歳時記(diary):六月の項

一日

いちおう外来は終了となったのだけれど、休みの先生の代わりで勤める。
──そんなところで甲状腺機能亢進症の燃え盛ってそうな人が来たり。つい先日超重症の甲状腺機能亢進症の人がいてえらいことになってた印象が強く。力いっぱい入院をお勧めしたのだけれど断られてしまった。
病気以外の事情はもちろんあるから入院できないにしてもできるだけ手を打つ必要があり。いろいろ処方して次回外来とした。大丈夫かなぁ。

二日

スライド作りで日が過ぎて〜。(爆)
御大が力こぶ入れてるのでさぼるわけにも行かず。どっさり渡された参考資料を斜め読みしてスライド作って読み原稿作って。それほど嫌いな作業ではないのだけれども。

三日

往診のない金曜日。とっても久しぶりの気分。
余裕持って患者さんに相手できるのは幸せだろうか。

四日

休みなのだけれども、自転車買いに行ってから出勤。今乗っている自転車がハンドルを振ると足にぶつかるという弱点を抱えていることなどから買い替えを決意したためなのだけれど、なんだかわたしの乗り方が悪いという意見が‥‥。

スライドの最後の調整をおえて、CD-Rに焼いて準備完了。解放感に浸りたくてカラオケしにいったりして。

五日

久しぶりにネクタイとか締めて出発する。病院で他の先生と待ち合わせて、会場へ。
発表自体はつつがなく終了。突っ込みに対してもまぁまぁ無難に受け答えできた、と思う。
終わった後は打ち上げして、飲んで帰ってきた。

六日

ひとり、約一ヶ月まともに食事を食べていない患者さんがいる。消化器疾患のためで、治療は絶飲食、という次第。
持続点滴で管理しているのだけれど、食べたいのに食べられないのがなかなか辛いらしい。じっとこちらの指示に従って待っていてくれるので、却って申し訳ないやらなんやら。
患者さんに負けず劣らず、医者の方も回復を待っている状態だったりする。

当直は、日中の医師から引き継ぎしている最中に急変。結局ICUに移したもののお看取り。異状死体ということで、検死をお願いする。
異状死体というと事件かということになるがそうではない。来院してから病名のはっきりしない状態で亡くなった方が対象になるから、病死であろうけれども死因ははっきりしないという人も対象になる。当直業務をこなしながら警察の取り調べに対応して。

七日

‥‥二回続けてほとんど呼ばれない当直。なぜだろう。

病棟の患者さんも落ち着いているし、こんなときには帰るに限るとばかり、残業を二時間位で終わらせて(爆死)帰宅。
帰ってきてからAIR-霧島佳乃シナリオクリア。うん、しっかりできたお話だったと思う。
途中の「ねんねんころり」の子守歌は、オリジナルなのかどこからかひっぱってきたものなのかがちょっと興味があったりして。白穂さんのお話はまたどこかで出てくるのでしょうかねぇ....。

八日

午前・午後とサテライト透析の回診を。
これから外来透析にも関わっていくことになるのだけれど──やはり雰囲気が違う。維持療法として「無事に透析を終わらせる」ことが使命になる外来と、疾患治療などのために動的に「透析を使いこなす」のが使命の入院治療と。
外来では一回一回の治療であまり無理はできず、でも長期管理をがっちりやらないといけない。患者教育・スタッフ教育も大事なのだろうと思ったりする。

九日

最近病棟では動きが少なく。穏やかなのはよきことかな、とは思うが。
そんなわけで、仕事終わってから内科認定医試験のトレーニング。領域が消化器ということもあって苦戦する。普段ウイルス性肝炎なんか診てないし‥‥。消化管疾患はまだましだけれど。

十日

夜、夕食摂りながら「わたしはあい 01」(外薗昌也/モーニングKC)を読む。一緒にかばんに入っていたのは「ポストガール4」(増子二郎/電撃文庫)だったりするし。どっちも人工知能のからむお話。
外薗昌也さんはよいですね、作品にSFマインドがあって。個人的には舞台を現代日本に近い場所においているあたりもお気に入りだったり。「ルカ夏」といい、「エマージング」といい。

十一日

透析当番にて出勤。最近しばらくぶりに穏やかな透析室となっており。今日も指示だししたあとはほとんどトラブルもなく過ぎる。
‥‥代わりに病棟で他の先生の患者さんのトラブル対応してたけど。

夜は泊まり。緊急入院で少しどたばたしたくらい、か。

十二日

明け。
買ったばかりの自転車のブレーキワイヤの調整に自転車屋に走った後、献血。睡眠時間足りてなかったかもしれないけど。(爆死)<真似してはいけません。
献血手帳が気がつくと三冊あったりしたものでまとめてもらったら、献血回数十回で記念品が貰えるそうな。というわけで、件のブツを貰って帰ってきた。

昼過ぎからコミケ拡大。同業者と待ち合わせて拉致する。
行き帰りで「ドミノ」(恩田陸)を読んだ。

十三日

「半分の月がのぼる空」(橋本紡/電撃文庫)読了。
SFも魔法も出てこない、でも温かいお話。割と好き。

十四日

夜は宴会。突発お誕生祝い会にしては15人も。
落ち着いた店だったのだけれど、だいぶ回ってしまった人がお騒がせしてしまったかもしれず。看護師さんとか、ストレスたまっているかも‥‥。

十五日

午前・夜とサテライトの透析回診。先週は月二回の血液検査の結果返しで、今日は定期処方日。‥‥俺仕事多い日に当てられてる?
終わって家路につくのは23時過ぎていて。けっこうきつい、かも。

十六日

とある新聞記事が目にとまる。プラスチック製の容器ごみ、家庭分別をより細かく

つねづね思っているのだけれど、プラスチックは本当に「リサイクル」できているのだろうか。ことばの定義としては「リサイクル」は「再生資源として使うこと」ということなので、確かにリサイクルできているのだろうけれど、わたしは「リサイクル」ということばに「循環しつづけられる」という意味がこもって欲しいと思う。
ビンやカンは使い終わった後熱を加えたりして全く新しい製品として再利用できる。再利用した後にもまた加工し、新しい製品に加工し直せる。けれども、プラスチックでそういった何度も循環させられる素材はごく限られる。
わたしがコンビニなどで不満に思うのは、あまりにペットボトル飲料が氾濫していて、たとえば缶に入ったお茶とか、ミネラルウオーターなどは数が少なくなっていたりする。いくらでも再利用できる素材を使うような誘導も、して欲しいと思うのだけれど。

十七日

夜から泊まり。金曜日はあまりやることがなかったのだけれど、まぁ比較的穏やかで何より。
そのすきに認定内科医・認定内科専門医受験のための演習問題と解説とか、少しずつ進める。各領域とも正答率が五割前後って‥‥やばそう。

十八日

明けて、そのまま帰宅。
帰っていきなり寝ちゃったし。やっぱり疲れたまってる感じ。

午後になって起き出して、買い物など。「半分の月がのぼる空 2」(橋本紡/電撃文庫)購入。

十九日

朝もはよから起き出して、登山教室へ。本日のお題は岩登り。
一般的には断崖絶壁とでも表現されるところを登る、ってのが本日のテーマ。事前にしっかりザイルを張って、命綱を確保してからトライ。中高年者が多いので「こんなのムリよぉ〜」なんて嘆息も聞こえるのだけれど、個人的にはなかなか面白く。意外と登れるものです。
自然の岩壁なので、かならずしも手がかり・足がかりが整えられているわけではなく、登りながら少しずつ探していくのはパズルを解くようで嫌いではない。もっとも体力がついてこないのですぐにへばってしまったけれど。わずかな出っ張りをしっかり足がかりにできるように、つま先の力をつけて再トライしたいなぁ。

二十日

かる〜く腕に筋肉痛を覚えつつ出勤。岩登りは足を使ってやるものだそうで、腕力に頼るのはあまりうまくない証拠なのだとか何とか。

夜は泊まり。入院できないのに引きも切らずに患者さんが来る。来る側に罪はないとはいえ‥‥。入退院管理って難しいんだけどね。

二十一日

ある先輩がいいました。「摂れない食事に、意味はありますか?」
これまで栄養ってあんまりきちんと勉強したことないのだけれど、栄養管理の勉強会に行ってきた先輩の話がなかなか参考になった。必要カロリー、その構成、摂取方法の手段と優劣。ちょっと深めてみたいかもしれない。

二十二日

小熊さんとこの日記読んでたら、脇から「厨」ってなに?と質問されて、googleで「厨」と入れて検索してみたら、最初に出てくるのが押し掛け厨の話だったりする罠。
思わず全部読んじゃいましたよ(死)。

二十三日

整形外科入院中の方が急性腎不全を起こしてきたということで相談がくる。どうやら内科疾患がベースにありそう。内科転科の上治療を、ということで主治医を引き受ける。
‥‥でも、わたしの予想以上にヘヴィなことになりそうで。あちこちの科と連携をとりながら進めて行く必要がありそうで。久しぶりに遅い帰宅になった。

二十四日

透析医学会へ。つっても昨日の患者さんが気になって気もそぞろだったり。発表を無難に済ませてちょっと演題見たらとっとと帰ってきてしまった。

それでも車内では「夜陰譚」(菅浩江/光文社)と「少女たちの『かわいい』天皇」(大塚英志/角川文庫)を読んでいたり。
「踏むけど」でつい笑ってしまったりして。

二十五日

一日、透析当番。
ICUで尿でない人がいて、やっぱり透析しないといけないんだろうなぁとか思いながら、準備を始めたあたりから少しずつでも尿が出だす。
やらなくてもよかったかなとか思いながら、それでも開始。まぁ悪くなることはないし。

二十六日

出身大学近くで学会──相方が参加。(笑) わたしはまぁ、久しぶりに学生時代住んでたアパートに行ってみたらしっかり新しいマンションに建て代わってたりとか。
書店に行ってみたら「星のダンスをみにおいで」(笹本祐一/朝日ソノラマ)の新装版があったので思わず購入。即日読了。少し書き変わったところも面白く。

二十七日

朝行ってみるとICUの人は大分調子が戻ってきた様子。先週は他にも外科の患者さんで苦労してたけど、その人も順調な様子。よしよし。

二十八日

入ったばっかりの急性腎不全、どうやらバックには腫瘍があるようで。
放射線治療に化学療法と準備をしつつ、本人へも病状伝えて心の準備をしてもらって。
はっきりきっぱりいえばいいわけではないものの、しっかり伝わらずに誤解されるのも避けなければいけないし。コトバの難しさを感じたり。

二十九日

外来透析の日。慣れてくると割に楽しくなってくる。
問題は、病棟の対応がたいへん、ということと、夜が遅くなることなのだけれど。今日も帰宅は日付変更の頃。

三十日

夜より抗がん剤治療を開始。プロトコルを何度も確認しつつ、薬詰め。
しばらく目の離せない状態になりそう‥‥。  


Written by Genesis
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