歳時記(diary):六月の項

一日

学会発表の準備が詰まっている今日この頃。

火曜日は救急当番なのだが、この週は木曜日と交代。ので、少し空いた時間を患者さんを診る時間に充てる。
当院には最近週一ペースで外国人の医師をお招きしてレクチャーをしてもらったりしているのだが、その曜日が火曜日午後。残念ながらほぼ毎回参加できないでいるのだが、今日はやっと少し参加。
以前舞鶴市民病院での"大リーガー医"参加のカンファレンスにも参加させてもらったことがあるけれど、知識の幅広さに驚いた印象が強い。病院全体のレベルアップにつなげることができればいいのだけれど。

二日

二年目の頭の頃に受け持った患者さんが、別な病気で再入院している。
五月に入院して他の先生が受け持って、ご挨拶だけでもと伺ったときには「先生、少し太ったね」と笑顔を見せてくれたのだけれど、病状は芳しくないらしい。
担当している先生の方からは血液浄化の適応の問い合わせが入った。腎臓病ではないのだけれど、病状を悪化させている原因物質を除去することで改善につなげる、という目論見だ。
──これもまた、縁なのだろうか。

三日

午前中救急当番。一年目の先生も救急の見学に入ってくるということで、ちょっと勢い込んでいたのだけれど、結局は昼近くまで患者さんは来なかった。もっとも、昼過ぎに来た患者さんは透析中の方で、結局自分で受け持つことにしたのだけれど。

夜は当直。外来は何だか久しぶり。
あまり混まなくて、何より。

四日

多忙の日。
午前中は往診──しかし、臨時往診が二件入って、そっちを先に回っていたら定期の往診患者さんを回り始めたのが11時というていたらく。いや、治療方針とかの問題を抱えている患者さんところで時間使いすぎたんですけど。

必死の思いで往診を終わってカンファレンスに臨み、終わりかけたところで救急外来から電話。尿所見に異常のない腎不全状態の患者がいるとのこと。
まだ若いし基礎に病気もなさそうなのだけれども、強い腹痛と腎不全を認める。あっちこっち相談をかけても診断の手がかりも掴めない。こういうケースは研修医に受け持ってもらって多角的に考えてもらったらどうだろうなんて考えていたら「ちょっとヘビーすぎる」との判断で結局自分で受け持つ。──こまった。

五日

昨日の患者さんは改善傾向。──それはなにより、なのだけれど。
透析当番して患者さん診てスライド作って。そういえば今日は土曜日だったっけ状態。スライドはなかなかうまくできないし。

六日

資料集めに慶応大学へ出向く。目当ては信濃町の医学図書館。
ここは名前を書くだけで内部に入れてくれて、資料も見放題で有料コピーサービスもあるという在野の医師にとってはまことにありがたい存在。古い雑誌の記事も含めて調べて歩く。
少しは内容が充実した、かな?

たとえば「津軽」みたいな歌でしょうかねぇ>odorikoさん。主に歌詞からの連想ですが。
さだまさしの歌って情景描写が多いけれど、大体誰かしら人が出てくるんですよね。個人的な印象としては、「津軽」はあんまり人の気配のしない歌だった気がします。

七日

なんか今日は外来多かったかも....。
いつも通りにばたついた上に、さらに発表の準備もじわじわかぶってくる。進まないしねぇ....。

八日

朝礼で配られた日報に目を通していると、"今日の当直"の欄に自分の名前が書いてある.....あれ?明日じゃなかったっけ?(爆死)。
手帳に転記ミスをやらかしたようで、早めに気づいて何より。

でもこの夜の当直はなかなかハードであった....。

九日

明けなのに、帰ってきてから"Quick Japan"のライトノベル特集を読みふける。
ライトノベル好きなのは、やっぱりそこになんらか「自分が共感できる登場人物」がいるからなのかな、と思っている。複数のコメンテーターが触れている作家──たとえば乙一さんや小川一水さん、秋山瑞人さん、上遠野浩平さんなど──は、わたし自身も好きな作家さんが多いし、知らなかった他の作品も読んでみたいと思う。

十日

患者さんは比較的落ち着いていて、その隙に学会発表のスライド作り。
最近ではPowerPointのファイルをそのまま映像にできるところが多くなってきていて、逆に発表当日朝まで変更・修正が可能という状況。それがよいことなのかどうかはなんともいえないけれど...。

十一日

往診してカンファレンスして、発表の最後の詰めをして。詰め切れないところが山ほどあるのだがそれは目をつぶることにして。
最後に退院患者さんが出るのでサマリーを記載して、♪いつか深夜の出勤時間〜♪。こんなんで明日うまくいくのかなぁ....。

十二日

発表当日。
朝から着慣れないスーツを着て電車に乗る。途中で(Suicaとクレジットカードは持ってきていたが)財布を忘れたことに気づいたがまぁ何とかなるだろうと、駅で降りてタクシーに乗る。
ところが運ちゃんがあまり慣れてないみたいで、車載のクレジットカード精算機の使い方がわからず。困った揚げ句に「じゃあ、いいですよ」。
初乗り分だけだったということはあっただろうけれど、儲けた。
発表は、いちばん突っ込まれたくなかった問題点はうまいことつつかれず、無難な受け答えで終了することができた。やれやれとひといき。
もっとも、この内容を持ってもう一度別な場所で発表するんだよなぁ.....そっちむけにもう少し改善しないといけないかなぁ.....。

同行してくださった指導の先生と蕎麦を食べて、その後病院へ戻ってくる。ふらふらしていたら肝膿瘍の患者さんに血液浄化が必要という話が聞こえてきて、カテーテル入れたりしていると気がつけば夜になっていた.....。

そのくせ、帰ってきてから「ディスコミュニケーション」(植芝理一/アフタヌーンKC)とか読んでるわたしってば。

十三日

反動みたいにしてだらつく。
ま、たまにはいいかということでいかがでしょう<よくない

「ささら さや」(加納朋子/幻冬舎文庫)読了。ファンタジーでミステリでラヴストーリーで。読後感がとてもいい。サヤの人のよさに苦笑しながら、読み終えた。
あとは今日のお買い物としてはペンライトがあるだろうか。形状を変えるとベッドライトにも使えるという代物。普段の持ち歩き用にしようかと。

十四日

外来。ま、普段通りでしょうか。ぼちぼち「お馴染みさん」も増えてきたから、大変といえば大変だけれど一人当たりの時間は減ってきてはいる。
そろそろ学会行く準備もしないといけないんだよねぇといいつつ、神戸の宿探しなど。──見つからないし。やっぱり大きな学会だから、近隣のホテルが埋まっちゃうのかな。
もっとも、旅行会社その他が押さえてしまうから、という要素はありそうだけれども。

十五日

午後の救急は最後になって二人ばかり来る。──えーと、高齢者のADL低下ですか。治らないものまで含めていくつもの原因が考えつくのだけれども、いちばんありそうなのがほっとかれたための廃用症候群ってのはねぇ。
高齢者は確かに病気をしやすいのだけれど、治るものも治らないものも含めて、病気のために能力が落ちていることがほとんど、と思う。治らない病気と診断していて実は治る病気、というのが一等罪深いとおもうのだけれど、また診断しにくいのが高齢者の病気であったりもする。

十六日

週末はお出かけの予定。透析医学会ということで、腎内科グループはかなり留守にする予定。──なのに患者さんは変わらず来院される。(しくしく) 今日は透析関係の入院が多数。
当院透析室は午前午後と一日二回くらいの透析をこなせるが、そこまでやると日勤帯に仕事が終わらず看護師さんたちは残業になってしまうことが多い。んで、今週はどうやら週末まで残業確定、とか。
退院がでると入院がでるような状態だからねぇ....。病院が閑古鳥なくような平和な世の中であって欲しいのだが。

十七日

ボスの誕生日という話を聞きつけて、ケーキを買ってきた人がおり。透析室の片隅の休憩室で、こっそりとケーキの会。

夜は当直。今夜の内科当直は四年目医師三人。──いいのかっ?不安ではあった。
幸いにもそれほど混雑せず。けれども精神科がらみの患者さんが何人か。薬の過量服用とかおそらくはヒステリー的な腹痛とか。

十八日

往診してから午後はカンファレンスなしで患者さん対応をし。今年入ってから初めてかもしれない(爆)定時上がり。──あれ?定時って何時だったかな?上がったのは六時だったんだが、五時過ぎだったか?(炸裂)

夜から大阪へ。移動の車中で「サラマンダー殲滅(上)」(梶尾真治/ソノラマ文庫NEXT)を読む。おもしろい。空間溶融とか精神工学とかいうコトバにわくわくし、主人公の行く先に待ちかまえる大いなる危機を予想し。
でも、惑星メフィスには行きたくないなぁ....。

十九日

朝から日本透析医学会学術集会・総会。──やぁ、大掛かりですなぁ。これまで出たことがあるのが小さな学会だけだったからよけいに。
ランチョンセミナー(lunchon seminor)とかいってタダメシ喰えるし(実際に費用を負担しているのはおそらく薬や医療機材のメーカーなのだが──)。
主には急性腎不全とかブラッドアクセスとかのセッションを聞く。(一部居眠り付き(^^;;;;) ちょっとずつ、参考になる話を仕入れておく。

午後のセッションが始まる前に「サラマンダー殲滅(下)」(梶尾真治/ソノラマ文庫NEXT)。神話の中の火龍の名を冠せられた敵を滅ぼすための奇想兵器、そしてそれを操る人々の死を覚悟した闘い。最後の闘いそのものより、そこに至るまでの道筋とその道を築くために斃れた幾多の人々の物語が、スケール大きく描かれる。「おもいで」を代償に捧げながら戦い続ける主人公達の姿が、とても印象的。

二十日

今日も透析医学会へ。急性血液浄化のセッションがおもしろかった、かな。
午後のセッションはパスして相棒と少し歩く。

神戸往復の車中で「ハイウイング・ストロール」(小川一水/ソノラマ文庫)読了。冒険SF、と呼ぶべきか。読みながらこちらも気持ち良く空を駆けていけるような、ドライブ感のあるストーリーと幕切れ。
重素雲や浮獣の設定は、どこか「ナウシカ」の腐海や蟲たちの設定に似たものを感じるけれど、彼らの作品中での位置づけはまただいぶ異なる気がした。

帰りの新幹線の中では「機械仕掛けの蛇奇使い」(上遠野浩平/電撃文庫)読了。いつもの通りに主人公──たぶん──は脇役に振り回されたり訳の判らないことを言われて悩んだりしてるし、やろうと狙ったことはうまく行かなかったりずらされたりしてて。それでも、少しずつ進んでいくようなそんなお話。
裏表紙の折り返しのところで「この作品は以前に別バージョンを発表しましたが....」とあったのだけれど。なんだろうか。「冥王と獣のダンス」だろうか、それとも「虚空牙」のシリーズだろうか。よく判らない。

二十一日

週末の間についこないだ退院した人が戻ってきてしまったらしい。うぐぅ。
週末で結構退院したのだけれど、その分はあっさり埋まってしまうのだろう、きっと。

二十二日

腎不全精査、という触れ込みで入院一名。
もとは救急外来にかかって、今後もこちらで診て欲しいという希望があったという経緯で詳細が不明の方。ちょっと話を聞いてみただけでぼろぼろ問題点が見えてくる。一番問題なのは患者さんの病識かもしれないが。
時々いるのだけれど、一番重要なことではなくどちらかといえば脇筋のことばかり気になってしまう人がいる。たとえば食事の指導でカロリー制限が大事と繰り返しているときに「赤ワインは体にいいってみ○もんたさんが言ってたからたくさん飲んでいいわよね」と言い出す人がいる。──だから、量次第なんだってば。自己流というかご都合主義というか。
初日のスクリーニングですでに問題点噴出。困ったもんだ。

二十三日

本日当直。──なぜか腎グループのDrばかり。
今夜の困った患者さんは昨日から5回目くらいの救急車要請の患者さん。酒に酔った状態で来院してふらつくとか食欲がないとか。血液検査では何にも異常はないし、ちょこちょこと食べてもいるらしいし酒が少し抜けると自分で立って歩ける。
救急車も運ぶのだけが仕事だから、呼ばれたら行かないといけないし病院連れていかないと仕事が終わらない。(救急隊は運ぶのが仕事で、診断をしたりするのは通常業務の範疇に入っていない) かといって来てもねぇ....。
ときどき病院依存とでも呼ぶべき患者さんはいて、何かといっては来院し入院させてくれとかいろいろ注文が多い。患者さんの希望をかなえるばかりが病院の仕事ではないけれど、なんとか患者さんと折り合っていかないといけない。医学の範囲を超えるけれども、医療の範囲の中にはそういった問題も含まれていると思う。

二十四日

いま患者さんが少し少なめで、木曜日はDutyも少ないし少し早上がり。──で午後八時ってあたりが間隔狂いまくりかも。

長期入院の患者さんの退院先決定が進まない。病状は落ち着いているのだけれど、介護の手が足りない。必要に応じて給付されるような介護制度であればいいのだけれども....。
時に参院選公示日。年金と海外自衛隊派遣が争点、とか。年金と生活保護を併給しているような家庭があるというような年金ってやっぱり少なすぎだよなぁ...。しかもその現状からさらに給付を減らす案しか出てこない政府ってのはどうよ。
わたしの投票基準はその辺においているつもり。もう少しマシな案が出せるところに投票する。

二十五日

夜、研修に来て終了する先生とこれから長期の出向研修に出る先生の壮行会。
院内の労働力、って面から言えば出向研修に出るのはキツいことではあるのだけれど、そうやってより進んだ医療を学んでもって帰ってきてもらわないと医療水準が上がっていかない。
医師同士・病院同士の人事交流は、たぶん一般の人が思っている以上に活発ではある。ただ、交流してさえいればいいわけではないのが問題なんだろうか。

二十六日

土曜日の透析当番。
穿刺をしないといけない人が多く。動脈穿刺・大腿静脈穿刺など。時間がかかること....。指示を書いてすべて穿刺が終わったら十一時を回っていた....。

二十七日

地域の腎疾患研究会。先日の発表を使い回し。
ところが、到着してかばんを開けてみるとスライド(powerpointのファイル)がない。CD-Rを家に置き忘れてきたことに気づいて真っ青。幸い原本は医局にあったので、医局の先生の手を煩わせてメールで送ってもらって事無きを得る。
いや、焦った。

二十八日

最近新入院も少なくて落ち着き気味。このすきにちょっと長期的な課題にも取り組まないと....なんて。
腎臓の勉強に内科認定医など、いくらでもやることはあるのだけれど。

最近は認定医や専門医が何段階にもなっていることが多く。たとえば糖尿病専門医になるにはまず内科認定医になってから何年も経験を積まないといけないことになっている。そういった資格を得るためにはひとつずつキャリアアップしていかないといけないから、大変にはなってきている。

二十九日

本日当直の日。副直の先生もいるということで比較的楽に。
本日の入院は肺炎二人。どちらも結核が否定できないということでかなり慎重になる。空気感染のために、下手に隔離せず入院させると周囲の患者さんに移してしまう可能性が出てくる。結果としては排菌もなく大丈夫だろうということだったのだけれど。

三十日

朝起きた辺りから体調不良。発熱少年状態。じわじわ悪くなってきて、昼前には動くのがやっと。しょーがないので最低限の仕事だけして寝ていた。
こーゆー時に限って外泊に出ている患者さんが帰ってこないし。ようやく連絡が来て理由を聞いたら「体調が悪いから」あのなあと思ってみたりする。でも、体調が悪いと病院に来ずに寝ている人は結構いるのだけれども.....。
なんとか夕方帰ると、ばったり寝ついてしまった。  


Written by Genesis
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