歳時記(diary):十月の項

一日

受動喫煙と肺がんに関するJTコメントへの見解を読む。うむ、極めて正しく受動喫煙容認論を粉砕するコメントと思う。JTが個別の臨床試験や論文の内容には触れずに俗論で受動喫煙のリスクを低く説明しようとしているところを、エビデンスを重視して論破する書き振りはがんセンターに対してわたしが期待したい形の問題提起で。こういった提起はとても大事だと思う。

二日

夕方患者病状悪化で呼び出し有り。看取りまで対応して帰ってくる。

三日

透析医学会誌に掲載されていた「透析の見合わせに関する刑法的許容性の根拠の検討」を興味深く読む。透析療法を行わないことが、刑法でいう不作為犯に問われることはないのかという観点からの検討。医療行為の差し控えが簡単に不作為犯になるようだと医師側は効果が乏しい/患者にとって利益とは思えない場合にも医療行為を行わなければならない強迫観念に駆られかねない。もちろん無条件に医療行為を行わないことが正しくなってしまうのも問題があるし。

四日

持ち患メチャ多いので必死で仕事しているとあっという間に当直。

五日

当直明け。……透析患者のデータチェック終わって午後10時でしたがなにか。

六日

午後外来は数はそれほどない割りには早く終わらない。
夜の救急に胸痛とST上昇を伴う患者さんが来て、ああこれは典型的な心筋梗塞ですねと研修医に解説していたら、心臓カテーテル検査の結果はたこつぼ型心筋症。……ああこりゃまた典型的なたこつぼ型心筋症ですねと(滅)。

七日

一人当番。演題を仕上げたのは結局日付変わってから。

八日

腎臓学会東部会。
演題喋って、旧交を温めて。IgA腎症絡みの企画が割と面白かった。

男女参画企画を時間潰しのつもりで聞いていたら、視覚情報として網膜に映ったもののうち、脳の視覚野まで上がってくるのはわずか、という話を聞いて、ああ地図が判らないとか数字を覚えるのが苦手とか、こういうところにつながっているのかなとなんとなく納得した。

学会終わってから相方と待ち合わせて夕食。焼き肉食べて、満足して帰ってきた。

九日

子供たちがいない日曜日。
遠出して日帰り入浴。のんびり浸かって、リフレッシュして帰ってきた。

十日

祝日出勤してそのまま当直へ。

十一日

明け。ICUに研修医の患者は入るわ、自分の患者は肺胞出血してくるわでてんやわんやの一日。何とか終わったぜという感じで。

十二日

寝つくか寝つかないかで病院から電話がかかってくる。治療方針聞かれたから簡単に答えたらわかりましたで終了。‥‥何が聞きたかったの?考えなくてもわかる程度の治療方針なんだが...。

十三日

入院している思春期患者さん。内科っていうより精神科な感じで、夜のナースステーションで手持無沙汰だったようなのでたまたま医局においてあった「つづきはまた明日」と「ぶたぶた」をお貸ししておいた。われながらナイスチョイス(滅)

十四日

研修医の受け持ち患者がそろって複雑な病態で、カンファでの検討にとっても時間がかかる。まぁ有意義であればよいのだが。

十五日

土曜出勤、そのまま当直へ。
夜中に病棟でクレーム訴える患者さん。話が長くて要領を得ないで他罰的。どうしたもんかと思いつつとにかく明日、といってその場を何とか収める。クレーム訴える戦略を練るような人はそもそも対応に困るようなクレームしてこないけどね。

十六日

当直明け。
家に帰ってそのまま子供会の廃品回収。運んで缶潰しして。その後は自宅でのんびりとしてから子供の歯医者に。

夕方から思い立って「君の名は」を家族揃って観る。「ほしのこえ」以来観ている身としては、長編となっても随所に細かな描きこみが見えて、それが良い雰囲気を出しているのが嬉しくあり。話の筋としても「すれちがい」を上手く設定しながら最後は幸せな結末で、幸せな気持ちで見終えることができた。
男女の入れ替わり、距離の壁に時間の壁。それだけの距離を超える想いを描くということでスケールの大きい話だけれど、「ほしのこえ」も光年単位の距離の壁があるお話だったので、この辺は「SFっていいよね」ってことかもしれない。

十七日

朝来て入院した腎不全若年患者。‥‥なんの病気ですかこれは。
病名不明病態不明で相手するのはかなりしんどい。一緒に見ている研修医くんはもっとしんどいだろう。夜になって調子がさらに悪くなり、結局ある程度落ち着かせて帰ることにしたのは日付が変わっていた。

十八日

ICUが落ち着かない。他にも調子の悪い人が落ち着かない。昨日よりはましかというレベルで。

十九日

医局のMacのファンが回り続ける謎の症状が発生している。Google先生に尋ねたらSMCのリセットが効くらしい。それで治ったのでほっと一息。

二十日

ICUで調子悪い人の診断がだいぶついてきて....でもこれでいいのか?
夜に生検とか慌ててやったりしていて。

二十一日

盛りだくさんのカンファをやって夜は当直。

二十二日

当直明けで、転院搬送のめどだけつけて...と思っていたら全然めどがつかずにめげるしかない状況。困ったもんだといいつつ、しょーがないので先送り。

二十三日

午後から子どもの演奏会。学校での出し物。がんばっていたのでよしとするか。

二十四日

朝から転院搬送の相談に病状急変と振り回されている当科ローテーション中の研修医。夕方剖検まで終わって疲れ切っているところを、ご苦労さん飲み会企画して労ってきた。

二十五日

ちょっと落ち着いてきたので放置気味だった患者さんに(ぉぃ 目配りできるようになってくる。‥‥問題が多いけど...。

二十六日

夜は腎生検カンファ。お呼びした病理の先生があまり体調よくないとのことで早期撤退。一応他のメンバーで一通り飲んで。

二十七日

救急外来に脾梗塞とか来てたけど...いったいどうやって治療するんだか。

二十八日

午前中から一人仕事。

二十九日

午後から日帰り出張。行き帰りで「やがて恋するヴィヴィ・レイン1」と「天久鷹央の推理カルテ」面白く読み通した。

三十日

子供たちが学習塾のハロウィンパーティだと盛り上がっていて、送り届けにお出かけする。帰りも引き連れて帰る必要があるため変に時間が余って、とりあえず本屋に寄ってあれこれ本を仕入れる。ざっと五千円くらい。
帰りとかで読みふけって乗り過ごしかけたのは一応内緒だ。

三十一日

次々と退院予定が決まってばたついている一日。外来は来るのが遅いし..。


Written by Genesis
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