歳時記(diary):八月の項

一日

当直明け。(先月もこの一文で書き出しているのは何故?)どうも月末当直の頻度が高いような気が漠然とするのだが。
じりじりと暑くなってきて、冷房効いてる病院の中にいたくなるような陽気‥‥。

二日

mixi連動。
現在のところわたしの出勤時の交通手段は自転車と単車が半々なのだが、自転車の時は天気と気分次第でときどき歌が口をついて出る。何が出てくるかはその時々でいろいろ。
わたしは全体に子どもの頃覚えた歌などをよく憶えているらしい。実際に朝口にするのはさだまさしだったりポルノグラフィティだったりいろいろなのだけれど。

三日

外来やってカンファレンスやって。夜間透析担当までやって帰宅。
そいで蒲団に入って一息ついたところで電話が鳴る。急変呼び出しは久しぶりだ‥‥。
かくして今日が終わらないまま、日付は変わるわけで。

四日

病院着いて家族に説明して患者さんの看取りをして。端から病院のミスだろうと言ってくる家族になんらミスはなく病状が悪かったのだと説明をし。
自分の視点は医師の視点だから、もちろん公平ではないのだけれど、それを割り引いても経過中に大きなミスはないと思うんだけれどなぁ。もっとも、もとから家族に病院への不信があったことが一つの要因だとは思うのだけれど。
説明を終えて患者様とお別れをして四時。這うようにして帰って死んだように眠り、そして八時過ぎには子どもを連れてまた出勤‥‥。
この日は結局午後八時前に就寝と相成った。

五日

定時に出勤。え、日曜日ってどこの世界の話ですか?(死)
救急外来と病棟当番。普通に仕事して普通に帰宅。ちなみに今月出勤しなくていい土曜日は一日だけ、出勤しなくていい日曜日は二日だけ。そんなもんさ〜。

六日

広島原爆忌。
某所でギリギリ科学少女ふぉるしぃとか教えてもらって視聴してみる。‥‥なんか、頭がクラクラしてきた。
でもまぁ、このくらいワケのわからんものに触れた方が気分転換にはなるかも。

七日

午後予約外来。
新患の紹介患者を診察する前に、わたしはできるだけ過去のカルテを出庫してもらうことにしている。腎臓内科というややマイナーなところで、普段患者さんは(ついでにいうと医者も)尿の所見なぞ余り気にしていないので、以前の検査所見はどのようなものだったか実際にカルテで確認した方が正確だから。
以前入院歴のある紹介患者さんのカルテを一渡りぱらぱら眺めていたら、緊急時連絡先のところに目が留まる。そこに知人として名前が記載されていたのはわたしが普段外来で見ている患者さん‥‥。
どうも健診で引っ掛かった精査を受けるために、知ってる医者のところを狙ってきたらしい。まぁいいんですけど。悪い気はしませんから。

八日

ここんところ腎臓が悪くない人も受け持ちにぱらぱら。メインプロブレムが腎臓じゃない人もさらにぱらぱら。
もともと専門って奴へのこだわりはそんなに強くなくて、むしろ幅広い守備範囲があるのが希望だから、歩行困難精査やら悪性腫瘍への対応やらをやること自体はそれほど苦にならない。忙しすぎると自分のルーチンワークに組み込みにくい分しんどいけれど。

九日

当直。
何だか久しぶりに落ち着いた夜であったような気がする。

十日

夜、医局ケースカンファレンス。本日のお題は外科担当で上部消化管穿孔症例の保存的加療について。
十二指腸潰瘍や胃潰瘍等で胃腸の壁に穴が開いた症例の治療は緊急手術を行って穴を塞ぐのが一般的であるわけなのだが、抗潰瘍薬を使って保存的に治療することで治すことができる、というお話。重症例や全身状態が悪い人はそこまで粘れないとかなんとか、そういったお話を。
ただし、患者さんはお腹を切らなくてすむ代わり入院はやや長くなり、外科医は手術料が入らないので収入が少ない上に、見ていくのが少々しんどいとか。いいことばかりではないようで。

十一日

先日医局で雑談していて、「食欲魔人」ってネタを振ってみたら、反応したのが研修医(三十台後半♂)‥‥。パクパク美味しそうにいろいろ食べていた二十台♀は反応せず。
もはや川原泉は一般教養ではないのかと悩んだひととき。

十二日

朝から義弟にも来てもらって剪定作業。バラ──今回調べてみると野生種に近いノイバラらしい──とキンモクセイを中心に。
どっちもこの時期はけして剪定に向いている時期ではないのだが、一年以上ほったらかしのキンモクセイに、枯れ枝・弱った枝が目立って、カイガラムシもつき始めたツルバラということで、どっちもかなりの強剪定を強行。もっともキンモクセイにせよバラにせよ、剪定に弱いというわけではないので何とかなるだろうと踏んだということもある。
キンモクセイは樹冠線を決めてザクザクと。バラは枯れ枝・古枝を片っ端から切って元気そうなところだけ残す荒療治。あとで肥料やっとかないとダメかな‥‥(←あとで調べたら剪定前にやっとくほうがましなようす)
キンモクセイの枝のすき間にスズメバチの巣が見付かって、買い置いてあったハチ用殺虫剤を使用。かなりよく効きました。体のすぐ近くを飛び回られたので「わたしは石‥‥」とか念じながら飛び去るのを待つ時間もあったけれど、あまりやりたくないもの。
さて、枯れませんように。(ぉぃ

十三日

日々暑く。こんなときに「やぁ、涼しいねぇ」と涼しい顔をして声を掛けてくる定年間近の副院長先生がわたしはとっても好きなのです。

十四日

当直明けの朝の六時からホルモン負荷試験。時間で採血を繰り返す。もーちょっと寝たかったのだけれど、のんびり寝られるほどの間隔がないので。

十五日

朝から風邪っぽい。咽喉の痛みがあるし、ちょっとだるい。できるだけ早じまいすることにして帰ってきたけれど。

十六日

風邪の症状の首座が咽喉から気管に移ったような。咽喉の痛みは軽減してだるくもなくなったのだけれど、時々咳が出る。そんな話をしたら「明日は肺炎かな」──かなりイヤな想像。
多分咳はpost infectious coughだろうと見込みをつけているのだけれど、そうだとするとなかなか治まらないはず‥‥。

十七日

午前中ちょっと病院に寄ってから、有明まで出る。
昼過ぎに着いてみたらしっかり修羅場になってるし。気分はアフガンかイラクの野戦病院。(爆) 次々に運ばれてくる熱中症・脱水症・気分不快の山を相手にする。 かつての「ジェノサイドコミケ」並との話があちこちで聞かれたけれど、むべなるかな。
おかげでカタログチェックする暇もなく。Studio MaruanほかのPC系が初日だったと知ったのは終わってからでした‥‥。

夜、お子様の夜の散歩につきあう。親が後ろからついてきてるかどうかなんて気にしてないんじゃないかって勢いでてけてけと歩いていくのだが、こいつはいつかハデな迷子事件を起こすだろうと確信。自分が存分に歩いたと思うまできっとどこまででも歩くだろう、そんな気がした。
──いや、べつに「ネプチューン」(新井素子)を気取るわけじゃないんですが。

十八日

コミケット二日目。
打って変わってコミケ的好天。雨も降らず日も射さず。救護室利用者も穏やかなもの。
多少の買い物もしたけれど、まあほんの少しだけ。

十九日

晴天になってまた暑かったけれど、一昨日ほどではなく。

通しての購入リスト。

ヲタMacはS.B.さんより譲っていただく。
新規開拓はトリパン・ブルー。こういう雰囲気は割と好き。

二十日

救急当番をやって、休んでいる間の(小さな)諸問題を片づけているともう夜が来る。そして紹介状と退院サマリを書いていると夜が更けてくる。
しかし、朝出勤するだけで汗びっしょりになるのはどうにかならんかな。

二十一日

聖戦で買い集めた本を少しずつ読了中。しかし、思いっきり右と左を間違えている本を発見‥‥。

二十二日

現在退院予定が立たない患者さんが多く。日常生活動作に難がある患者さんが多いため。
介護保険が実はかなり使えない奴なので、それ故の困難が。長期入院を何とかするべく立ち上げられた介護保険制度、しかし現状では介護しきれなくて施設介護になるケースがかなり多いように思う。施設介護を姨捨山に送るみたいな言い方する向きもあるし、患者本人が家にいたいと望むケースもあるだろうけれど、在宅介護が家族の献身なしでは乗り切れないのならば、家族の献身まで含めてのコストがどっちがかかるのかは考えないといけないのではないかと思ったりする。

二十三日

「寒天こんにゃく林檎」なる飲料を買って来る。たまたまスーパーで見かけたもんで。──これってげるるんジュースですか?とか思いながら。
もーちょっと固いと本気でげるるんジュース名乗れるかな、と思いました。

二十四日

外来終わって医局で昼食食べてたら「負けたね〜」と声を掛けられた。
えーえー、患者さんと押し問答して押し負けましたよ。言い出したら引っ込みつかなくなるとか言われてもねぇと思いつつ。

夜出張の道すがらに「人類は衰退しました」(田中ロミオ/ガガガ文庫)読了。な〜んともいえず緩いのんびり感が良い。何度か電車内で吹いたしね。

二十五日

散髪にいく。ばっさり切ると特に首筋が涼しくなる。
その足で買い物。「しにがみのバラッド5」「乃木坂春香の秘密」など。

二十六日

いちにち、在宅当直。
携帯電話に束縛される一日。数件対応もあり。
しかし、バイクで外出して帰ってきただけでも汗だらだらってのはなんとかならないものか。

二十七日

急なお休みがあって普段より忙しさUp状態。
ぎりぎりの体制だから、休みがあるとさらにきつくなるんだよな。休みがあっても業務が回る体制が組めてるだけ恵まれてるとも一方で思うが。

二十八日

午前透析当番・昼会議・午後外来。
なのに一番病棟診られる日のような気がするのは何故?(炸裂)

二十九日

そろそろ夏も終わり。少し涼しくなってきてやれやれ。
短期実習に来る医学部学生さん達が続いている。勉強半分、就職活動半分というところ。こちらもそういう気持ちで接しているところがある。
オープンにいろいろなところを見学するのはいいことだろうなと思いつつ、採用してもらうための駆け引きなどとは無縁だった自分たちの頃を懐かしく思ったりする。

三十日

合同カンファレンスということでケースワーカーやらケアマネージャーと密談合議。現在手を焼いている患者さんの処遇の相談。退院の方向性をだしていく。

朝の新聞で「妊婦たらい回しで流産」てな見出しを見る。その後もあちこちで「妊婦たらい回し」と書かれているのだが。起きたことを書けば、妊娠二十週前後の妊婦が深夜に腹痛を訴えて救急車を呼んで、その救急車の受け入れ先があちこち連絡をとってもなかなか決まらず、結果的に胎児は死産に至ったということのようで、搬送中にその救急車が事故に遭ったこともあって注目が集まっているらしい。
搬送中にすでに破水していたらしいので、順調に搬送されてもどうだかわからないケースじゃないかと思うのだが。ついでにいうと、妊婦はかかりつけ産科がない状態だったようで、胎児が順調な発育をしていたかどうかもわからないケースなんじゃないかと思う。
んで、このケースで「たらいまわし」って表現はどうなのかしら。「たらい回し」って言われると、やるべきことをやらずに周りに責任転嫁しているというイメージが強いのだけれど、新聞報道読む範囲では各病院は医師法第19条に定められた応召義務を果たせない状況だと判断して受け入れ困難との返事をしたようで、そうだとすればたらい回しと言われるのは謂れのない非難と言うべきじゃないのかと。細かに見ていけば受け入れ不可能でもなかったようなのですが、病院が救急車を断るのはたらい回しであるというような書かれ方をされると暗然とする思い。

三十一日

「宙のまにまに 3」(柏原麻実/アフタヌーンKC)読了。文化祭懐かしいなぁ‥‥(遠い目)。
晴れ舞台があったらまず裏方に回るような行動様式(滅)になったのは高校からだな、確か。


Written by Genesis
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