歳時記(diary):五月の項

一日

明け。好天に誘われてふらふらとお出かけ。メーデーに駆り出された職場の人々が宴会をやっている店へ。
喋って飲んで、二次会でカラオケ行って叫んで。楽しく過ごす。
今年入職の一年目Drが、わたしの手持ちの「永遠の森〜博物館惑星〜」をみて、「この本何か賞取ってましたよね」と反応。各種お勧め対象としてロックオンしてみたりして。

二日

すこうし時期遅れだけれど、JR福知山線事故の報道を眺めながら思うことを。
安全係数、ってことばがある。安全の確保のために、機械の性能その他に余裕を見込むこと。安全係数は高い方が安全度は上がるけれど、コストもその分かさむことが多いから、安全度と費用その他をはかりにかけながら、設備の性能を決定しないといけない。
薬に関してももちろん安全係数(もしくはそれに近い考え方)がある。化学物質の安全量はたとえば動物実験でなんら危険な影響が出なかった量を基準に、その百分の一の量、などと決めているようだ。
今回の事故の報道を見ながら、JRの安全係数の設定が甘い、というのが根本に横たわる問題なのかな、と思う。運転士はまだ経験が浅いことも明らかにされている。そういう運転士が乗務したときにマイナートラブル──たとえばオーバーランとか列車の遅れ──がおきることはあり得ることだと思うし、それがあっても全体として支障のないようにダイヤを組んだり、遅れを取り返そうと無理な速度で走ろうとする電車をコントロールするシステムを入れたり、そういう努力が足りなかったのかな、と。
オーバーランが何件、とやかましく報道されているけれど、個人的にはオーバーランで人がけがをしますか?と問いたい。うっかり行きすぎそうになったとき、オーバーラン怖さに急ブレーキをかければ、転んでけがをする人が出るだろうと思う。まず怪我をさせない、ついで定時運行・正しい停止位置、ということではないだろうか。

ミスは隠さないようにし、表に出すことでデメリットが生じないようにするのがリスク管理としては正しいように思うのだが、どうだろうか。何か起こすとすぐ処分だ責任だと騒ぐ風土は、事故を起こさないためのリスク分析をも妨げてしまう気がする。

三日

だらだらと起きて、だらだらとお出かけ。
車走らせて行楽〜と思ったら、同案多数であったらしく大混雑に巻き込まれ。結局途中で引っ返してきた。

四日

日直・当直。
ひと通り呼ばれるとあとは待機の時間が長く。よかったぁ。

五日

明けて、買い物〜。
ズボン買って、書店で夢路行さんの全集やら「ふたつのスピカ」やら、買う。
ま、黄金週間とかいってもほとんど休みなしだなぁ。

六日

一件臨時往診を頼まれて、方角も違うので最後にする。──遠い。駅二つ分車を走らせることになる。一件行くだけで三件分くらい時間使った気がする。

七日

のんびりお買い物〜って、ラ・フェット南大沢へ。
──しかし、なして女性って買い物にあれだけの情熱を注げるかね。男にはわからぬ魅力がそこにはあるらしい。

八日

親のお供をして奥多摩方面へ。川べりの道のハイキング。

行き帰りで「鵺姫異聞」を再読。帰ってきてから「ふたつのスピカ」を読んで。未読減らさないとねぇ。

九日

患者数が少ないのにあんまりすみやかに仕事が終わらず。
大ボスからは「明日締め切りの研究会の抄録出してね〜」みたいなご無体な指令が飛んでくるし。書く時間って奴はどこにあるんですか。

十日

透析当番して救急当番して。長時間仕事してる割にはあまり進んだ気がせず。仕事の密度が落ちてないか?>俺

十一日

午前午後と外来やってた気がする。
午後いちで入ってきた方。午前外来からの引き継ぎだったけれど、入ってきたらめちゃくちゃ顔色が悪く。血圧も下がっててすぐ横にして入院。
一過性に血圧が下がったときに脳虚血になって呼吸が止まりかかったのではないかなんて推測をしていたのだけれど。同じようなエピソードで天に召された人もいるのではないかな、と思ったり。

十二日

胃潰瘍で入院した人が実は膵炎だったことが判明したり。
えうーそんなこという人きらいですー。(違) どっちも腹痛起こすからなぁ‥‥。

十三日

先週も行った遠くの家の人のところに今日も伺う。がんの末期を自宅で過ごしたいとのご希望の方。
みていく家族もだいぶ覚悟が決まってきたみたいで。それほど残りの時間は長くないだろうけれども、それを本人の希望通りに過ごさせてあげられるとしたら、それは本人にとってこのうえない幸せではないかな、と思う。

十四日

透析当番。
ICUでひとり高熱発してる透析の人がおり。もともと歩いててはっきり話せててって人だけど、全身の血管がものすごい動脈硬化だったりする。そすと、見た目の元気さ以上に余力は少なくなっていて──悪化するときはあっという間、だったりする。
ちょっと憂鬱なケース。

終わった後は河口湖へ車を走らせ。青年医師で新卒医師の歓迎合宿。遅くまで語った後、余力があったので「ライオンハート」(恩田陸/新潮文庫)読了。
時と時間を越えたすれ違いの物語。ほんの一瞬ともいえる邂逅の時を過ごし、互いを求め合う二つの魂。表題に掲げられた絵画を絡めながら、語られるお話はとても魅力的。

十五日

明けて、朝食をとって温泉入って帰宅。
さりげなくコミケで買ったTシャツを着てみたら、「なんでハガレンのTシャツなんですか?」と反応した人約一名。めでたくヲタ認定してさしあげる。

夜、AIRの続き。めでたく遠野美凪シナリオエンディグへ。しかし、途中で夢幻バッドエンドに入ってやり直したとはいえ、半分以上過ぎてたはずなのに最後までみるのに三時間くらいかかった。
最後の方はほんとに選択肢が少なく。問い掛けられて「お、選択肢が出るかな?」と思うようなところでも選択なしに話が進んでいたり。オートモードで進めていたので本気で「ゲームしている」というより「読んでいる」感じがした。

十六日

朝の挨拶で最近違和感を感じる。顔を合わせていきなり「お疲れさま」とかいわれたりするもので。
「朝はおはようごさいます、だよ」(C) 水瀬名雪とか言ってもいいですよね?

十七日

仕事終わってから会議でお出かけ。行き帰りで「劫尽童女」(恩田陸)読了。
わりと落ち着いた感じで、一気に読んで余韻に浸る。恩田さん著作が多いのはいいんだけど、単行本が多いんだよな〜。(死) 文庫落ちしてから買い集めてる奴‥‥。

十八日

気がつくと受持患者がみんな消化器系の問題点を抱えていたりする罠。胃潰瘍に膵炎に肝障害に腸炎。
みんな腎臓病も持っているんだけれど。各種病気を併発してる人なんて珍しくもない。

外来は数が少なかった代わりに問題点が多い患者さんが集まった気が。担癌患者とか糖尿病初診とか。めんど‥‥。

十九日

たまにはスポーツな話。
医局には阪神タイガースが勝った翌日にはデイリースポーツがおかれている。虎好きな先生が朝買って来て読んでいるらしい。阪神が負けた翌日に買う意味はないそうである、ちなみに。
個人的には楽天ゴールデンイーグルスの動向が気になる。なんか、出だしが「ラスト・マジック」(村上哲哉/新潮文庫ファンタジーノベル)みたいだな、とか思ってしまったから。

二十日

往診行こうとしたら検査科から電話。造影剤の注射に立ち合えとの連絡。ごねてみても始まらないので出発遅らせて注射を済ませてから出る。おかげで画像のチェックは素早くできたけど。

往診も隠退まぢかということで引き継ぎ。病状や病歴などなど。
でも一番重要なのは各種処置の際の微妙なクセを伝えていくことだったりして。

二十一日

夕方から腎臓カンファレンス。他病院の症例もみながらお勉強〜。
でも、あんまりたくさんだとおなか一杯になってしまう罠。適正な量って難しいよなぁ。

二十二日

映画見ようと思ってたけど、見事に遅刻して挫折。しくしく。
悔しいので(?)「リリアとトレイズ」(時雨沢恵一)とか「ドミノ」(恩田陸)とか買って帰る。

ファンタジージョブ占い剣士、なのだそうです。なんか違うような気がするのだけれど。

二十三日

直明け。週頭からすでにつかれているんだもんな〜。

ライトノベルWikiオープン、との報あり。Wikiって面白そうだなとか思いつつ手出しするだけ技術力が無かったりして。なにせ、書き込むお作法もよぉわからん状態だったりするし(滅)

二十四日

個人宛に届いたメール。
「終末はありがとうございました」って文章に大笑いしてしまう。そーかー終末かぁ。やっぱり最後の審判なんでしょうか(意味不明)

午後は久しぶりにひとりで救急当番。やっぱり疲れる。入院ベッドないから余計に。
そろそろスライド作りしないといけないのだけれど、調べものしている時間がないことが判明。まずい。

二十五日

午前病棟、午後外来。
退院で大丈夫かな〜と危ぶみながら退院させた患者さんが元気に顔を出してくれる。予想よりいい状態でいてくれてほっと一息。

二十六日

ここ数日つづけて入院が入り。やっぱり入院時と退院時が一番仕事が多いから、しないといけないことが多くてストレス。要求水準と量にまだ対応できてないなと嘆息する今日この頃。

二十七日

往診が今日で最後。ざっとまわって、お別れを。
別に勤務先が代わるわけじゃないのでまた会うこともあるだろうけれども。いまのところ、この往診でみてきた患者さん達が一番長期に管理した患者さんたちであったりする。
プライマリケアのなかで重要なこととして「継続性」ということがあったりする。腰を据えて、じっくり診つづけることの大事さというものも、強調されていいことではないかな、と思ったりする。セカンドオピニオンとか専門医の必要性が語られているけれども、「ずっと診てもらってきた先生に今後も診てもらいたい」という希望は消えることがない、と思う。

二十八日

院内透析室が混雑しており、午前午後としっかり仕事する。
それでもまあなんとか夕方には仕事を終えて、おおるり山の会公開登山教室へ。
「山で歩く」とか、運動生理学的に興味を持ってみたり(ぉぃ。仕事が頭から離れないのね‥‥。

二十九日

昨日に引き続いて、登山教室。実際に歩くということで、高水三山へ。
以前の逆コース。やっぱりこの方が歩きやすい。登山教室なので指導側のそこそこ経験のある人たちと、生徒側のあんまり経験のない人とが歩くわけで。いろいろ気を使ってもらったけれど、楽しく歩けた。
水分はかなり多めに持ち、食べ物もかなりこまめに何度も食べるのがばてないためにはよいとのことで。あとで計算すると大体3000〜3500kcalくらい、歩きはじめから下山までに使った計算らしい。ちょっとくらい食べてもエネルギーは不足気味になるというのがよくわかる。
降りてきてから登山口入り口近くの蕎麦屋でもりを食べて、解散。

帰りの電車の車内で「りかさん」(梨木香歩/新潮文庫)読了。こんな人形、いたらいいな。

三十日

いーかげんそろそろスライド作らんといかんということで、ちまちまと作っていく。
でも実は、発表の内容を考える上で参考になるような文献を見つけるのが一番骨だったり。たとえば細菌感染症だったとして「その病気の発生頻度は」「どういう人に多いのか」「感染経路は」「合併しやすい病気は」等々。頻度の高い疾患ならばまとめは労せず見つかるけれども、珍しい疾患であるから発表するわけで、先行研究をあさるのが時間的にも労力的にもたいへん。
まぁ、泣き言言わずにやるしかないんですが。

三十一日

直明け。──ほっとんど呼ばれない、珍しい夜。気候が安定しているせいか、雨が降っているせいか、入院ベッドがないせいか。  


Written by Genesis
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