歳時記(diary):三月の項

一日

帰りがけ、電車の中で城南予備校の宣伝が目に入る。「円周率(π)が3.05以上であることを証明せよ」って問題を自分でも考え始めた。
これが3.0以上であることの証明なら話は楽で、円周率は円の直径に対する円周の長さの比であるから、円に内接する正六角形を描いてその外周が円の半径rの六倍になることを証明して、円周2πr>正六角形の外周6rであるからπ>3、でよいと思う。
でもここでは3.05ということなので、正六角形では足りないだろうと、正十二角形で考え始めた。城南予備校のページには三角関数を使った解法が載っているけれども、結局三平方の定理だけでも解けそう。もっとも、電車の中で細かい計算はできないから、「こんな感じで証明すればいいかな?」と思っていただけだが。

二日

貧血の反対は多血、なのだが、貧血になる人に比べると多血症というのは数が少ない。
採血結果を眺めるとどうも多血症傾向の方がおり。高地トレーニングでもしてれば酸素不足を補うために多血症傾向になったりするのだがそういうわけでもなく、喫煙者でもない。(喫煙で低酸素傾向になりやすいと、多血症傾向の人が時にいます)
ある病気を疑って質問してみた。「夜、いびきはかきますか?」「はい、かくそうです」
これで「ああ、きっと睡眠時無呼吸症候群(SAS)で多血症なんだな」と見当がつき。重ねて質問してみるとSASのセルフチェックにしっかり当てはまる感じ。早速そちら方面の検査を進めることにした。
最近のSASの話題は、聞いていると万病のもと扱いって感じで。「SASを治せば万病が治る」みたいな雰囲気すらある。

三日

透析当番で出勤。ひたすらばたばたしてたような気がする。

四日

日直、ということで出勤。休みがないって?その通りですが何か。

日直終わって帰りかけたところで終末期の患者さんの心拍が弱まってきたと連絡される。看取りをして、家族に連絡して‥‥日直終わる前だった方がよかったなとか愚痴ってもしょうがないんだけど。

五日

遅くまで仕事して帰路についたところで暴風雨。ズボンがびっしょりになる勢い。
その癖家に帰り着く頃にはすっかり止んでいる。何だったんだ一体‥‥。

六日

今日は早引けしてやる、と小さな決意を固めて仕事を進める。
新入院もひとり入って、保険請求業務もあってまぁ普通に仕事量はあったと思うのだけれどなんとか四時には仕事を終えて、一目散に初台へ。OpenSkyに行ってきましたよ。なんとか五時半ちょっと前に滑り込んで、チケット買って展示室へ。
わーいメーヴェだあ、とうきうきしながら、そう大きくもない展示室を巡る。三十分だと少し時間が足りない感じだったけれど、それなりに堪能。フライトシュミュレータも経験できたし。
他には、石のゲームの案内人役のお姉さんが黒のインバネスを着ていたのが個人的にはツボ。(ぉ

七日

「薄紅天女」(荻原規子/徳間書店)を読了。これで勾玉三部作再読完了。
この三作では「ガール・ミーツ・ボーイ」って雰囲気が共通する感じがした。幼なじみが男に変化していく様を目の当たりにしたり、これまでに出会ったことのない「男性」に出会ったり。
そう言えば「西の善き魔女」でもルーンの新しい面を知ってフィリエルが驚くシーンはいくつもあった気が。それ以上にフィリエルにルーンが驚かされているシーンもあった気がしますが。

八日

夜のうちに急変があって、その患者さんの対応で追われる。検査追加して家族面談して。他にも入院受け持ちしてもともとの患者さんの様子を見て退院の準備をして。まぁこんなものとは思いますけれども。

九日

外来やらカンファレンスやらルーチンの仕事を終わった後で発表の準備に取り掛かる。発表会が明日、ってあたりがかなりアレですけど。パワーポイントの功罪ですな、発表の準備をぎりぎりまで延ばしてしまう。

十日

午前中子どもの通う保育園のお別れ会。とはいえ一歳そこそこのウチのお子様には何だかよく分からなかった様子。後半は寝てたしね。

その後は透析室スタッフでの研究発表会。自分の発表もなんとか間に合わせられた。
漠然と思っていたことを改めてまとめ直してみると、不足や課題が見えてきて、取り組むことが鮮明になる感じがする。

十一日

子どもができて、朝寝ができなくなったというのが一つの変化。日付の感覚のない(と思われる)子どもに日曜日とか寝て曜日というものはなく。体内時計に従って時間になればこちらが幾ら惰眠をむさぼりたくても起き出して遊び出す。積み木をひっくり返す音で渋々起きるのが日曜日の朝になりつつある。

午後、OpenSkyを再訪。今度は相方と一緒に。
帰り際、ミュージアムショップで「宇宙へのパスポート3」(笹本祐一)と「世界の終わりの魔法使い」(西島大介/河出書房新社)を買う。初めはOpenSkyのTシャツとかが目当てで見てたんですが、別な物に魅かれてしまった。

十二日

割と普通にルーチン業務を。つまりは入院受け持ちとか救急外来とか病棟患者回診とかなんですが。
関連診療所から入院になった方について、ついでにって調子であれやこれやとやって欲しいことの依頼が舞い込む。そのうちのほとんどすべてが外来でやれるようなことって辺りが如何とも。そりゃあ外来も大変なのは分かるけど。

十三日

行きの電車で「イーシャの舟」(岩本隆雄/ソノラマ文庫)を再読。旧版の設定は強く頭に残っているので、逆に新版の印象が薄く、微角や川崎純の設定について「こんなだったっけ?」といった感じ。買った時に読んだはずなんだけどねぇ。よっぽど旧版の方を読み込んだ所為だろう、きっと。
とはいえ、十分に面白いのですが。

十四日

当直明け。
比較的早めに仕事を終えて、ケーキ買って家路につく。女性にとってのケーキは男性にとってのお酒のようなものであるという珍説を医局で聞いたから‥‥というわけでもないのだが。
女性の方が比較的甘味を好むのは何故でしょうね。

十五日

リハビリの日数制限を一部緩和、というニュースが新聞の一面を飾っていた。
もともとこの日数制限というもの、リハビリで病状が改善する速度が鈍るところで基本的に医療リハビリを打ち切って、介護保険でのリハビリに移行するというもので、医療費抑制政策の一環という性格の強いもの。そのため、リハビリでようやく現状維持しているひとのことや介護リハの受け皿が整っているかどうかなんてことは二の次で実施された。患者さんや医療スタッフから非難ごうごうなので若干の手直しをしたというのがおそらく事実。
リハビリが必要でそれを国として支援していこうという気になっているわけじゃないのは対象疾患を見ると分かる。曰く、心臓疾患と呼吸器疾患によるリハビリに対して制限を緩和するとのこと。一番患者が多いのは脳血管疾患と運動器(つまり手足や脊椎)疾患。そこへのリハビリが置き去りでいいのかと小一時間(以下略)

十六日

最近外来に紹介されてくる患者さんが多い。診察して検査して結果を伝えて‥‥そのまま外来管理を続けるパターンが多いから、じわじわと患者数が増えてくる。まだパンクするには至っていないけれど、パンクするのはそれほど先の話ではないような。ただでさえ診るのが遅いからなぁ。

十七日

今月実は土曜日の休みなしの予定。当直がそれほど多くないからまだしも、朝寝することで体調整えている部分があるわたしにとっては土日休みがないのは実はじわじわ堪えてくる。今は何とかなっているけれど。

十八日

メインマシンにしているiBook G4の調子が昨夜から悪い。マトモに起動しないことが多くなっていて、果ては起動画面すら出ずに気味の悪い色に変色してしまう。
こりゃあマズいなぁ。なんとかご機嫌のいいときを見計らって最低限のファイルを救出した。

十九日

現在の仕事場は月末までの予定なので、医局の先生方と送別会。酒飲むの二ヶ月ぶり以上じゃないか?>俺
最近の電車内読書は秋山完作品の再読。「吹け、南の風」を一通り読み終える。

二十日

PCクラッシュはやはりどうにもならず。ネット見て一時ファイルを削除してみたりシングルユーザーモードで起動してfsckかけたりしてみたのだが、どうにもうまく起動しない。
cmd+Vで起動するverbose modeだと、ipfilteringをかける辺りでとまっているのだが、CD-ROMからのブートも効かないとか謎が多く。修理だな‥‥。

二十一日

一日、古巣の透析当番。
処方出す日ということもあって仕事量が多く。ひいひい言いながら回診。しかし、いつも思うのは電子カルテって(特に記録系については)業務量削減にはつながってないよな‥‥。

二十二日

月末で現在の出向先での業務終了なのだが、この期に及んでひとり受け持ち増える。軽症の肺炎だから、退院まで持っていけそうだけれど。事務の人に「びっくりした」と言われる主治医決定って‥‥。

二十三日

うまくいかない日。
外来終わった後に臨時で救急当番頼まれて、それが終わった後でクイックガレージで修理を依頼しようと思って渋谷まで出かけたら「受付は四時までです」とすげなく断られるし、それじゃあと地元にとって返して購入したビックカメラに頼もうとしたら「こちらでお引き受けするより、アップルに直接依頼する方がお安くなりますよ」と言われるし。
ムダ足ばかり踏んだ気がする‥‥

二十四日

出向先で透析当番。ええ、透析診られる医者っていうとある程度どこでもソレ系の仕事を回されるのです。
管理とスタッフ教育が行き届いているのかほとんど苦労はなく。よいことです。

二十五日

朝から電話をかけてピックアップ&デリバリーを依頼する。基本料金は4万数千円で、基本的にこの枠内で修理してくれるとのこと。あっさり済む修理か複雑なものかを問わない料金体系で、安心といえば安心か。

二十六日

電車の中の読書は「宇宙へのパスポート3」。いいなー一回スミソニアン博物館行きたいなー。
ロケット打ち上げの取材に行ったら「宇宙へのパイロット」抱えた人に会ったとか。確かに打ち上げ見学のバイブルになるのはうなずける。都合が合うものならば自分も観に行きたいのだが、休みを取るのがえらい難しいだろうな。

二十七日

夜は当直。それほど数は多くなくてよかった。

二十八日

当直明け。普通に仕事してカンファレンスして。あとは退院に向けて患者説明とか。
通勤中の読書は「ペリペティアの福音」

二十九日

出向先最後の勤務。──なのに朝から剖検に入る。
その後引き継ぎのために書類やら指示やら書きまくり、退院予定の患者さんの退院時要約を四セット書いて、家路についたのはすでに自宅の最寄り駅への終電が出た後だった。

帰ってすぐに寝倒れたのでチェックできなかったけれど、修理依頼していたiBook G4がすでに返送されてきていた。発送したの二日前だぜ、早っ。
結局ロジックボード交換で修理完了となったようで、懸念していたHDDのファイルはほぼ無事に残っていた。これで4万円余りならばよい買い物、と思う。

三十日

夜、相方を誘って夜桜見物へ。風が強いので車の中から眺めるだけ。それでもしばしのんびり。

三十一日

どうにもやりくりがつかないということで午前中の外来を少しだけ手伝う。土曜日ということでパート医もなかなか確保できず苦労しているらしい。
その後午後の飛行機で岡山へ。義父母に孫の顔見せ。


Written by Genesis
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