、と思う。
殺人も傷害も赦すべからず、がわたしの信条。だから、戦争は不法なものであり軍隊は不要なものである、と考える。言っちゃえば憲法九条を現実にするべきってのがわたしの立場。
だから昨今の憲法九条改正論議には否定的なのだけれど──それでも、わたしが生きるためには、人を傷つけ、殺すことがあり得るだろうと思っている。そうしなければ生き延びられないときには、きっと。たとえ罰を受けることがわかっても、それをしなければならないって思いに駆られることはあるかもしれないし、その時はせめて、堂々と罰を受ける人間でありたいと思う。
軍隊って結局のところ殺人の合法化に過ぎないって思う。合法的な殺人を国が許可する、そういうものだと思う。でも、それを赦したら、あの有名なチャップリンの言葉「ひとりを殺せば殺人だが、戦争で大勢殺せば英雄だ。」がぴったり当てはまってくる気が、する。
だから、思うのだ。すべからく殺人は犯罪として、どんな理由があろうとも(情状酌量はあるにせよ)罰するようになったら、もう少し平和になるんじゃないか、と。あれこれの理由のもとに行われる「戦争」という殺戮行為が減るんじゃないかと。

二十四日

朝から不動産回り。よい出物があるとのことで中古物件へ。売り主さんみずから滔々と説明していただくこと一時間以上。(爆) 三十年以上たってるんじゃないかって電気炊飯器とか見られたからよしとしよう(ぉぃ。果ては庭木とかまで解説していただいたし。
結局ローン持ちになること決定。ローン持つと一家破産まで一直線みたいな偏見も自分の裡にあったりするんだが、大丈夫だろうか。

そのあとふらりと旅へ。新幹線の車内で「マルドゥク・スクランブル−燃焼−」読了。

二十五日

旅、ってのは相方が研修で遠出したのに同行してるだけ。なので結構空き時間ができていて。午前中はミスドでコーヒー飲みながらぽちぽち文章書いていた。
その後昼食を摂って帰京。新幹線で禁煙の指定席をとろうとしたらかなり混んでいるということで、えいやとのぞみのグリーン車なんぞに乗って帰ってきた。道すがらで「わたしはあい 02」(外薗昌也)読了する。

さて寝ようかというタイミングで病棟から患者急変の報。病院行って、いろいろして、丑三つ時近くになってから帰ってきた。

二十六日

週末におきたよしなしごとの始末をいろいろと。

病理のボスに学会発表用の写真について聞きに行く。「出力はやっぱり外注した方がいいですかね?」と聞いたら「そんな、女の人の写真を出すわけじゃないんだから」といなされた。そーゆーもんですかせんせ?

二十七日

受持でひとり、五月から入院してる人がいる。手術目的で外科転科になって、その後の回復がなかなか思わしくない人。
体調を万全にして‥‥と思っていると進まないと考えて、まずとにかく自宅に帰れるようにいろいろセッティングしていくと、帰れるならがんばろうというような前向きさが患者さんにも出てきていて回復も早まっている感じ。よかった、と思える結果になればいいのだけれど。

二十八日

朝六時から検査。薬物負荷試験。
採血に難渋しつつ検査を済ませて。変な時間に起きたもんだから、一日なんか眠くて。

‥‥で、そのまま当直へ。いや、仕事する前にまず寝ましたよ、きっちり。
それでもリズムが違う感じで。

二十九日

mixiのページ(といっても何も置いていないが)の訪問者がちまちまと続いている。多分今後もなにも置かないけど。

早く帰れたので、自宅でホコリかぶっていた昔のマシンからHDDを取り外す。あとでHDDケース買って仕込もうかな。
それから、自宅用DHCPサーバ用にOpenBlockSなぞ物色する。‥‥楽しんでる時間はあんまりないけど。

三十日

外来。多忙。つっかれた。
最近退院が相次いでいるのだけれど、退院すると退院時要約がたまるわけで。長期入院になっていた人の要約を作らないといけないのが憂鬱。


Written by Genesis
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