歳時記(diary):十一月の項

一日

透析当番までやって病院でたんだけど‥‥気がつくと土曜日から四日間連続で自宅で夕食とってないことに気づいたり。マズい、かも。

二日

食堂で昼食。
一年目の某先生と同席したのだけれど‥‥会話してたら「Genesis先生(仮名)はなんか先輩とか同期とかいう位置づけじゃない気がして」との話が。どうやら複素数平面を用いないと位置の規定ができないようなところに置かれているらしく。
これはやっぱり「『笑う大天使』映画になるそうですね」「でも、果たしてあの『もぎゅもぎゅ』とかが映画になるのだろうか」「ちゃんとムギチョコもばらまかれてくれるのだろうか」などと一部にしか通じないような会話を交わしていたせいなのでしょうか。

三日

まぁまぁのお天気のもと、医局バーベキュー大会。腹いっぱい喰いましたともきっとこれは体重にひびくだろうなぁって位。
そのかわり、ってわけじゃないけど終わって解散してからカラオケ行ったり、した。

四日

外来。塩分制限のお話なんぞしていたら。
「たとえば味噌汁に少しお湯を足して薄味にするようなやり方ではダメですか?」って聞かれた。
「‥‥そのやりかただと、含まれている塩分総量は変わらないんですが」
薄味なら減塩になるだろう、そういう誤解は数多い。他にも薄口醤油なら減塩になるだろうとか(ものにもよるが塩分量は変わらないものもある)、減塩梅干しを日に十個も食べていたとか。
結局のところ、地道に計算するしかないんだよぉ。

夜四−五時間の残業をするのと日曜出勤をするのとは果たして等価交換なのだろうかと悩んで見たりする夜。
先輩の代わりに夜間透析当番なんだけど‥‥「俺そのかわりに日曜日直代わるから〜」って。思いきり不等価交換な気がした。

五日

ひいひい言いながら透析当番。なにせ数多いし。落ち着けば楽になるんだけどねぇ。

夜は「スイング・ガールズ」。音楽コメディは割と好き。

六日

昼飯はパスタも出す寿司屋というよくわからないコンセプトのお店で。ランチセットはお寿司だったけれど千切り大根のサラダ付。美味しかったからよし。
その後は家具屋を回る。食器棚とかベッドとか。

七日

サテライト透析の所長先生がお休みとのことで支援に駆り出される。
というわけで敵情視察なぞ(ぉ。外来が荒れてると入院患者が増えるしね〜。

八日

ルーチンワークだけで十分に忙しい。ひぃ。
火水木と夜残るのも三週連続、かな?

九日

先日は三十代の未発見だった尿毒症患者の緊急透析があって、今日は外来管理が中断していた二十代の慢性腎不全患者が救急外来に来てやっぱり緊急透析導入。
聞いたら家族に医療スタッフもいたそうな‥‥だったらもうちょっと早いうちに何とかならなかったのかと小一時間(略)

十日

今夜は当直も加わって、三日連続病院で夕食。
引き継いだときに点滴中だった方は入院希望があったもののベッドがないということで帰宅方針となっていた。そのあと来た方もやっぱり入院適応あり。一応ベッド状況を確認したところなんとか入院できそうとの返事で。
先に来た方にはベッドがないと説明していて、後から来た方にベッドがあると説明するのも申し訳ない感じで。入院できない病院に意味はないとか思うのはこんなとき。

十一日

当直明け。
電子カルテ導入に伴う説明と今後の作業についての説明があったのだけれど‥‥これ、ホンキでできるのかって気が。
プロジェクトリーダーの某先生が今後の作業工程を説明して下さったのだけれど、口ぶりからすると文書作成のためのマクロ組みはある程度ご自分でやる予定の様子。VBA使うらしいのだが‥‥そんなことに医者を投入してていいのかと小一時間問い詰めてみたく。

十二日

さだまさしML経由の情報で上條ひとみのカヴァーした「October〜リリー・カサブランカ〜」を試聴する。
男性視点の歌を女性が歌うのは割とよくあるのだけれど、女性視点の歌を歌う男性シンガーって少ないよなぁ、と思う。「October」は男性視点の歌だけれど、さだまさしだと「セロ弾きのゴーシュ」「雨やどり」等々、女性視点の歌もあるのだけれど。

十三日

秩父まで車を走らせて、食卓用のテーブル作りの相談。
帰りがけに国道299号ぞいのRockGardenCafeを見つけて寄ってみる。二人してケーキセットを頼んで別々のケーキを選んだら、二分割して皿に分けて盛ってきてくださる。細かな心遣いが嬉しい。値段も手ごろで気に入った。

夜は「プラネテス」アニメの観賞。役に立たない上司ズの動向が気になってみたり。

十四日

夜、さだまさし目当てでHEY!HEY!HEY!を観る。──さだまさしのトークってネタがいっぱいだね....。
「『北の国から』はシングルのB面」って話題がでたとき「『長崎小夜曲(ナガサキシティセレナーデ)』だったかな」と呟いてしまっていた。

十五日

隣の病棟内をビデオカメラ抱えた人がうろうろしていた一日。なんでもTVの取材が入っていたそうな。(夜のニュースとかそういう訳ではなかったらしい)
関係ないと思いつつもつい気になってしまうあたりが小市民。

十六日

電子カルテ導入にあたり問診とか所見の入力テンプレートを作れとの指令が各科に飛んでいる。我が腎臓内科の担当は腎臓疾患と膠原病疾患。──いやいいですよ、膠原病から腎障害を呈する人は多いし膠原病専門医もいないしね。
しかし、問診も所見も全身にわたるのがこの疾患の特徴。書くこと多すぎだって。締め切り来週とか言っているし。はあ。

十七日

朝方、ひとり患者さんをお看取り。透析歴の長い方でおそらくは癌。
診断もついていない方であるしできれば剖検を、とお願いしたけれども、生検のみなら、ということになる。
necropsy──無理やり訳せば死後生検とでもなるだろうか。剖検(autopsy)が死亡後全身の諸臓器を取り出して観察するのに対して、小切開や穿刺生検で一部だけ取りだしてくるやりかた。ご遺体に残る傷が小さいのがメリット、といえるだろう。実は初めての経験だった。

午後は腎生検。初めて穿刺を行ってみる。事前に必死で頭の中でシミュレーションをした甲斐あって無事に終了。

十八日

最近入退院が多めでひぃひぃ言っている。それで空床があるということでどうも軽症が多いのではないかと推測しているのだけれど‥‥。冬本番はこれからだしね。

十九日

日中透析当番、夜は当直。
こんな日に限ってICUが落ち着かなかったり入院が来たりばたばたと。当直も結構入院を入れたしなぁ‥‥。

二十日

地域の腎臓研究会の会合へ。今回は記念ということでホテルの宴会場にて。(普段は大学の講堂なのだが)
しかしわたしの目当ては金田一秀穂杏林大学教授の日本語に関する特別講演だったりして。「ことば」というものがなぜ、どのように変遷していくかというお話で興味深く拝聴。
レセプションで食事を食べてから家に帰ると、翌々日締め切りの電子カルテ関連の仕事を黙々と。

二十一日

ここ数日頭を悩ませている電子カルテ関連の仕事。正確に入力できることも必要だけれど同時に素早く必要な情報が入力できないと診療を時間内に進めていけない。
‥‥だからとはいえ「変わりなし」って選択肢はどうかと思いましたが。汎用しそうだけど。

二十二日

往診関連のまとめをするために事務所でカルテを漁る。
久しぶりに往診の看護師さんたちと話したけれど。「先生は苦にもせずに往診してたから感じなかったけど、けっこう管理の難しい人が多かったんですね〜」って。
まぁ介護環境が崩壊してる家とか慢性呼吸不全末期とか脊髄小脳変性症末期とかうつ病で出歩けない人とかいろいろいましたけど。処置もそこそこありましたけど。そんなもんだろうと思ってたから特に大変だろうとも思っていなかったのが正直なところ。
手先も比較的器用にできているらしく(親からは不器用と言われつけていたので自分としては器用と思っていないのだけれど)確かに処置が巧くできずに困ることは少なかった。
器用貧乏というけれども、こと往診などマンパワーの限られる分野に投入される人材としては、器用に数多くの分野で標準をクリアする人が向いている気がする。

二十三日

未明に電話でたたき起こされる。透析患者の急性心不全ということで緊急透析の依頼。病院着いたら呼吸が持たずに人工呼吸器がついている始末。工学技士もたたき起こしてマッハの速度で準備してもらってと急いだ甲斐あってか、夜には抜管できたけれど。
んで‥‥そのまま透析当番。回診して処方出したりなんだりすると午後には疲れが出てきていた。はふ。

二十四日

往診のカルテをまとめていると、研修医の診療ぶりが見えてくる。病院で研修を積み、比較的なんでも検査できる環境に慣れた研修医が、一つ検査を出すのもコストや病院まで来院してもらう手間を考慮しないといけない環境で仕事を始め、そのギャップを感じているようで興味深い。
実力といった場合いろいろな要素があると思うのだけれど、往診では「必要最低限の検査をしながら患者の状態を維持していく」実力が問われるのかも、しれない。

二十五日

夜は飲み会。久しぶりにゆっくり呑む。

二十六日

朝はゆっくり寝過ごす。(ぉぃ) なにしろ休日だったもので。
惰眠をむさぼってからのんびり起きてだらだらして、昼過ぎから病院へ。(滅) これぞワーカーホリック‥‥。
明日も出勤すること約束してるあたりがもっとアレですが。

夜、本棚探しでホクトの三列書棚に行き当たる。スペースあたりの収納力ということではかなりのもののようだけれど。
今のところ普通の本棚を六つ、コの字型に組んでいるのだけれどすき間が狭くて本が取り出しにくいなど、あまり使い勝手がよくはないので。本の虫な人々はどのような手だてを講じているのかしら。そういえば以前見つけた丸伸のWebPageのリンク集には愛用者として数名の著名人がリストされていたけれど。

二十七日

夜、「プラネテス」のアニメ観賞。好みのタイプの作り、であったりする。原作の世界に忠実で、それでいて原作を踏み越えた映像ならではの表現がされている感じで。

二十八日

本棚の話のつづき。
わたしんところにはさすがに集密書架買わなきゃ収まらないほどの蔵書はないです。一般家庭より多いとは思ってますけど。現状見ると普通に本棚買っても本は収まるんですが、形も大きさもさまざまな本棚を並べて収納するのも美的でないという意見もあって大型書棚の検討をしている次第。
一般家庭向け集密書棚、というものが売り出されるとしたら、それはまず図書館や企業向けのものとは一線を画すだろう、と思う。どんな風に、と考えてみると、ある程度以上は大型化しないだろうと思うし、また部屋に置いたさいにある程度周りと調和して欲しいと思う。逆にそう言ったことを考慮しないならば、素直に業務用の集密書架を買えばよいだろうと思うけれど。
まぁ人柱してみるのも一興かもしれない。

二十九日

夜、当直に入る。比較的落ち着いた夜で何より。

三十日

夜の宴会で「やっぱり労働歌って燃えますよね〜」とか言ってた独身女性約一名(推定二十代・容姿端麗)発見....。いや確かにうちの病院労働組合強いけど。
歌を叫ぶのはなんであれある意味魂を燃やすに足りる行動なのかもしれず。いや自分も叫ぶのは好きなんですがね。


Written by Genesis
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