歳時記(diary):一月の項

一日

新年明けまして初出勤。
最近元旦朝からの出勤はなかったなぁ。やってたことは透析当番なのですが。

二日

休日。ゆっくり寝倒して、雑煮を食って「年の初めはさだまさし」の録画を観て。
「神様のメモ帳7」を読んでいたら、ハイドンのオラトリオ「天地創造」が出てきてにやり。この曲、13番”Die Himmel erzählen die Ehre Gottes”を演奏したことがあるんですな、高校時代に。割と楽しかった記憶が。後半の盛り上がりが好きな曲で。

三日

透析当番出勤。
当院透析室にはドイツ製の透析コンソールが二台ある。一台故障していて修理の見積もりとらないとなぁなんて話をしていたのですが。
「ドイツ製ってだけで、『ドイツの科学は世界一ィィィ』って感じがしません?」って言ったら爆笑してくれた看護師さん一人....。「シュトロハイムでしたっけ」って言ってたな。

四日

仕事始め。初出勤ではないあたりが。
本日より腎臓科ローテーション開始のDrに説明をしたり、年末年始に入院した患者さんの割り振りをしたり。穏やかなほうではあったと思うが.....。

五日

土曜出勤して、夜当番まで対応する。待機中に机にたまったあれこれの紙ゴミ・雑誌類をまとめてくくって積み上げる。少しは机がさっぱりした。

六日

のんびり起きたあと、秋山温泉へ。中央道の空きっぷりは見事なほどで。笹子トンネルが対面通行にも関わらず渋滞の情報はなかったものなぁ。
温泉入って温水プールで遊んで。食事もおいしくとってリフレッシュできた。

くつくつ笑う」で思い出したのが十二国記の「図南の翼」に登場した「笑う妖魔」朱厭。調べてみるとくつくつ笑うシーンは他にもいくつもあるのですが、なぜかこいつを一番に思いだしました。

七日

外来。来院ペースが安定せずに待ち時間が....。

八日

午前中透析外来の回診、午後も透析回診。合間で十人以上の病棟患者を回る。

九日

外来カルテを眺めていたら、めまいの患者さんについて「耳鼻科で所見なければ内科へ。Genesis(仮名)先生がいいか?」と。……をれ、めまいはあんまり詳しくないんだが。診るのは嫌いじゃないが。

十日

当科ローテーション中の研修医の書いたサマリーをチェックしながら「怒脹」という文字に引っかかる。普通は「怒張」だよなぁと。ただまあ、「脹」の字が常用漢字でないとかそういう理由で置き換えられた可能性が高いかなぁと思ったり。
とはいえ、研修医がそこまで考えながらサマリ書いたとも思えず、かくして指導医はもんもんとするのでありました。

十一日

昼過ぎ病棟急変。ひさぁしぶりに挿管して心臓マッサージして。最近当院に自動心臓マッサージ器"LUCAS2"が配備されたのを思い出したのだが、持ってくる前に心拍再開したので使用はせず。
救急医療を描いたドラマなどで心臓マッサージしているシーンはいかにも「先生が手を尽くしてくれている」イメージで美しく思えるが、自動心臓マッサージ器でがっこんがっこんと機械的に実施されている映像が普及した場合「ああはなりたくない」と思う人が増えるのではないかと余計なことを考えてしまうようなブツである。実際には手で圧迫するよりも効果があるとかいう話もあるのだが。

十二日

土曜日出勤してあれやこれやと。

十三日

日直出勤。
普段自分が午前中外来当番のことが多いのだが、今回は午後外来当番。午前中は割と落ち着いていたようだったのでこのままゆったりペースだったらいいなぁと思いながら午後の救急外来を始めたらなんだか次々来院があり。4時間でざっと20人ほど。
こうなるといかに「さばく」「無難にこなす」かが重要になり。インフルエンザ流行もあるので「イクラを見つけてインフルエンザ」とか、snap diagnosisの手だても使える範囲で使い。検査していると時間がかかってしまうので、軽症例が多かったとはいえインフルエンザ以外の検査を出したのは数人だけだった。

十四日

近所の神社でどんど焼きの予定だったのだが、折から降り出した雪が激しく参加を断念。この冬購入したチェーンを装着してみる。SNOW TROTTERなのだが要領が摑みづらくだいぶ時間がかかった。……それでも相方がスーパーで買い物している間にはおわったので両側合わせて3-40分というところだろうか。走ってみるとやはり安定感が違うと思えた。

十五日

大雪の翌日が怖いのは実感。
起きて少し雪かき。子どもを保育園に送るのは車で行き、少し思案して透析診療所へは単車を走らせる。家から太い道に出るまではまだ雪がだいぶ残っていて心臓に悪い感じだったのだけれど太い道ならそれなりで。

十六日

もう大丈夫だろうと娘を乗せて自転車で出発。家の隙間の坂道にさしかかったら全面が凍結している路面があり。走るのも怖けりゃ止まって立つと靴底が滑っていく恐怖もあり。なんとか通り抜けましたが。

十七日

学校でパソコンを使いだしているといって息子がパソコン使用を所望する。……ウチはMacだからたぶん学校のパソコンとは違うと思うんだがなぁ。
一応息子のアカウントを作り、ペアレントコントロールを仕掛ける。しかしgoogleすらまともに使える様子ではなく。大丈夫かなぁ。いっそのことチェスとかだけ覚えさせるか(滅)

十八日

放射線と発がん、日本が知るべき国連の結論を読む。今回の福島の事故において、それほど広範な健康被害を生じたとは思えないというのはまずはよいことだろう。しかし、その結果を生みだすのに広範な人々の避難を要し、風評被害を含め大きな不安を呼んだということを考えると、今回の事故でそれほど大きな被害がなかったからといって原発の稼働は問題なしとするのは短絡だろうと思う。「今回程度の事故が起こることは許容しながら再稼働」という方針は採りたくないと思う。

十九日

土曜出勤。空いた時間でメシ喰ったりして夜に備えようかなぁとか思っていたのだが結局そんな余裕はなく。
夜は当直。何故だか救急車の依頼は多めで「診察まで一時間待ちでもよければ」とかいいながら受け入れしたりしていた。それでも来院する辺り、周辺の病院も混みあっていたのでは。

二十日

当直明け。眼鏡屋へ行ってフレームの歪みを調整。そろそろレンズを変えたほうがいいと言われたけれど、調べたら結構前から使ってるなこの眼鏡。

「灼熱の小早川さん」(田中ロミオ/ガガガ文庫)読了。悪をなすつもりもない人々が集まっただけなのに気付けばクラス活動も風紀も崩壊しているというあたりは一種の合成の誤謬なのだろうか。リアルにありそうな部分がある作品だけに、逆に最後がすっきり片づきすぎのような気も。現実には単純に学級崩壊状態で主人公たちは意気消沈とか、そういう感じで終わることが多いんじゃないかなぁと。
「月の影 影の海」で「自分の意見を考えるより他人の言うままになっているほうが楽だった。」という独白が出てくる。「夜明けのブギーポップ」ではブギーポップが「普通の人間が一番危ない。なぜなら、特別なことに出会っても、自分を持とうとしている人間ならば、それを冷静に受け止められる。しかし普通過ぎるとその波に飲み込まれるだけで、あとはただ流されていくだけだ。そういう”暴走”が一番危険なのさ。」と語る。作られた状況に乗っかってその上を流れていくような行動様式は確かに省エネルギー的ではあるかもしれないけれども、状況の流れ着くところまで否応なく押し流されていく危険をはらむ。空気の読み方に長けるよりも、空気の作り方・流れの変え方に長けるようでありたいと思った。

二十一日

外来始めたところで電子カルテがトラブル。まったく動かないわけではないのだが速度が上がらない。プリントアウトを出すのに数分かかるような状態。
なかなか原因究明ができないという困った状態だったようで。

二十二日

昨日の電子カルテトラブルは結局Oracleのデータベースソフト関係のトラブル、とだけあたりがついたらしく。つまり解決は出来ていないらしい....。

二十三日

夜は当直。あんまりはじめ呼ばれなくてゆっくりできるかと思っていたらあとからぼつぼつ。急性アルコール中毒の救急車を受けたらおしっこのみならずうんちまで漏らされたりして...。

二十四日

インフルエンザが猛威を振るっているのだが、外来数はちょっと落ち着いていた午後。

二十五日

夕方になって、少し遠い診療所からの相談は超長期透析の患者の敗血症とのこと。……まあ、誰もとりたくないよねぇと思いながら、「『治らない』時代の医療者心得帳」の「たまにはジョーカーを引いてみろ」という言葉を思い出したりした。
……そんなことを同僚の先生にしたら「先生はあえてメンドくさいほうをとることが多いと思うんですけど、まわりに気を使っているのかそういうのが好きなのかどっちなんですかね?」と聞かれた。まあ、メンドくさいケースは確かにメンドくさいけど、最後の最後まで「担当しなきゃよかった」と思うようなケースではないことが多いですからねえ。

夜当科担当のケースカンファレンス。発表を終えた研修医をねぎらいに宴会へ。

二十六日

朝はよから起きて子どもに飯を喰わせて駅に送り届ける。雪遊びツアーに預けてみた次第。二人揃って勇んで出かけ、久しぶりに子どものいない一日。
せっかくだから旅行しようということにして、軽く荷物を作って積翠寺温泉坐忘庵へ。中央道を走ったのだが休日とは思えない空き具合。対面通行のところですら渋滞には至っていないという。やっぱり風評被害なんだろうなぁ。
PHSが通じないようなところなので、風呂に入って飯を喰うとやることがない。多量に持ち込んだ本の消化にいそしむ夜とした。「かすてぃら」(さだまさし)読みながら爆笑したりして。「さだのヤバいじいちゃん」が別タイトル、と言ったら読んだ人には納得してもらえるだろう内容。
露天風呂の貸し切りが申し込めるのだが、到着が遅くなったので深夜に割当となり。行ってみたら厳寒で。それでも浸かってみると暖かいし空には月と星、まわりには雪が少しに椿の蕾と、雪月花を堪能できる湯だった。

二十七日

のんびり起きて、ゆっくり朝食食べて帰ってくる。道中どこに寄ろうかとガイドブックを見ていたら県立美術館にミレーの絵が多いとのことで訪問。ゆっくり眺めて帰ってきた。

午後には「エヴァンゲリオン劇場版 序」を観賞。TV版と大きな流れは一緒なのだがいくつか細かく設定変更があるのと絵がだいぶ変わっているのと。続きもみてみたいところ。

二十八日

午前外来・午後病棟カンファレンス。
まぁ普段通りの多忙.....。

二十九日

午前中診療所の外来やって、戻ってきたところで病棟を診て。

三十日

夜は当直。
研修医が夜間救急研修でついていて、一緒に患者を診る。経験になってくれたならいいのだけれど。

三十一日

明けて、病棟診たあと午後は外来。
eGFR異常、といって受診してくる人あり。eGFRが普及したことは早期発見には役立っているのだろうけれど、overdiagnosisも増えたってことなんだろうなぁと思ったりする。

夜は製薬メーカーの社内勉強会に呼ばれる。所謂MRさん向けに腎臓と薬剤についてを小一時間。結構腎臓は薬関係でトラブルを抱えやすい臓器だし、さまざまな薬が腎機能によって動態の変化を来す。腎臓と薬の関係はきちんと把握して欲しいなあと思っていたりする。


Written by Genesis
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