歳時記(diary):八月の項

一日

少し早起きしてあみプレミアム・アウトレットへ。目当ては出張用のカバン(スーツもはいるようなの)だったのだが、無事そこそこの値段で目的に適うブツが手に入ったので撤退してくる。つーか、昼にはちょっと早い時間だというのにもう食事スペースがいっぱいってあたりが。
うろついていたらついこの間まで入院していた患者さんと遭遇する。元気なのは何より、とは思うが。

帰りがけにアンティーク家具のウェアハウスの看板を見かけたので立ち寄ってみたが、なんでこんな看板なきゃ誰も来ないようなとこに店を構えたんだってのがまず第一印象。興味あるなら時々行ってみても楽しそうだけど。

二日

オンコール。
先週よりは落ち着いていて、午後はひたすらアンケートの入力をする。単純労働って集中力を削られるんだよね‥‥。

三日

七八九の三ヶ月あたりで夏休みを取る人がでる。労働者の権利というものなのでそれを消化することは歓迎すべきものと思うが、日頃ぎりぎりの体制で動いているとなるとぼやきの一つも出てきてしまう。しかも夏休みを取っている人がいるタイミングで忌引が発生したともなれば、間の悪さを呪うしかない。

四日

午後に腎生検と透析用カテーテル穿刺とがダブルブッキング。少しの時間差でなんとかやりおおせる。
アンケート入力とSASでの解析と日常診療とが並列進行。切り替えうまくしないとたいへん。

仕事中に内線がかかってきて、製薬会社の人が面会希望、と。手が離せないタイミングだったのでその旨を伝えたら、「ではメールアドレスを教えてもらえないか」と。
‥‥正直心当たりも何もなく、一応伝達したのだが、後になっておいていった資料を見るとお門違いの問い合わせであったことが判明。「まずアポイントとって訪問来いよ」とあきれてしまった午後。

五日

外勤。
先週とは別の患者さんの緊急透析の相談あり。午後の外来もいっぱいいて、落ち着かない日だった。

六日

午前中に総回診。午後に腹膜透析外来でチューブ交換など。
初めてのことは、とても興味深い。

七日

夕方、救急外来から電話。透析患者が高カリウム血症から不整脈を出している由。
どたばたして透析を始めて、改めて尋問問診してみると、カリウムがあがったはっきりした誘因はわからないとのこと。一通り話を聞いた後で家族と面会しているさいの会話を聞いてみると「スイカをたくさん食べた」と‥‥。果物食べるとカリウム上昇して危険ってことは知っていて、言うとまずいと思って隠していた様子。
あえて触れずに家族と「一般論としては果物とかとりすぎるとなるんですよね〜」「スイカでもなりますか?」「はい、ありますよ」「ほら、お父さんやっぱり‥‥」なんてネタのような会話が。

八日

午後から車で実家へ。晩飯喰って雑談して。子どもは実家行くの大好きらしい。(主におばーちゃん大好きらしく)

九日

午前中軽く庭掃除。すぐに汗がだらだらになるのだが、それでも「夏ってこんなもんじゃないよね」と思ってしまうくらい。冷夏だな今年は。
終わって夕方にはプロペラカフェへ久しぶりに。残念ながら飛行機が飛ばずにちょっと当てが外れた感じ。

夜、電車の中で「悲しき人形つかい」(梶尾真治)読了。

十日

早く帰る約束をしつつ仕事が終わらない日。あうぅぅ。

十一日

アンケート入力を最後まで、何とか。
データ打ち込みしてしまうとそれは「データ」になってしまって面白みはないのだけれど、アンケート用紙の余白に書かれた一言や言い回しに笑ってしまうことがある。
今日見つけたのは最後に定型句として「ありがとうございました」と印刷してあるのだけれど、「いえいえ」とお返事が。──いや、そういっていただけると疲れがとれますねぇ。

十二日

外勤先の病院が盆休みということで休暇にする。
パスポート取りの手続きして、銀行行ってメシを喰って。‥‥あれ、これだけで終わりかよ?
他にも映画とかいろいろ考えてはいたのだけれど終わってしまうとあっさりと。

十三日

総回診して、午後は透析を。
集中治療室で透析している人が不整脈出してきたというので相談していたらとなりのベッドの患者さんの様子がおかしい。外科が殺気立って処置をいろいろ始めているのでお手伝いを始める。あとで後輩に「スイッチ入ってた感じでした」とか感想を言われた。

十四日

大嵐の一日。
入院が三人予定されているってだけでちょっと大変になりそうだなあとは思っていたんですよ。その上に緊急入院が二人来るってどうよって感じで。

絶望的な戦況であっても戦力を出し惜しみすることはしないのですが。「この戦況をジオング一機でひっくり返すのは無理だよなぁ」などと思ってしまう状況というのはやはり存在し。連邦の物量に対抗することを命じられるジオン軍のようだと後輩とぶつぶつ言っていたりする午後でした。

十五日

九月に夏期休暇予定ということで、旅行の相談でH.I.S.の店舗へ。初めの狙いはマウイ島だったのだが、ハワイ旅行(≒オアフ島旅行)に比べて割高ということで断念。資料もらって帰る。

十六日

午前中海水浴へ。子どもたちは浜辺初体験。興味津々で波打ち際に寄っていって‥‥寄せる波にあっさりこかされる。そんなに荒い波でもなかったのだけれど、三歳と一歳という体格と、足下の砂が波に洗われて動いていくのでバランスを崩したのか。
そんなわけでものの三十分で十分満喫、という気分になったらしい。元々あまり長居をするつもりもなかったので、すぐに帰ってきた。

十七日

透析患者は山盛りで、腎生検も臨時で組まれているとキツい一日。予定外のことは起こらなかったのでまあ何とか。
データ解析のお仕事が行き詰まっている。回帰係数と切片求めて回帰直線書いてみると元データとずれたところを回帰直線が通るってどうよ。どこで間違ってるのかなあ、検証しないと。

十八日

穏やかにすぎた日。
相方からのご希望あり早め帰り。たまに早く帰ると子どもらが大興奮でよじ上ったり膝に乗ってきたりでちっとも寝やしない。‥‥いつものこととも言うらしいが。

十九日

外勤。
終わってから勤務先に戻ってきて腎生検の患者説明を組んでいたりする。遅れそうになってあわてて戻ってきたら、まだ患者家族が来ていなかったりする罠。待たせなくてよかったって思いが一番でしたが。

二十日

回診があって、夜は新人歓迎会。

どうも左半身中心にぴりぴりしたしびれが時々走る。感覚障害も運動障害もないようなのでなんだかよくわからず。頸椎症かなあ?

二十一日

巷では新型インフルエンザが流行してきているようで。
透析患者は実は薬が体内に蓄積しやすい関係で、タミフルは1錠飲めば十分な治療濃度が維持されることになっている。透析患者で新型インフルエンザの死者が出たということだけれど、前述のようにタミフルはむしろ飲みやすいくらいだし、耐性化していたウイルスだという話にもなってきていない。とすると、感染したウイルス自体はタミフル感受性があったけれど、インフルエンザを追い出すだけの体力をすでに患者さんが失っていたということなんだろうなと思う。
これまでのインフルエンザでも死者は出ていて、それは多くの場合老人や各種疾患治療中で免疫不全であったり易感染性がある人が中心だ。必ずしも新型だから死者が出たわけではないことはおさえておきたいポイントだと思う。パニックを起こさないために。

二十二日

遅くに起きて、近所の親水公園へ。世界の淡水魚とかって特別展示が組まれていたのだけれど、息子の興味を引いたのはボタンをおすとLEDがきらきら光る公園全体のジオラマであったりする。──ロケットとロボットの区別もついてないようだからしょーがないかもしれないけどさ。全体に無生物方面へ興味がわくらしい我が息子。
娘は娘で全体にパワフルというか繊細さに欠けるというか。草食男子に肉食女子と呼んでいたりする。

夜は近所の謎の洋食屋へ。"謎の"というのは何故かこれまで食べにいってみると決まって休みであったため。日曜定休であるらしいことを飲み込むのにだいぶ時間がかかってしまい。それを把握した後ランチ食べにいったら臨時休業だったりしていた。
今日は普通に営業していて、普通においしくいただいてきた。ハシだけで食べられる料理、ってあたりが「洋食屋」である所以かなと。

「日曜日に生まれた子供」(紺野キタ)読了。うう、前回(SALVA ME)よりさらに801度が強い‥‥。百合もあるけど。でも買ってしまうあたりに業が深い感じがしてしまう。
オヤジ度たかいしな。

二十三日

期日前投票をすませた後で、医局の後期研修説明会&納涼会。
研修説明を軽くすませて、近くの料理店で立食パーティーを。研修先に迷っている後輩たちと話しながら「とりあえず腎臓内科に入っとけ」とかいい加減なことをいいつつ。

「煙突の上にハイヒール」(小川一水)読了。近未来に、一人乗りヘリコプターとか介護用ロボットとか猫の首輪につけられるほどの小さな動画カメラとか、今より少し進んだ機械が登場する作品群。そこで展開する人間関係が面白い。人間ってそんなに大きく変わらないんじゃないかなって思うような筋書き。
最後の「白鳥熱の朝に」に登場する近未来なブツは新型インフルエンザ──通称「白鳥熱」。パンデミックの後の世界はもしかしたらこうあるかもというリアリティを感じさせるもので、さすがは「復活の地」を書いた著者らしいと思った。

二十四日

出勤してから当直であることに気づく罠。うぐぅ。
とはいえほとんど呼ばれない当直だったのでのんびり過ごす。

二十五日

そういえばやってなかったと思いながらnamazuのインストール。MacOSXにnamazuをインストールするページを見たりしながら何となく入れてみる。大丈夫かな?

二十六日

外勤。
外来透析患者さんのレントゲンにどうもあやしい影があると思ってCT撮ってみると癌でしょうとコメントがついてくる。透析患者の死因の2−3割は癌だから珍しいというわけでもないが。家族に連絡を取って面談して。こんなとき非常勤医は手を出せる範囲が限られていてなかなかつらい。

二十七日

にこにこと仕事を増やしてくださる上役の先生約一人。「俺休んでる間よろしく」とのたまわれる先生約一人。ううむ、困ったものだ。
というわけで、新生児の出生時体重の変動やら出生時の母年齢の変動やらのデータを求めなければならないことに。人口動態統計見ると概数は算出できそうだが、それを昭和年間を通じてやるのは手間。どっかにデータは転がっていないものか。図書館のレファレンスにでも調べを頼むか。

二十八日

大手小町の該当発言が炎上している件。
探したらちゃんとトピ主からの返信も書き込まれているようで。ある意味礼儀正しいですけど、書いてる内容はやっぱりアレで。もっとも、わたしも金勘定はかなりどんぶりなので人のことは言えないかもです。「おおざっぱ黒字ならいいだろ?」みたいな感じなので。
学生時代一人暮らししたんですが、家計簿つけててもだいたい黒字だったので次第につけなくなってしまったという‥。

二十九日

オンコール。本来明日だったのだけれど、明日当直の先生が今日オンコールにはいっていたので、「今日と明日、交換しましょうか?」「あ、助かります」と。
頼まれごとは淡々と引き受けてこなされる先生。こだわりが少ないというか人がいいというか。大人物であるということで話は落着したのだけれど。

三十日

買い物出かけた先で井上直久氏の作品展示をしていたので立ち寄ってみる。値段書いてなかったけれども買えるそうな。
会場で係員の人と話をしたときに「飾ってみたいとしたらどの絵ですか?」と問われたのだけれど、そういえば自宅に飾ろうと思って絵を見たことがない。まぁもっとも私の好きな画家というとマグリットだったりして、あまり自宅に飾るような絵じゃないってのはあると思うのだけれど。

三十一日

午後の腎生検カンファレンスをいつも取り仕切っている先生が今日はお休みで、その仕事は私に降ってきている。何とか無難にこなしたが。


Written by Genesis
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