歳時記(diary):九月の項

一日

当直明け。そのまま予約でびっしりの外来に突撃する。先週休みにしたしなぁ‥‥。
ひとり緊急入院、ひとり入院予約、そしてひとり予定外の受診。はぁ、疲れた。

二日

世間では自民党総裁選の話題がかしましく。有力候補の発言とか取りざたされているのだけれど。
コイツらのだれ一人として「国民に尽くす」的な発言をしないのはもはやしょーがないことなのでしょうかね。国民をこのように教化していきますみたいな発言はいくらでもでてくるのですが。「復活の地」読み直したあとだからか、サイテン首相とダブって見えます。
ついでに、「こんな時代にダレがした」って問いに政権与党を長年張ってきた党の幹部が頬被りってのもね。

「地道に真面目に仕事してればそこそこに報われる社会を作ります」って公約をだす候補者は出てこないものか‥‥出てこないだろうなぁ。
株や起業でひとやま、って誰も彼もが考えてる社会より、地道な勤労で社会に奉仕することが報われる社会の方がわたしは好きなんですが。

三日

S.B.さんの日記に反応。
契約できなかったって男性医師、50代と記事に書いてありますけど、本気で休みなしで働いてたと思うんです、きっと。産科の常勤医ひとりで、お産がありそうなら何時でも病院にいて分娩の対応をし、その上で普段の外来や病棟の日常業務をこなし。それに疲れて、せめて月一回完全なオフが欲しいって要求しても、反応が冷たいってんじゃ、そら辞めていきますがな。
地方の医師不足の要因には、「仕事しつづけることの辛さ」への無理解があるように思うことがあります。「高い金を出しているんだから働いてくれなきゃ」と思うのはそりゃ勝手ですが、どれだけ大金積まれても、二十四時間オンコールの仕事を続けてくれる人はそんなにたくさん現われないでしょう。
続けられる程度の負荷に仕事量を抑える、ってコントロールを医師自身がやれば、その医師は多分つぶれずに仕事できると思いますけれど、周りが非難を浴びせてくるでしょうし。病院管理として医師をつぶさないように仕事量をコントロールし、必要なら医師を増やさないといけないわけで。根本的には医師の絶対数の不足がもちろんあるのですが、病院管理の問題も結構ありそうに思えます。

四日

早速反応くださったようで。
労基署の役人さん達はきっと知ってます。ウチにも以前近所の労基署で働いてる透析患者さんいましたから(滅)。透析回診の時「当直明けで疲れてて〜」とか言おうものなら「こいつを早く帰らせなさい、患者はほっといてもいいから」なんて冗談かどうかわからないこと言う人でしたが。
真面目に労働基準法を遵守した勤務体制を組もうとすると夜の救急を閉めないといけなくなったり、当直医の確保ができなくなって閉めざるを得ない病院が大量発生したりという大混乱が日本全国で起きること必定なもので、治安維持のためにあんまり病院には手入れをしないでいるのではないかと思っているのですが。
そんなわけで日本全国の病院では今日も、幾多の医療従事者がデスマーチを心に響かせながら仕事をしているわけですな。

五日

夕方歯医者に行く。もっと歯磨きをきちんとしろと言われる。
しっかり歯肉炎のようで、歯磨くとちょっと痛みが出てくるので、とりあえず痛みが取れてくるまできちんとやらんとなぁ。

六日

透析当番しながら一人患者さんを看取り。
最近調子上向かない患者さんが多い‥‥。

七日

当直。最近ようやくベッドが空きつつあるので少し気が楽。
当直前に研修医に「学会発表の作り方」なんてレクチャーを。具体的なところはともかく、大きな流れとお作法を。

八日

ふとmixiの足跡を眺めてみると、つながりの読めない訪問者がいくつか。
不思議な関係、ではある。

九日

草刈りに庭木の手入れ(というか間引き)して、散髪して。
夜はそろそろどこにでもごろごろ転がっていきそうな子どものためのベビーフェンスの検討。自分ところの階段上に設置できそうなものがあまり見当たらず、自作方向。‥‥日曜大工あんまりしてないんだけど。

十日

なかなか寝つかない子どもに付き合って二時まで起きている。いつもと昼寝のリズムが違ったからかなぁ。

朝遅く起きて、買い物へ。ベビーフェンスを自作というプランになったためDIYの材料買えるような大きなホームセンターへ。
昨日のうちに設計はしておいたので、あとは目的とするサイズの材木と部品を買い集めるだけだったのだが‥‥ひと言いえば注文通りのサイズの材が出てくるわけでもなく、店頭の材木をどうカットしてもらえば目的のサイズになるかを考えて四苦八苦。サイズを売っている材に合わせて変更してみたりいろいろ頭の中でいじり回していたのでえらく時間がかかった。
結局SPF材と桧とホワイトパイン、てな感じでサイズ優先で購入。SPF材安いんだけどサイズバリエーションがあまりない。インチとフィートでサイズが書いてあって計算しないとわからなかったのもマイナスポイント。帰ってきて組み始めたらちょっと反りがあって気になった。
作ろうと思っているのはこんなの。こちらほど巧く作れるとは思えないけれど。

十一日

週末に入院した肺炎を受け持ち。わーい、腎臓機能がいい患者さんはやりやすいなぁ(爆死)。
腎機能が悪い=薬の投与量が変わってくる ってことなので、普段「腎不全量」の薬を使い慣れている分却って新鮮。なんかいろいろダメな感じがするのはきっと気のせいだろう。

十二日

当直帯で多臓器不全の重症患者さんが入院。すったもんだのあげく、電解質異常が強いということで腎臓内科担当ということになる。──なんでやねん。
いろいろ調べ上げた結果、メインは消化管疾患だろうという診断になったのだが、治療としては結局透析が最善だろうという結論になり主治医も交代にはならず。まぁ当院でいちばんあっちこっちに手を出してる科だから(ヤケクソ)。

十三日

当直の間ずっと透析が回りつづけていた夜。

自分の患者は比較的落ち着いていたけれども他の重症患者も含めてかけ回る。夜の九時から腎臓内科カンファレンスが自然発生的に始まっているし。
でも、こういう体育会的ノリで仕事ができるのはけして嫌いではない。

十四日

夜の八時からCPA発生。院内に残っていた医者が多数駆けつけてくると──救急室内は身動き取れなくなるのね。
待っている家族の方も物々しい雰囲気が辛かったんじゃないかと思うのだけれど。

十五日

鴛鴦夫婦、という表現がある。総回診しながら「○○さん夫婦は鴛鴦夫婦だから‥‥」なんて話が少し出る。
本当のオシドリは病気になった連れ合いをどうするんだろう、とふと思ったりした。
片鴛鴦、ってのも寂しそうだけれど。

十六日

十日のつづきでベビーフェンスの工事(違)。
一応スライド式の扉ができ上がる。微妙に建付けが悪かったりサイズのずれがあったりその場の思いつき仕様変更があったりするのはお約束ということで。
木ねじは一応買ってあったのだけれど、サイズがあわないということで再度買い出しに。他にも釘を打ってみたら長すぎて突き抜けてしまってあわてて抜釘して打ち直したりとか。この辺も考えて買わないとね。

十七日

昼にちょっと気になっていたステーキ屋に行ってみる。建物の外見があやしさ大爆発だったのでおそるおそる入ってみたら、中は割と普通でお料理も美味しくて。外壁塗り直したらもうちょっと雰囲気が良くなるんじゃないだろうか。余計なお世話だが。

十八日

当直明けて、仕事してから帰ってくる。
ベビーフェンス工事を終了。できあがりはこんなの。総工費はいくら位かな、木材が一番かかったけれど、それでも数千円で済んでいると思う。たぶん、工賃を抜きにすれば買うよりは安かったと思われ。

十九日

子どもの歯が見え始め。その顔で笑うと気分は抜作先生(C)ついでにとんちんかん。
髪の毛は一向に生えてこないし。

二十日

受け持ち患者が順調に増殖中。本日は大台二桁に突入。
まぁ、二桁の病棟患者を常時受け持ってる勤務医なんて珍しくもないですが。それでも、毎日午前中は外来やら透析やらで病棟行く暇なくて、お昼過ぎからようやく病棟行って診察したりしているともう夕方で、って生活はそれなりにしんどく。ヘタすると全部の患者さんに会うだけで精一杯だものなぁ。

二十一日

𠮷野家」と「吉野家」はどう違うのだろうと悩んでみたりする今日この頃。
そういえば、「『子供達』って表記は『供』と『達』が共に複数の意味を示すからあまりよくない」なんて話を医局でしていた気が。日本語って難しいのね。

二十二日

昨日の記述をInternetExplorer(on Windows)で閲覧してみると、「・野家と吉野家」と表記されている。やっぱりなぁ、Safari(on MacOS)で見たとき「𠮷」と「吉」と、微妙にフォントが違ったものなぁ。(苦笑) デフォルトフォントがOsakaのせいだが。
というわけで、昨日の日記の記述が意味不明だった方はごめんなさい。わたしのせいじゃなくてブラウザのせいですが。

二十三日

休日出勤。透析当番にてひたすら回診。患者さんと話してる時間より指示を入力している時間の方が長い罠。(爆)
比較的落ち着いていたのでスムーズには進んだのだが、回診して指示出して調子悪い人への対応をして‥‥で正午まわる。「もう帰っていいですか」とか言いたくなる気分にはなります。
‥‥
そんなときふっと「世界征服たらラクになれるかなぁ」とか思うことがないわけじゃないですかね。

夜、「OZ」(樹なつみ/白泉社)を全巻一気読みする。いや、相方が「獣王星」を読み始めてたもんで。
主人公が痛い話はついつい読んでしまう。なぜだろう。

二十四日

ここ数日天気が良かったということで、懸案になっていた窓枠など木部のペンキ塗。防腐作用もあるキシラデコールを塗ることにしていたのだが、結局窓一つと玄関ドアと二階のベランダまわりまで。残りは後日ということにしたが、天気次第ゆえにいつになるか。

そろそろお子様が見つけたものを口に持っていくお年ごろになり。PCのケーブルなど長くのたくるものはどうもお好みのようで。
コードやらおもちゃやら、気に入ったものを見つけるとさながらキース・バーニング(C)トリガーマンby火浦功 のごとく匍匐前進で全力疾走するため、こたつトップ状態だったパソコン類を別室へ。少し整理された、かな?

二十五日

日々、糖尿病の足壊疽の処置を続けている。
冗談抜きで骨が溶けてたりするので侮れないし、感染が全身に波及したりするし。治すのは地道にやるしないしね。

二十六日

医局でふとカメラ談義をする。子どもの写真撮るためにデジカメの列ができる時代ですよね〜なんて話してたら。
カメラに割と凝っていたという年配の先生「これから子どもの写真撮るなら、やっぱり8ミリの動画で残してやるのがイイんじゃないかって思うんだが」
‥‥8ミリですか。
運動会のデジタルビデオの列に一人並ぶ8ミリカメラ。撮れたフィルムを大事に抱えて現像に持っていくお父さん。しばらくたってから家族で映写会。
イイ、かも、しれない。

二十七日

夜、病棟の宴会。
酒飲んでカラオケ行って。久しぶり、かな。

二十八日

二日続けて飲み会。非常に珍しい。もっとも、今日は飲む予定はなかったためバイクで出勤していたから、ソフトドリンクを飲んでいたのだけれど。
大ボスが研修医のマニュアル頼り気質を嘆いていた。マニュアルから外れた事態を理解するには、基礎からのしっかりした理解が不可欠なのだと一席。いや、基礎からの積み上げはわたしもないから黙って拝聴するしかないんですが。
勉強せんとなぁ‥‥。

二十九日

最近「死ぬ死ぬ詐欺」なる言葉がネットの一部で流布しているらしい。「病気の○○ちゃんを臓器移植で助けるための募金にご協力を」ってものの中に、「もらった金はどう使おうと勝手だろ」的な振る舞いをするグループがあることが話題になっている。
日本では脳死臓器移植への拒否感が強いことなどから、とれる手段として海外での移植を選択する人が一定数いることが問題の基礎にあるのだけれど。まぁ問題は道義的なところなので、「詐欺」という刑法犯として立件できるかどうかは難しいところかと。「手術が必要」とWebに書いておいて実は手術は必要ではなかった、など、事実でないことを元に募金を集めれば、詐欺罪で立件されても不思議はなさそう。ただ、結果的に事実と違ってしまったなどの場合は詐欺にはならない(誤診であったなど)らしい。
ただまあ「他人の褌で相撲を取る」ような、自分の問題を他人のお金だけで処理しようというような態度はどんなものかと。そりゃあもちろんそれなりにお金はかかるのですが、それでも治療を受けようと決めたのならばまず自分たちが身を削らなきゃあ周りを説得できませんが。それに、たとえアメリカで手術を受けたにせよ、その後の経過観察などのためには医療保険が使えるはずですし。(自信がないですが)

ところで、脳死臓器移植で家族を助けてもらった人々は、果たして日本におけるドナーカードはお持ちなのでしょうかね。もちろん移植OKと書いて。他人の命なら脳死でオーケー、自分の命は心臓死で、ってのじゃ通らないだろうし。

三十日

キックマニュアル。CB400SSもキック式なので、改めてお勉強。
そーいえば、8L位は燃料タンクに入るはずなんだが、時によって5-6Lでエンジンの掛かりが悪くなるんだよなぁ‥‥。あれはなんでだろう。

「遠野」は実は「とおのへ(拾戸)」なのだそうです>おどりこさん


Written by Genesis
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