歳時記(diary):一月の項

一日

新年。"年の始めはさだまさし"をちらっとみてから就寝。
ビデオにとっておいてあとでゆっくり見たけれど‥‥ミョーなチープさがなんともいえず深夜放送チックで。NHKらしくない感じが。

起床してから実家へ新年のご挨拶に。毎年恒例。おせち食べてお屠蘇飲んで。

夜は「プラネテス」鑑賞。おお、みごとな寝正月だ。

二日

夜半から発熱。朝病院で検査したらきっちりインフルエンザだった。‥‥どこで拾ってきたかなぁ。
仕事予定だったが帰宅。タミフル飲んでひたすら寝ていた。夜には少し体調が戻ってきたので「里見八犬伝」とか観てたけれど。

三日

大分体調が戻ってきている。それでも一応午前中は自重して「箱根駅伝」と「たそがれ清兵衛」。
「たそがれ清兵衛」は落ち着いて観られた映画。幕末を背景にした、佳い時代劇映画、そんな気がした。

四日

そろそろやらんとなぁ‥‥と、ホクトの書棚に本を詰めてみる。
三列収納書庫は小幅の棚が一列、やや大きめの棚が二列の構成。小幅の棚は中仕切りを入れるとちょうど文庫本を二冊並べられる幅をもつ。ということで基本的には中仕切りを入れて両側から文庫本を詰め込むようにしていく。一段には「ARIEL」(笹本祐一/ソノラマ文庫)全巻と「裏山の宇宙船」(笹本祐一/ソノラマ文庫)上下巻がぴったりおさまった。高さも一番下の段を除けば文庫本の高さに区切れるように作られている。収納力としては三列書棚一本で千冊は超えそう。Webに載せられている使用例通り、ということになる。
ただ、初めに添付されている棚だけでは隅から隅まで文庫本を詰めるには足りない。二枚くらい?追加すると多分ギッチリ文庫本が詰め込めると思われる。あと、大きめの棚二列は文庫本を詰めるだけではややすき間ができるので、新書もしくはB6版を詰めるとぴったりなのかもしれない。
かなり詰めても棚の引き出し・引き戻しはそれほど重くない。ただ、僅かなものとは思うが本を詰めることで棚のゆがみが出るようで、敷板の収納がひっかかるようになった。今後に向けてやや心配は残る。
わたしの全体的な感想としては、気になるのは耐久性だけ、というところ。五年十年経ってもいまの使い勝手が維持できるなら上出来、と思う。あとはギッチリ本を詰めてみるとちょっと変わってくるかもしれない。
ちなみに使用例はこちら

五日

仕事始め。スタッフはおろか患者さんにまでインフルエンザで寝込んだことが知れている罠。
夕方、透析患者で心室頻拍発作をおこした人を受け持つ。──今日は早めに帰れるかと思ったのにぃ。

六日

午前中外来。数は多かったものの比較的落ち着いており。
午後はICUのベッド調整して総回診してとかやっていると夕方。自分の仕事が全然進んでいない罠。
ごそごそとおそくまで仕事して、そろそろ帰ろうかといっているところで急変ありとの報。緊急透析だよ‥‥(涙)

七日

出勤の土曜日。ひぃひぃ言いながらあれこれ、やる。中心静脈カテ挿入も二件。
夜からは当直。101歳の患者さんの救急車依頼を受ける。結構遠くからの依頼で、あちこち断られた様子。救急隊曰く「年齢聞いただけで断られちゃって‥‥」
今病院は経営が大変なところが多く、いかに問題の少ない患者さんをたくさん管理するかで経営効率を上げているところが多い。予約入院させて入院時から退院の予定を立てていくような感じ。空床があるようだと経営にひびく。一方で救急患者は問題の宝庫で、調べるほどに問題点が増えるような患者さんもいるし、高齢者は短期間の入院でも廃用が進んでもとの生活に戻れなくなる例も多い。
故に高齢の救急患者は受け入れ先がないことがしばしばなのだけれど‥‥病院が診療する患者を選別している状況は、危険なものではないだろうか。

八日

当直室で朝目が覚めると十時。寝たのは五時過ぎだったけど。当直終わってるじゃん‥‥。

書店で三千円くらい本を買い込む。ライトノベルないのは珍しいかも。
マンガは「委員長お手をどうぞ」(山名沢湖/Action Comics)。わたしもむかぁし委員長してたなぁとか遠い追憶に浸ってみたり。ちなみに警備実行委員長という、ある意味風紀委員よりコワそうな肩書きをつけていた。公安と違うけど。

九日

透析当番ということで出勤する。当直明けの先生が起きてきていないようなので電話してみる(鬼)。
自分の病棟受持患者が少ないこともあって比較的のんびりと。まぁICUには緊急入院がいたりしたのだけれど。

「ふたつのスピカ 9」(柳沼行)読了。このお話はどこへ行くのかな‥‥。

十日

学会発表の抄録の原稿直しをボスとともに。「なかなかいいレビューがないねぇ、ここはひとつ、自分でレビューを書くつもりで」とか景気はいいけどやるのは大変なことをボスがのたもうておられるのがちょっと心配。

仕事してへろって帰ってきて、それから新規購入の棚の組み上げとかやるのはやっぱし家庭人としては当然の仕事なんでしょうかね....。

十一日

引っ越してから通勤は単車がメインとなっている。この近来稀にみるらしい冷え込んだ冬の空気のなかを単車で駈け抜けて行くわけで‥‥寒い。
やはり遅刻ぎりぎりのところを幼なじみの女の子と走っていくのがあったかくていいんでしょうか(違)

十二日

夜から当直‥‥なのだけれど入院ベッドがなくて四苦八苦。転送したりあちこちやりくりして入院させたり。
自分の受持患者の急変もあって、疲れる....。

十三日

午前中の外来は調子悪い人が数名。うちひとり入院で緊急透析導入。ばたばたばた‥‥。

十四日

午前中にちょっと病院へ顔を出して、その後はまだ残っている引越の後片づけ。本日は雨の中ベッドが搬入。少しずつ(中古も含めて)家具を買い付けているので少しずつ片づけが進んでいく。あと大物は書架とシェルフとカーテンかな‥‥。

この日は親に新居の一般公開(違)。

十五日

朝っぱらから書架の移動含めてごそごそする。やっぱり重い‥‥。
本が詰まったままでは当然動かせないのだけれど、すべての本を出すのはやっぱり大変、ということで半分くらい取り出してなんとか移動した。

午後から妹がきて、昼食を食べる。ステーキ焼くなんて久しぶりだな。

十六日

午前中いっぱい透析室業務して、午後は午後でカンファレンスがあって、であっぷあっぷ。受持患者さんところにもきちんと顔を出しにいけていないし。
最近の悩み所は栄養状態の改善。普通は食わせればよくなるのだけれど、基礎に透析があったり消化管の吸収障害があったり偏食があったりするともう大変。何でもいいから食べてとやったらどんどん体重が増えてむくんだり、食事制限すると食べる気力がなくなったり。あちら立てればこちらが立たないし。

十七日

透析当番して、夜は当直。
そんな夜に限って透析の患者さんが来たりする。やっぱりなにか引き寄せるものがあったりするんだろうか。

十八日

夜、同期の友人他と晩飯を食べに。
病棟のとある看護婦さんはなんでも夫婦そろってペンタックス使いなのだそうな。わたしの手もとにもニコンのFE-10が眠っているのだけれど、そろそろ交換レンズも生産中止になるようだし、スナップくらい撮れるようにレンズを買い足した方がいいのかなとか考えている今日この頃。

十九日

そろそろ周りでは内科学会の認定医試験の準備が始まっている。病歴要約の作成は結構手間もかかるから少しずつやるしかない。
去年より受験数も多いようでにぎやかな感じ。ちょっといいな、と思ったりする。

二十日

雪が降るらしいという天気予報で覚悟していったらそうでなく。まぁ明日は降るらしいからよいか。
たまには本も読みたいのだがそうできない状況って奴がね‥‥。

二十一日

雪の中出勤。昼には吹雪いてるような感じで。こんな日に当直なのは幸せなのか不幸なのか。
夜来るのはある意味病院に来れるくらい元気な方々ばかり。不思議とこういう悪天候の夜には重症患者が多くなかったりする。まぁ夜明け前にひとり重症は来ましたけれども。

二十二日

明けて、雪に埋もれた町の中を帰宅する。帰りがけに散歩の達人Newtonのムックを買った。
んで、お茶飲みに出かけてパンを買って帰ってくる。雪で足下がけっこう危なかったけれど。

二十三日

帰ってくるとTVがついてて夜のニュースをやっているようなそんな日々なのだけれど 。情報源といえばちらっと読む新聞とどーでもいいようなニュースをやっているテレビ。
なんかちっとも文化的な生活ができない。

二十四日

少し前の話。
年明けにインフルエンザかかって休んで、よく聞かれたのは「ワクチン打ったの?」ということ。去年も今年もワクチンは打っていたのだけれどそれでもインフルエンザにかかってしまったと話したら、某先生が「免疫が落ちてるんじゃないか?」とひと言。さらに追い討ちをかけるように「がんになりやすいかもしれないぞ」‥‥。
やっぱ憑かれてる疲れてるのかなぁ‥‥。

二十五日

テレビではライブドアが一躍ヒーローから悪の権化に叩き落とされているのだけれど。
別に忘年会で「オレの会社サイコー」ってうぬぼれたって世界征服を叫んだっていいじゃんかと思ったりはする。咎められるべきはその手段であって。手段、ってことでいえば時間外労働時間をどんどん増やしたり払うべき税金を払わずにいて利益をあげていくのもライブドアと同等に悪辣じゃないか?
もっと言えば、耐震偽装問題で出てきたように、安全確認を商売にさせた結果人の命を危険にさらした連中はやっぱり同じくらいワルいんじゃないだろうか。偽装を企んだ連中と同じくらい、偽装ができるような土壌を作った連中も咎められてしかるべきなんじゃなかろうか。

二十六日

頭部外傷後にけいれんをおこした人がいる。おさまったあともぼーっとしているしいつ再発するかわからないし。神経内科医にみてもらっても「当面抗けいれん剤で」程度。
あんまり受け持ったことのない疾患ってストレスなんだよぉ‥‥。

二十七日

年末に退院した患者さんがひとり戻ってきている。もともと栄養状態不良でむくみやすい。全身浮腫に腹水がたまった状態で帰ってきてしまった。これを改善するには栄養補給しかない!とばかりに現在ガンガン栄養補給中。
普通カロリーはどちらかというと制限の仕方を考えることが多いが、それはたっぷり食べられる元気な人だからの話。病人ではカロリー摂取もままならない人も多くまた必要カロリーそのものも増加する。Harris-Benedictの式での推定の仕方を知ったのは実は去年のことなのだけれど、計算してみて小さなおばあちゃんに自分の予想の1.5倍くらいのカロリーが必要と知ってがく然とした。
最近では栄養管理が難しい患者さんに当たることも多くてこずっている。

二十八日

朝食後に旅立つ。里帰り出産する相方の付添。

旅の間はわりと本を読む暇も多く。「ファイナルシーカー」(小川一水MF文庫)読了。小川さん得意の職業もの‥‥と言っていいだろうか。今回は自衛官。それもレスキュー部隊。
自衛隊って実質としては軍隊といっていいと思うのだけれど、軍のレスキューは兵士を救う部隊、という性質があると思う。平時においてはその力を利用して民間人を救うのだけれども、いざ戦場で味方の兵士を救護する、ということになれば、そこで要求される力は最前線の戦士のものと変わらないのだろうと思う。単に傷ついた人を助けたい、という思いだけでは、やっていけないのではないかと思う。
あと、話の序盤に出てきた男女二人組。それでも彼らを助けるのが仕事とは思うけれども、やっていてがっくりしてしまうのもまた、事実だよなと共感。

二十九日

相方のファミリーと昼食を食べてから、岡山より帰京。

帰り道で「ねじの回転 FEBURUARY MOMENT」(恩田陸/集英社文庫)読了。時間SFで歴史SF。
未来の国連スタッフが時間遡行技術を基に二・二六事件を「再生」し直していく、というのが話の始まったときのストーリーの枠組み。「正史」を「確定」する作業が続けられていくのだけれども、「大きな誤りがあれば記録は停止し、もう一度時間を遡行し直して再度『確定』し直す」という事前の話とは裏腹に、起こる出来事は予定されているはずの「正史」から徐々にずれていく。なぜそうなっているのか、そして、どのように歴史は修正されるのか。物語は二転三転しつつ、最後は思いがけない結末を迎える。
「歴史に"IF"はない」とはよく言われるのだけれど、こんなお話を読んでしまうとついIFを考えたくなってしまう。たとえば二・二六事件で殺された人のうちひとりでも生き延びたら、あるいは生き延びずに殺されたら。それで大きく歴史は変わったのかもしれない。歴史学徒はIFを考えないのだろうけれど、一般人としてはIFを考えるのはそれなりに面白いことと思う。

三十日

しばらく独り暮らし生活となる。いちおう自分で朝食作って出勤。
夜は電子カルテ導入に向けての検討会。長丁場ではあったが導入の迫った案件だけにけっこう集中した会議、ではあった。

三十一日

問:最期の時を迎えようという患者様と家族の対応をしているときに病棟から「不整脈です」と呼ばれたときどう対応すべきか。(10点)
──おまけにそれと時を同じくして「今日入院した肺炎の人、無尿なんだよね〜、クレアチニンも上がっているし、どうしたらいいかなぁ?」などと呼吸器科のドクターから相談を受けたりするわけだ。
不整脈止めながら最後の看取りをしてそれが落ち着いたところで緊急透析しましたよ、ええ。帰ったのはかろうじて空が白み始める前ってくらいの時間でしたよ。


Written by Genesis
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