歳時記(diary):二月の項

一日

高校バスケ部での体罰に端を発して五輪代表での「暴力」「体罰」がクローズアップされているところでこんな文献を知る。結論を要約すれば、丸刈りを実施している都道府県でそれによる教育効果が上がっていると示せる指標の変化は見られず、家出率が高くなるなど指標の悪化すらみられるとのこと。
頭髪を管理すれば品行方正になるというような簡単なものではないと論じたものでなかなか興味深かった。

二日

夜は当直。
まったく受診していなかった末期腎不全と透析患者の重症患者が来院。晩飯喰い損ねるところだったぜ...。

三日

当直明け。透析絡みであれこれあるので、午前中のお出かけは相方に代行してもらう羽目に。
夕方は妹夫婦のところでたこ焼きならぬいか焼き作って宴会。

四日

外来が数多くてしかも飛び込み新患まで来る罠。

受け持ち患者が日ごとに膨れ上がっているので診きれていない現状があり。困ったもの。

五日

外の診療所の透析回診。待機時間使って「"朝顔" ヒカルが地球にいたころ(6)」を読み進める。

六日

入院とか外来とか。患者数が順調に増えているのは困ったもので。
午後からなんだか体調今一つ感が。熱が出ているような感じだけれども測っても高くない。寝れば治るかなぁ。

七日

未明に目覚めて熱測ってみると37.7℃。大した熱ではないかと寝倒れる。一応朝まで寝倒して、出勤してまずインフルエンザ検査。熱もそれなりに下がってインフルエンザ陰性なのを確認して仕事へ。
この日は外来も入院もあり。気がつくとほぼ毎日入院患者がいるなかなかしんどい状態...。

『ダイ・ハード / ラスト・デイ』公式 ‏@DieHard_JPより:
雪という予報が出た。結果、降らなかった。それでいいじゃねぇか。お前ら一体いつになったら学ぶんだよ。「備えたけどムダだった」ということを受け入れられるようにならないと災害には備えられない。毎回「備えろ」というクセにお前ら何がしたいんだ。このアホたれ! #diehard_jp」
仰る通り....。

八日

体調も戻って、普通にお仕事。
どういう訳かやたらと仕事は多いんだが。

早めに帰って子どものお迎え。息子を学童に、娘を保育園に。息子連れて保育園へ行ったら名前を呼んで駆け寄ってくる女の子あり。どうやら妹と同じクラスの子になつかれているらしい。……あと十五年くらい大事にしとけよとか(ぉぃ

九日

午後に予定があったので少し早めにステーキ屋で昼飯。……んーやっぱり安売り店は肉がいまいちかなぁと思ったり。
夕食食べたら眠くなってきたのですぐ寝てしまった。

十日

だらだらした日。息子たちに付きあって公園へ出かけて、子供らが遊んでいる間に「植物図鑑」(有川浩)を読了。イタドリもタンポポも食べられることは知っていたけれど、あんまり食べたことはないなぁ。
夜は「夜の底は柔らかな幻」恩田陸を読みふける。「常野物語」の様な「能力」を取り扱うお話だけれど、「ネクロポリス」や「禁じられた楽園」の様な雰囲気も。最後のまとまりは比較的ついているほうかなぁ。

十一日

透析当番で出勤。割と落ち着いていてほっと一息。

十二日

多忙。あれやこれやと相手しながら、処方せんも多量に発行し。

十三日

午後病棟業務に専心できたんで少しはまし。医療って時間が解決する問題があるので、とりあえずの対応でもやっとくとあとは時間が解決してくれちゃうケースは少なくなくて。いや別に医者なんかなんの力もないとか言うつもりはありませんが。

十四日

朝出勤してみると、受け持ち患者がひとり夜間に心静止まで一瞬起こしていた由。そこからまた脈拍正常まで戻っていたのだけれど、結局夜になったところで看取りとなった。

十五日

急に徐脈とか2型呼吸不全とか起こすのはやめて欲しいとか、願ったところで叶えられるはずもないことを願ってみたりする今日この頃。
そして夜は当直。

十六日

夜中には自分の受け持ち患者以外ではあまり呼ばれず。
挿管して抜管してなんてちょっと格好悪いよなぁ。

十七日

朝方看取りで呼ばれる。行ってみるとICUに急性腎不全患者がいるとのことでそちらでもばたばた。そのくせ午前中子どもの面倒見ることにもなっているので一通り済ませて慌てて戻る。

「宇宙兄弟」観てたら、日々人が大事になってるのにおとーさんおかーさんがあんまりいつも通りなのに苦笑。状態を理解してないわけじゃないのだけれど、根本的にとらえ方が前向きというか明るいというか。こないだ亡くなった患者さんの奥さんがこんな感じだったなぁと思ったりして。

「裏閻魔」(中村ふみ)読了。
「ポーの一族」を思い出すような、不死者と生者が過ごす時間の物語。彫物というそれ自体が日陰の技術を通奏低音にしながら、幕末から二次大戦末期までを生き抜く人間を描く。
ヒロイン奈津が凄絶、と思う。わかる人にはわかるように説明すると、さだまさしの「秘恋」か、あるいは「舞姫」か、と。内に秘めるほど烈しい、そういうものだと思う。

十八日

外来はそこそこの混み具合。話が長くなる人が数人いてもなんとか終わる程度。

十九日

診療所の外来。待機時間を使って「裏閻魔2」を読み終え、家に帰ってきてから「裏閻魔3」を読了する。
「2」が閻魔と夜叉、そして惠子の関わりを描き、「3」では再び閻魔と奈津の物語に戻る。そんな気がした。さまざまな縁にからめ捕られながら人の運命は揺れ動く、そんな感じのスケールの大きいストーリーは見事と思う。メディアミックスばやりの昨今だけれど、この作品は実写の映画で観たい気がする。

二十日

午前中外来の透析を診て、少し落ち着いて病棟を回る。

二十一日

午前中のところで一人抜管をば。人工呼吸からの離脱は時にトラブルがあるので慎重にしたいけれどあまり待ちすぎると却って時機を逸する。無難に抜管が出来てほっと一息。

二十二日

夜のCPCは病理所見が興味深い例で。今後自分が診ることは余りないだろうが、へぇと思いながら聞いていた。

二十三日

午前中ちょろっと息子の学校公開へ。こっそり覗いてみるとふらふら立ち歩くこともなく奇声を発することもなく授業に参加しているのでまぁ及第点ではと(ぉ それぞれ自分の答えを発表する時間にはきちんと猫背にならずに文章が読めてたようだし。
午後は職場の研究発表会。分科会形式で進めたのだけれど....お前ら原稿作ったら一回読んでこいよと。七分の制限時間をオーバーする奴多すぎ。

二十四日

日直行く前に「宇宙兄弟」を観る。子どもたちはようやく番組が終わった辺りで起きだしてきたのだが、息子がまず「海賊が見たい」……昨日の夜「モーレツ宇宙海賊」をちょっと観たのが頭に残っていたらしい。でもなんでモーパイ好きなんだよこいつ。

二十五日

外来診て病棟診て会議すると終わって。……患者を診きれてないかもと不安だったり。

二十六日

外来透析の処方。計30枚くらい処方せんを書く。「薬残ったりしてない?」とよく聞くのだけれど、正直に残薬を勘定してきて教えてくれる人あり、全然把握してなくて適当な人あり。処方された薬をきちんと用法通りに飲むこと(そして飲めないならばその理由も含めてきちんと医師に伝えること)が徹底されたら、もっと医療費は削減されるのではないかと思ったりする。

二十七日

処方書いて透析当番して。後輩が診ている患者が調子悪いので一緒に頭を使って。"教える"というより”一緒に頭を使う”ほうがある意味では教育効果が高いのではないかと思ったりする。

二十八日

「包括的な管理をお願いします」って開業医から病院の臓器専門外来向けに患者が送られてくるってどうよ。高血圧に糖尿病に腰痛に腎不全といくつもの病気を抱えた、専門莫迦になった医者には診きれない患者にきちんと対応できるのが内科開業医の腕の見せ所じゃないのかねぇ。
まぁ、下手な内科開業医よりは上のレベルの総合内科診療がしたいとは思ってますが。

夜は当直。


Written by Genesis
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