歳時記(diary):五月の項

一日

ホテルランチ食べたいご希望の相方の指定で上野へ。どういうわけか娘があんまり沢山は食べなかったけれど、疲れてたのかなぁ。
その後は不忍池を回ってから上野動物園へ。わたしが子どものころの動物園の雰囲気より、より動物とのあいだの垣根を低くしてあるというか、そんな感じがした。パンダも一応一瞥して(ほんとに短時間観ただけだし...)帰ってきた。
帰りの電車の中ではこどもたちは爆睡。その隙に「半熟作家と"文学少女"な編集者」を読了。

二日

外来・病棟・その後当直。全体にせわしないのが月曜日....。

三日

当直明け。
帰ってきて少し寝倒れて「魔法少女まどか☆マギカ」一話観て。

四日

休日。

中止すべきワクチンのエントリをみていろいろ思う。結核ねぇ、昨年一年間で入院患者で二人くらい発生してたなぁ、とか。そこそこに蔓延しているのは間違いがないので、あとは優先順位とか費用対効果とかの問題だろうか。肺結核発症するとかなり長い間治療を要するし日本の結核予防法では隔離を用いていることを考えると、発症すれば社会的影響は大きいとして、BCGを続けておくことに意味はあるとは思う。やらないでも対策は打てるけれども、という感じだろうか。

ユッケ食べてHUS発症、とかいうニュースで焼き肉屋は空いてるだろうから行こうよといったら、同じこと思っている人がきっと沢山いるよと相方に却下された。
生食用牛肉ってのはほとんど流通してないなんて裏事情が明かされたわけなんだが、その割りにはあんまり生肉にかかわる事故は起きてないなぁと思ったりして。業界全体の事情とはまた別の個別事情がないと今回続けて食中毒が発生した理由は説明できないと思うのだが。

五日

透析当番で出勤。
夜半、調子悪かった患者さんのお看取りまで終わって帰ってきて23時...。

筋力補助スーツで復旧作業支援というニュースに心引かれる。「戦争が科学を進歩させた、だから戦争は必要悪なのだ」という意見を耳にしたことがあるけれど、過去に確かにそういった面があったにせよ、未来永劫にわたって戦争がなければ科学の進歩が遅くなるわけじゃないと思ったりする。必要が科学を進歩させる、というのは多分間違いのないところだとは思うのだけれど。
このスーツの特色は「動力装置なし」というところじゃないかと思う。ロボットスーツは充電池を動力源にしているとのことだし。より災害援助向き、といってもいいかと。

六日

連休明けた金曜日。剖検いただいたので手配して腎生検を臨時で手配して透析の回診やって腎生検やって総回診やって、夜透析の回診までやって一日が終わる。

七日

土曜日は大きなイベントがなければ割とゆっくり。書き物とかしてから帰ってきた。

八日

子どもの為に学校へ冷房入れたいと東京電力に要望するが「ふところ具合が厳しい」と言われるなんてニュースを読んでいろいろ思う。
まず、いきなり東京電力の窓口に相談を持ち込むところがどうか、と。東京電力は冷房設備をつける力を自前では持っていないし、結局支払いを誰がするかという問題で、それは窓口の職員が一存で返事できることじゃない。どっちかというと設立母体である役所や学校法人の理事会などに話を通してまず冷房をつけることを決めて、その後でその費用を東電が持つように交渉するってのがあるべき流れではないかと思うのだけれど。東京電力が負担してくれないなら冷房つけない、ってことならそれこそ設立母体の方が金を惜しんでいるとしか思えない。
そしてもう一つは必要性の問題。線量マップを見ると福島市内は最強の地域でも3μsv/h程度。この状態が一年続いたとして被曝量は26mSv/yearと計算される。室外でこのくらいなので、室内に入ればそれだけでかなり下がることは間違いなく、実際には外部被曝からの健康障害は考えにくいラインだと思う。外気が窓から入ってきていたとしても、健康被害を想定しなければならないかどうかがまず疑問なのではないかと思う。
あとは内部被曝だが、これについては定量的な議論ができないので、リスクをどこまで見積もるか、ということになると思う。放射性物質の排出が止まっていれば少なくとも放射性ヨウ素については半減期の関係で新たな対策は不要だろうと思う。セシウムなどについてはよく分からないのだけれど、大気中からの吸入を抑えるための対策を打つ必要があるかもしれない。その場合、最も有効な対策は空気清浄機だろうと思う。それも、イオンで空気中に浮いているセシウムなどを除去できるかはわからないけれど。冷房については、窓を閉めて快適に過ごすには向いているが、被曝を軽減する役に立つかは謎、と思う。要は窓を閉めておくことが大事であるわけで。
それに、電力需要が逼迫している中、わたしが東京電力の担当であるならば、「電力需要を引き上げるような施策は....」と二の足を踏むと思う。福島県内の学校のあちこちに冷房を完備すると、それだけかなりの電力需要増が見込まれることになる。その分の電力をどこからひねり出すのか。学校としてソーラーパネルもセットで設置した、なんていう話ならいい話だ、と思うけれども。

九日

夜透析の回診をして、その後はいろいろ書き物。

十日

夜は書き物の時間。あんまり終わらないのぉ....

十一日

夜は新入医師歓迎会をやっていて、でも中途入職の某Drはなかなか仕事が終わらずに苦労していた....

十二日

夜は当直。
薬物多量内服したという患者の依頼あり。比較的意識はしっかりしていたのでどこで処方された薬かを聞いたら、「精神科の主治医。ただそこは予約のみなので他にも内科開業医で言えば処方してくれるところで多めに貰っていた」との由。
わたしは、この手の「薬が足りないので.....」の処方希望は注意する。血圧の薬を一つ二つ程度ならば強い副作用も少ないことが多くあまり問題はないが、血糖の薬やステロイドは頻用されている一方で管理不良である場合重篤な副作用もあるので、少しだけ出して早めにかかりつけへ行かせるように指導することが多い。睡眠剤などは効果不十分なのに漫然と使われていたり、ひどい場合にはヤミに売りさばかれていたりすることもあるので、場合によっては処方はできないと断ることもある。
毒を以て毒を制するのが薬の処方の基本と思う。そのあやうさを忘れないようにありたいと思う。

十三日

ユーザーのクリックを乗っ取る「クリックジャック」とかって記事を知る。日付を見たら旧聞に属する部類だが。「影響を受けないブラウザはLynxくらいだそうだ。」って、そもそもLynxをマウスで使おうとする人はどれだけいるのかとひとり突っ込む。

十四日

朝は比較的早めに目覚める。ときどきだけれど、朝目覚めがよくなるスイッチが入ったようになることがあって、そういう時期は夜割りと遅くても朝はきちっとさめる。それで、そんなに疲労感が強くなることもない。
日中書き物して、夕方から職場の透析スタッフの自主学習会。夜は飯まで食べて帰ってきた。

十五日

朝何となく早めに目が覚めたので、録画の「まどか☆マギカ」5-6話を視聴。魔女退治がちっとも進んでないとか突っ込むのは野暮ってものでしょうねきっと。
「正義の味方ってのは、徹頭徹尾受け身に行動しなければならんのだ!」(by今和野京志郎in"小娘オーバードライブ")とか思い出した。

相方が起きだしてお弁当が準備できたところで水遊びもできる公園へ。水着着せて遊ばせたらきゃいきゃい言って喜んでいた。

十六日

キャリア教育、なんてことばを何度か聞いた。
個人的にはあまり好きにはなれないことばだと思う。考えて突き詰めていけばいくほど、きっと洗練されて効率的になっていくのだろうけれど、その先にあるのは線は細いけれどスマートな身のこなしは覚えたキャリア教育エリートなんだろうと悪罵を投げてみたくなる。
正直、現代はわたしから見て乱世、と言っていいと思う。時代の流れはさまざまに移ろい、栄枯衰盛も激しい。そんな中、昨日の基準を物差しに明日の自分を考えるようでいてどうすると思う。明日になれば消えてしまうかもしれないものに頼れば、はしごを外されてぼう然とするのは自分だ。
わたしが思う「あるべきキャリア教育」は、ある意味でははしごを外されてぼう然としたところからどうやって立ち直るか、なのかもしれない。あるいは、羅針盤の作り方、なのかもしれない。きれいに装われたブラックボックスの交通手段で目的地まで連れていってもらう人生ではもはやどこに連れていかれるかわかったものではない現在、ナイフ一本で方角を知り火をおこし、身の安全を確保しながら道も知らぬ砂漠を渡っていける、そんな力を身に付けさせることが、本当の意味でのキャリア教育ではないかと思ったりしている。

十七日

夜は腎生検カンファレンス。そのまま飲み会予定だったのだけれど病棟患者急変につきキャンセル。しくしく.....。

十八日

急変対応で結局一時過ぎまで病院にいて、四時半過ぎに呼ばれてまた病院へ行ってお看取りして剖検をいただいて調べさせていただいて。
早く帰れてよかった.....。そのまま子どもの迎えに行かないといけなかったけど。

十九日

ECG danceとかって動画が。なんだか医学版シュレーディンガー音頭って感じが。

二十日

ここんところ毎晩遅くて、ちょっと疲れ気味....

二十一日

透析当番で出勤。そのまま当直へ。
救急外来はけっこう患者さんが多く。難聴の方が二人も来たのがちょっと珍しかっただろうか。

二十二日

当直明け。午前中他の仕事を手伝って、それから帰ってくる。
「まどか☆マギカ」みたりなんだり、わりとだらだらして。

二十三日

夜半に呼び出しを喰って、病院戻って透析。始まったのが11時、終わったのが2時。……また当直したようなものじゃないか。
しかも透析診療所の応援に午後から行く予定だわ、準緊急の手術を一つ頼まなければいけないわで大急ぎで。診療所ついて一息ついて、待機時間だし一眠りしようかと思ったら目がさえて全然寝つけない罠。ヘンに交感神経優位になってるんだなきっと。うつとか不安神経症の人が寝れないときってこんな感じなんだろうなと思ったりした。
目を閉じても眠れないので、持ってきていた「ライディング・フリーダム」を読む。それほど長くはなく一気に読む。けっこう面白い。脚色していろんなエピソードを加えることができそうな、そんな話だと思う。

二十四日

総合内科専門医の受験のための書類整理に時間を費やす。何とか間に合いそうなのだが....患者さんの個人情報を抹消するのがけっこう大変で。パソコンからプリントアウトした書類は黒マジックで塗りつぶしても、透かすとけっこう元の文字が見えてしまうもので。

二十五日

RDGの公式PVは、なんか作品の雰囲気とだいぶ違う感じがするんですが。

二十六日

夜は当直。比較的呼ばれずに済んだけれど、日付変わるくらいのところで急変コール。結局夜半過ぎに死亡確認...

二十七日

昼過ぎに入院依頼がまとめて四件くる罠。うち二件くらい緊急処置の検討が必要で。結局夕方に無理言って内シャントの血管拡張術を。普段入っている先生が入れないので自分で処置の助手をやることになってしまった。

二十八日

夕方から病棟の宴会。しかし、雨の中ということで皆様終わったあとは早々に解散。……ちっ。

二十九日

まどか☆マギカを観終わる。
ひと言でまとめると、願いには必ず裏表がある、そんな感じでしょうか? 願いが叶った時しかしそれが生み出した結果に「こんなはずじゃなかった」と思うことは時にある。 じゃあ願わなければそんな思いはしないのかといえば、何も願わずに叶えずに生きていけるわけじゃない。そのgapをどうやって埋めていくのか。そんなことを思った。
たぶん最後の解決はそれこそ魔法に依ったそう簡単にはとり得ない解決法なのだろうけれども、弥縫策ではないのも確か。わるくないエンディング、と思う。

全くの余談。「彼女たちは、魔法少女。魔女を狩る者たちさ」というキュウべぇの台詞でKanonを思い出したりしてましたがダメでしょうか(死)

三十日

魔女語フォントとかまどのフォントとか。しっかし、よくこんだけ解析するなぁ。

三十一日

総合内科専門医試験の出願を終えて、余勢を駆って仕上げが終わっていない論文の図表作りなんぞを。
こういうのって自分で決めた締め切りをがんばって守るようなことしないとやり上げられないからねぇ。


Written by Genesis
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