歳時記(diary):四月の項

一日

新年度ということで、新卒の医師が姿を見せている。土曜なもんで少し人数寂しい医局でご挨拶。

夜、フジヤカメラPlanar T* 1.4/50 を買う。今買っとかないと交換レンズ買わなそうな気がしたもんで。
手持ちのNIKONFE10に装備する予定。スピードライトつけて撮るのはやっぱり重いので、スナップを撮るなら明るいレンズ装備してスピードライトなしで撮れるようにしておきたくて。最初は子ども撮るくらいかな?

二日

まりさんとたつやくん来訪。そーいやバイオリンは見せませんでしたが、こないだ修理したばっかりで眠ってます。(死)
たつやくんの相手しつつ茶飲み話。「わたしのメモリの知識はSIMMで止まってます」とか「パソコン通信は使いやすかった」とか、思い出話を。──まだ二人とも三十前後ですが何か。

その後本屋へ行ったら「グリーン・レクイエム」(春名里日/原作新井素子/KCDessert)を見つけたので即確保。2003年発行だったけど‥‥。

「西の善き魔女」アニメ。ウチだと東京MXテレビが映るようだが‥‥みられるかな?

三日

パソコン通信の話を、少し。

わたしがパソコン通信というものを知ったのはたぶんテレビドラマから、だと思う。時期は多分中学生頃。沖縄辺りの南の島でキャンプ中のグループが食中毒を起こして、助けをよぶのに(電話機が壊れていたために)パソコン通信を使って‥‥うんぬんというストーリーだけはぼんやり憶えている。
そこから時間が飛んで、大学入って自分のパソコンを買ったのが二年生の時。すぐにモデムを買って(14,400bps"高速"モデムだったな‥‥)オンラインサインアップでNifty-Serveを使い始めた。
それとほぼ同時期から大学の先輩に教わって大学のUNIXでInternetの電子メールを使い始め、さだまさしML新井素子MLに加入し、そこでSFフォーラムを教えてもらって飛び込み‥‥そんな感じ。
テキストで交わされる情報量の多さと会話の面白さ。加入には手続きが必要であり、またシスオペなどによる管理が入っている分絡み客お断りの酒場のような居心地のよさがあったと思う。
ぽんぽんと飛び交う幾多の会話が混乱せずまとまりがあるのは発言記録を関連づけるコメントリンク機能とそれを利用したログブラウザによる整理機能の賜物だったと思う。半年一つの話題が続いたとしてもたやすく会話の流れを追いかけ直せるブログ・掲示板というのはこれだけWWWが進化しているにもかかわらず実現していないと思う。
おそらくは自らも一ユーザーであっただろうソフトウェア作者さんたちが送り出してくれた優れたパソコン通信ツールのおかげで、わたしたちは楽しいひとときを過ごせた。

いまSNS-Social Networking Site-が注目されているというけれど、使い勝手はともかく、場のかたちは昔のパソコン通信に似ている気がする。ある程度管理の入った、コントロールの入ったコミュニケーション空間。ブログが市場の雑踏なら、SNSは碁会所の休憩室、そんな感じが、する。
今日届いた封書にはとあるサイトで実名登録の下でのディスカッションのお誘いが入っていたのだけれど。これもどんなものになるのやら。

四日

泊まり。
引き継ぎ時間に行ってみると、救急担当の先生が処置中。他院で管理中のがんの方だが苦しくなってきたので近くの病院に、ということで当院来院した由。
まったくの初診でいきなりそんなヘヴィなひとが来られてもねぇ‥‥とは思いつつ。本人がしっかりしていたので当座の処置をしてかかりつけの外来管理へ戻すことにして。
慢性疾患患者にとっては遠い有名病院より近くのかかりやすい病院、と思うけれども。現実にはなかなか。

五日

未明、病棟急変。まだ起きててサマリ書きなどしていたところで呼ばれて各種対応を。研修医指揮して直流通電したりして。
他ではそれほど忙しくなかったのが救いかな。

六日

新オーダーシステムの扱いには大分慣れてきたところだけれど、月が変わったところで新たな難問が。
保険請求は病院の収入を確保する上で重要なものなのだけれど、オーダリングとか電子カルテではオーダーと医事会計システムが直結するように設計する。さらに保険請求上必要な保険病名も、電子カルテとなれば入力しなければならない。
この病名入力とレセプトチェックが大波のように押し寄せてきている今日この頃。ええい、保険の勉強なんてロクにしたことないぞ(自滅)。各種指導料だの加算だの管理料だの、ある意味元手なしで受け取れるお金なので請求したもの勝ち、なのだけれど、請求するには制度を知らないといけないのがしんどいところ。

七日

外来。
ただでさえ多かったのに、終わったところで「病名設定してくださ〜い」とカルテが積まれるし。外来ブース出たのは二時回ってました。

八日

岡山に飛ぶ。道すがらで「リリアとトレイズ III」「パラケルススの娘 2」「侵略する少女と嘘の庭」を読む。
一月たった子どもと会ってみると、しっかり生長しているのが当たり前というか驚きというか。よく泣くのだけれど、オムツ換えたりミルク飲ませたりするとぴたりと泣きやむのに感心した。まぁもちろん泣き止まないときもあるのだけれど。

九日

いちにち、子育て。‥‥いやまぁずっと子育ては続くのだけれど、ちょっと散歩したくらいでずっと家にいた。
ミルク飲ませておむつ換えて、寝てる間にできることって実はかなり限られていて。ひとりで乳児を育てるのはとても難しいことだなと思った。
まぁ写真はきっちり何枚かとりましたけど。f=1.4はさすがにダテじゃないですね、フラッシュなしでも曇りの日の室内でそれなりの写真が撮れます。いじってみて、絞り値を細かく変えられるらしいのに気づいて大枚払った意味があったと感動したりした。

夜、部屋に積んであった「のだめカンタービレ」1〜5巻を読了する。なんか、千秋がのだめを育てているような錯覚に陥ったり(違)。

十日

朝の便で東京に帰ってきて、その足で仕事へ行く。

海難審判庁って裁判所の一種と思ってました>S.B.さん
航空機事故でもこういった組織があっていいと思うのですが、どうでしょうね。「まず真実を解明する」って姿勢は重要だと思います。民事裁判はある意味原告の訴えを認めるかどうか、刑事裁判は被告を罪に問うかどうかが焦点になってしまうと思うので、真実の究明を期待するにはちょっと違う気がする。
故意でなく過失であるならば、過失を生んだ土壌まで含めて解明の対象にする組織が必要だと思うので医療事故審判庁設立求む。

十一日

朝方出勤途上で電話が鳴る。──ICUへの召喚命令。多臓器不全ですか、そいつぁ出番ですなぁ・・。
結局翌朝までのCHDFを始める。肝・腎・心・肺に問題がって、ほとんど全身だし。

十二日

まぁS.B. さんの常識だったらついてかなくても生きてけるや、とか。(爆)

夕方、看護師さんの申し送りが終わって残務整理に入ってきた頃の病棟にて。
「エヴァンゲリオンのあの終わり方意味わかんないんですけどぉ」って普通に話しかけてきたアナタ。アニメから劇場版までひと通り録画しちゃったということで立派なシンクロ率かと思いますが‥‥なんでわたしに聞く?
しょーがないんでいちおう常識的なセンでお答えしときましたが。

十三日

夕方、入院したばかりの患者さんが頻脈傾向。夜になってさらにひどくなると当直医が呼ばれるよなぁ・・などと思いつつひとつ薬処方。
二時間くらいたってもう一度病棟行ったらきっちり治まっている。──このくらいクリ アカットに治療効果がでると決まっていれば楽なのになぁと思ったり。

十四日

まりさんとこからたどって、オーラソーマリーディング。わりと面白かったけど、選んだボトルが自分の好みと言い切れるかどうかはちょっと悩む感じが。

◆ 一本目 魂のボトル(あなたの本質を示します)
精神のしなやかさを持つ、自由な気風の持ち主です。ハートが柔軟で、ドルフィンのように人生を遊び心を持ってクリエイトしていくことのできる創造的な人。日々の生活を自分のために使い、楽しむ術を知っています。未経験のことでも、素直に受け入れる度量があり、またそれを楽しむ余裕があります。博愛的で、みんなの幸せを望む平和主義者。言葉を超えた形で知識を伝道する役割(ダンス、マッサージ、音楽など)で主に才能を発揮するでしょう。
◆ 二本目 チャレンジ&ギフトのボトル(あなたの過去と乗り越えるべき課題を示します)
愛しても、愛を返してくれない人と何度も恋に落ちてしまいます。(たとえば、相手が既婚者であったり)相手がフリーの立場にあったとしても、片思いに終わりやすいでしょう。報われない愛の経験を多く経験します。身近な人や家族との関係においても、約束を破られたり、深い失望を経験しがち。たくさんのつらい出来事から、人を信じられなくなっているかもしれません。「誰も愛してくれない」というつらい感情を抱えています。
◆ 三本目 「今ここ」のボトル(現在の状態と気づきを示します)
孤独や不安を手放すときです。今、あなたは直感がとても鋭くなっています。瞑想を行ったり、海や水と戯れたりするセラピーによって、"超感覚"が研ぎ澄まされるでしょう。また、夢の解釈にもヒントがあるようです。それらのプロセスを通し、自己発見が訪れます。自分が人生を精一杯楽しむために生まれてきたことを頭ではなく感覚で理解するでしょう。父親、もしくは権力の象徴としての男性的なエネルギーを調和させる術を会得します。
◆ 四本目 未来のボトル現在の状態からどう変わっていくか、未来の可能性を示します)
明晰性を持った強い精神性の持ち主です。鏡に映し出されるように、物事をあるがままに見ることができます。自分自身のどの側面も否定することなく、すべてを受け入れる力強さが携わっています。たとえ、日頃は冷静だとしても、いざというときには強いパワーを発揮することができるでしょう。社会の矛盾やひずみから目を逸らすことなく、現実を見つめます。そして、強い責任感と実行力で、目的達成を成し遂げていくでしょう。

十五日

本日より透析導入、の患者さんの調子が悪く。原因考えながらいろいろと。

夜は当直。夜更けにきた急性アルコール中毒の方、醒めかけのところで見事な大トラになってくれ。付き添いの上司やらわたしらやらに、からんでくるという。‥‥あとで会社で立場悪くなってなきゃいいけど。

十六日

当直終わって、買い物したりなんだりとふらふらしているうちに終わってしまった‥‥。

「エクソフォニー-母語の外へ出る旅-」(多和田葉子/岩波書店)を読んでいる。ドイツ語と日本語、二つの言語の間で創作を続けている作者らしい視点が随所にあって、刺激になる。
わたし自身は日本語しかできないし、英語は医学文献が読める程度、ドイツ語は見たり聞いたりしたものがドイツ語であるとわかる程度にしかできないのだけれど。それでも外国語を覚えられたらいいなという思いに駆られる。言葉を学ぶことは、新しい世界を拓くことになるのだろうと思う。

十七日

夜、都内で会議があって出かける。行き帰りで「しにがみのバラッド2」など、読む。

十八日

某掲示板を読みながら。
議論用ボードなのだが今一つ意見交流の域を出ない。だされた書き込みへの見解をを周りにわかる形で文章にし、相手の論旨とかみ合わせて語り、必要に応じて適切な参考資料をひっぱってくるってのは、それ相応の慣れが必要なのだと思うのだけれど、そのあたりが弱いのかな、と。
あとまぁ、書きっぱなしになると議論にならないから、有力な反論が出てきたときに「おっしゃる通り」と相手の論を肯定することでまとめとすることも時に必要なのかしら、と思う。

十九日

夜、さてサマリでも書こうかというところで外来透析患者さんが発熱したとの由。結局入院にしたのだが‥‥ベッド探しで苦労した‥‥。

二十日

昨日十一時今日当直。──わりと普通にありますが何か。

夜半さて寝ようかというときにちょっとテレビつけたら「夢使い」やっていて。
わたしとしてはディスコミュニケーションの方が読んでて面白くはあったのですが、特に冥界篇とかいくら深夜枠でも見るひとは限定されるだろうなぁ‥‥。学園篇はこれはこれでいろいろアレだし。

二十一日

当直明けで外来。
前半ハイペースで後半時間がかかるのはまぁいつものペースになりつつあり。それでも今日は特に遅かったかなぁ。

二十二日

若手医師で新卒の歓迎合宿in河口湖。昼過ぎに集まって車で出る。
道中陶芸体験してみたり。家には花瓶がないということで作ってみはしたが‥‥どうなるやら。焼き上がるのは二カ月後とのことだが。
そのあと買い出しやらお風呂やら済ませて宴会に。記憶を飛ばしたひとが数名。(苦笑) だいじょうぶか?
気がつくと冥土喫茶に行ってみたいとかFFXIの攻略がどうだとかそんな話も混じっていた。

二十三日

起き出して朝食。出発したあと温泉入って昼食。‥‥まだお腹すいてない‥‥。それでもほうとうを詰め込んだけど。
帰ってきたらまずは寝てしまった。

二十四日

朝来ていちおう日当直表を眺めるのが習慣なのだけれど‥‥今日の当直は自分と書いてあったりする。書き換えられてないよなぁこれ?(もちろん自分の記憶のほうが書き換わっているので(爆))
そんなこんなで当直。患者さんの数は少なかったけれども、がっちり重症が入院してけっこうヘヴィな目に。挿管してレスピつけて補液してなんだかんだと。

二十五日

朝方から昨夜の患者さんは緊急手術に。緊急オペのあとは‥‥血液浄化部門の仕事があったりする。PMX-DHPやるとすこし持ち上がってきた感じでやれやれ。

本日精査入院の方は問題点が多く。研修医の先生とあれこれ打ち合わせして帰る。少し負荷が強めかもしれないけれどもその中で伸びてくれそうな雰囲気があるのが頼もしい。がんばろーね。

二十六日

当院の新オーダーシステムは、ひとりの患者さんについて複数人が同時に記録できないようなかたちになっている。ひとりが開くとデータベースの読み書きがロックされるためで、他のひとからはリードオンリーで参照しかできない。
某部門でどうも患者さんの画面を開きっぱなし。業務が滞るので連絡して閉めてもらおうとすると「よくわからないんですけど、見たところ開いてなさそうで‥‥。そっちで何とかしてもらえません?
ぷちっ。「そっちのトラブルはそっちで処理しなさい」と怒鳴っちゃいました。何でも他人任せにするならいなくても同じだっての、まったく。
マシントラブルでロックだけかかっちゃうことは確かにあるらしいんだけど、その場合でもシステム部門のひとに頼めばいいことになっているわけで。そのことを知らなかったとしても、病棟に頼むのはお門違いもいいところってことを考えなかったのだろうかと朝からがっくり。

二十七日

血液検査の変化と本人の体調との変化が同期しない、ということはしばしば見かける。感染症などの場合よくなるのはむしろ本人の体調が先のことがある。症状が取れてくれば、次は検査もよくなるだろうと踏んだりするわけだ。
今ひとり体調が戻ってこないが血液検査は改善気味、というひとがおり。なんかまだ問題がくすぶっていそうですっきりしない。

二十八日

夜は研修医の先生がケースカンファレンスで発表。無難にこなしていて指導医としてもほっと一息。

二十九日

戸塚ヨットスクール事件の中心となった戸塚宏受刑者が刑期を終えて出所になったそうな。今後はふたたびスクールの指導に戻るとのこと。
「体罰は教育」てのが持論なんだそうだが‥‥突き詰めれば「言っても聞かない奴はぶん殴る」教育、ってことにしか思えず。
そんなニュースを見ながらふと考えてみた。

某海辺の病院。「どんな糖尿病患者さんもベストコントロールに!」の宣伝がなされ、治療に乗らなかった糖尿病患者が多数更生しているという。
教育入院コースは一ヶ月。内容は食事療法の再教育と運動療法の指導、と説明されている。
入院するとマリンスポーツを中心に激しい運動と、1440kcalの食事が処方される。指示に従わなければ愛の笞が飛び、かくれ食いでもしようものなら鉄拳制裁が飛ぶ。耐え切れずに逃げ出しても連れ戻される。

病院でこれやったら誰も相手にしないと思うんだけど、未成年相手だとこれやっていいって思う人がいるのは、なんででしょうね。

三十日

昼近くまで寝る。これだけ怠惰に寝つづけると‥‥夕方にはもう眠くなってきてしまう(爆死)。マズいよな。
妹夫婦が来て庭掃除。玄関先にかなり草がはびこっていたのを整理する。必ずしも雑草とは言いにくいものもあるのだけれど、ほっとくと歩くところもなくなるくらい増えそうだったので。ツタなんかも少し剪定を入れる。それからバラの木に農薬をかけて、アブラムシ退治。
もとが草花の手入れなんて全然知らないものだから、ちょっとずつ教わるしかない状態。自分ちの庭だから、少しは憶えないと。

バイクの後輪がパンク。どうもネジを差し込まれたみたいで。やれやれと思いつつ修理をお願いした。


Written by Genesis
感想等は、掲示板かsoh@tama.or.jpまで。リンクはご自由に。

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