歳時記:伍月の項

一日

この日は入院受け持ちなし。
そうすっと非常にさくさくと仕事が終わってしまう。午後にはサマリー書いたりなんだりしていた。
健康保険への請求の書類なども書かないといけないのだが、こちらの病院の方がやることが多くて大変。

「ブラックジャックによろしく 5」読了。小児科医療篇と外科篇(がん医療篇)。
読んでいてふとおもったんですけど、主人公斉藤英一郎って、実はあんまりきちっとした理論的裏付けにもとづいた理想を掲げている訳じゃないんですね。ある意味では素人臭く、「こんなんでいいのかなぁ」って疑問を抱いていて、ただその素朴な疑問に頑固にこだわり続けているからまわりとトラブっていくような気がする。
大学の医局にいないわたしなどからみると、「そこまで思うんならさっさと大学をやめちゃえばいいじゃん」と思うこともなきにしもあらず....。そうしちゃうと話にならないのかもしれないけど。
この回でけっこう重いのは小児科医の先生の言葉。「目の前の患者を黙々と診ていく医師にならないと、患者を殺します。」わたしは、自分の限界を知らないとだめだというふうにとった。医師が診られる範囲には限界があって、それを越える分を努力や根性ややる気でカバーすることはできないと思わないと、安全な医療は出来ないと思う。
もっとも、限界まで働かせる環境を放置していいということではないと思うのだけれど。

二日

午前中往診。みなさん落ち着いていて、早めに帰ってこれた。

戻ってくると事務の人が「戻って早々悪いんですが....」と入院患者さんの話を持ってくる。胃潰瘍からの出血。止血がちゃんとされているようなので多少安心だけれど、連休前にはちょっと心配な患者さん。

電車の車内で「樹上のゆりかご」(荻原規子/理論社)読了。再読だけれど、読み進めながら「顔のないもの」についてぼーっと考えられるようなそんな気分になる。自分自身は鳴海くんや加藤くんのように高校時代には振る舞っていただけに。

三日

連休初日。自宅の片付けをして、注文していた冷蔵庫を据え付ける。電器屋が「三時には行きます」といっていたのがあっさり四時になり。据え付けた後買い物などして帰ってから、位置の調整をした。

夜は「機動警察パトレイバー2 the Movie」観賞。ほんとは「WXIII」観賞の計画だったのだがレンタルビデオ屋ですべて貸し出し中だったため。(^^;
特車二課の活躍はほとんどラストだけだし、話のメインは後藤隊長と南雲隊長で、シリアスな展開だからけして派手な映画じゃないけど、見せる。見ながら相方が"これって「9.11」の前に作られた映画だよね?"と確認したくらい、"現在"を映している感じがした。

四日

朝から日直・残り番。
午前中は病棟で、入院患者の対応。昼を食べるか食べないかのところで午後になって外来担当。そのままずっと外来を見続けて、午後十時半にようやく解放。
軽症から重症までなんでもあり、中にはなんちゃって重症とかも混じっているというのはかなりしんどかった。帰ったらもう寝る、という感じ。

五日

だらだら寝る。起きた後レンタルビデオを返して古本屋に本を売って研修先の方に戻ってきて、気がつくと一日が終わっていた。(死)
電車内で「強救戦艦メデューシン(下)」を読んだくらいか>生産的なこと

六日

連休明け。どうやら患者さんは大きな問題もなかったようで。
でも、浮腫精査の患者さんがいまひとつ元気がない。そろそろ退院かな〜と思っているくらいなのだが。体調不良によるものか、精神的なものか。どちらにしても元気は出ないから難しい。

七日

Sioさんのところで見つけた元素占い

原子番号:62
元素記号:Sm
元素名:サマリウム Samarium
性格診断

燃えやすさ
 普段はクールですが、内には熱いものを秘めていて、時折情熱的な側面も見せます。

行動
 あるときは積極的、またある時は落ちついて、と柔軟性を持って行動します。

影響
 流行に敏感で、多くの情報を取り入れますが、人から影響を受けやすい側面もあります。

人間関係
 自分と似ている人や変わり者との付き合いが多いようです。

存在
 あなたにしかできないことがあります。そのため、皆から重宝される存在です。

集団行動では
 皆から信頼され、カリスマのあるリーダー的存在です。

他人との接し方
 一見冷たく見られますが、本当はやさしいところがあります。

あなたのラッキーカラーは
ワインレッド

あなたと相性のいい異性は
[ 元素記号 ( 元素名, 原子番号 ) ]
O ( 酸素, 8 ),Al ( アルミニウム, 13 ),Co ( コバルト, 27 ),Ho ( ホルミウム, 67 ),Ag ( 銀, 47 )

‥‥うーむ、あんまり柔軟性はないような。変わり者とのつきあいもないような。(笑)
ま、しょせん占いだしね。

八日

受け持ち増えず。入院患者も落ち着いててのんびり。よきことかな?

午後は医局会議。その後ケースカンファレンス。

九日

午前中往診. 五軒のみということでのんびりと回る。患者さんも落ち着いていてなにより。

戻りながら「吹け、南の風3」(秋山完/ソノラマ文庫)を読む。これも現代に引きつけて読みたくなる作品だな。

十日

予約入院の人を一人受け持つ....はずが、待てど暮せどやってこない。昼過ぎに連絡があってこれから行くと。別に入院拒否ということではなかったよう。忘れてたのかなぁ。

夜から当直。今日は見習い、ということで。
ちょっと時間が空いたときにもともと居るところの病院の様子についてや、研修先の病院と比較しての話になる。病院規模も地域での位置づけも違う(だから研修にきた)のだけれど、比較することで自分の病院の特色が見えてくる気がする。
六月には研修修了のまとめの会が行われる予定なのだが、そこでまとめのプレゼンテーションをしなくてはならない。プレゼンのなかで病院の教育機能とか、自分が医師研修について思うことを述べたいなぁと思ったりしているので、構想だけは膨らむ一方。きちんと勉強してプレゼンしないとなぁ。

十一日

結局あまり呼ばれずに穏やかな夜を過ごす。
終わってから久しぶりに秋葉原へ出る。書泉ブックタワーをまわり、「新時空のクロスロード2 黄色い瞳の男の子」(鷹見一幸/電撃文庫)「新現実」(東浩紀・大塚英志編集/角川書店)を購入した。そのあとコンピューター用品店を少し回ったけれど、あまり欲しいものもないので早々に退散。

地元に戻ってから「医学教育プログラム開発」なる書籍を少し腰を据えて読む。どのように成人教育の計画を立てて実行するか、というのは実は日ごろ省みられていない分野なのではないかと思ったりしていて、実際の教育に少しでも生かせれば、と思いつつ読んでいく。
内容的にはめちゃ革新的、とは思わないけれど、理論化された「教育プログラムの立て方」を読んでいくと、頭が整理されるのを感じる。

十二日

七日の記述についてSioさんの掲示板で苦情(笑)がでる。というわけで、「変わり者とのおつきあいも多少ある」との表現に改めさせていただきましょうか。(^^;
友達選びは難しいですね(笑)

今日から一年目の医師たちが病棟で仕事を始める。先輩としては温かく後ろで見守ろうと思っていたりする。

十三日

最近入院も少なく、受け持ちも増えないのでのんびり。午前中にざっと患者さんを診察し、指示を出してしまうとあとはまったりできる。
午後はカンファレンス。メインは一年目、ということで、わたしの患者については新患を中心にさらっと。
ひとり悩んでいるのは肺がん疑いの患者。確定診断のためには気管支内視鏡が一番なのだが、確定したところで治療は対症療法しかない。そこまでして診断確定する必要があるか、という疑問はある。

十四日

午前で患者さんの回診を終えて、指示を出す。
午後一人入院。脳梗塞疑いと進行した慢性腎不全。話を聞いていくとすでに尿毒症症状があり、透析をすることでだいぶ回復しそうなのだが、本人曰く透析は嫌だとのこと。
厳格な水分制限や食事制限を行ってようやく維持できるのが人工透析だから、そういう気持ちはわからないでもない。どういうことが今後起こるかを説明した後で、透析はしない方針とした。
この患者さんの息子さんが泌尿器科医とのこと。病状説明を求められたら断る訳には行かない。──年長の医師を相手に病状説明するなんて、ある意味一介の研修医には手に余るストレスフルな状況だと思ったりした。幸い優しい方でほっとしたけれど。

十五日

午後、ペースメーカーの入れ換え術。
患者さんは90過ぎだけれどもそこそこ元気な人。「先生は前入れたときに『これで一生大丈夫だからね』とおっしゃっていたのに」と言われるので「きっと予想以上に長生きしたんだよ」と応じておいたのだが。
夜は医局会議と研修委員会。一月もうたつということで、軽くまとめをした。

十六日

午前中往診。人数が少ないと思ってのんびりお話をする。──そうしたら普通の時間までかかった。ま、いいか。

研修先へ戻る電車の車内で「アウトニア王国再興録4 でたまか驚天動地篇」(鷹見一幸/スニーカー文庫)読了。昨日はやはり電車の車内で「新現実」を読了したのだが。
やっぱり本はいいね、と思ったりする。最近移動時間が増えたので、その間を読書時間にあてられることが非常に嬉しい。

十七日

午後、交流のある病院同士での交流会。──患者さんと一件面談をして、それから行ったらえらく遅くなってしまった。
事実上二次会からの参加に近くなってしまったのだが、比較的軽いのりの集まりだったせいか、お酒も入ったところで盛り上がったテーマは「遠距離」。どのくらい離れたら遠距離か、の定義に始まり続けるために何が必要かとかいろいろ。初めて会った人も含めて楽しく盛り上がれたので善きことかな。

十八日

のんびり起きて、相方と池袋へ出る。目当てはサンシャインプラネタリウムナンジャタウン。わたし的にはプラネタリウムが見られればよし、だったのだけれど、どうせなら少し遊んでいこうとテーマパークに寄ってみた。
どちらもわりと楽しく遊べて吉。プラネタリウムは6/1閉館とのことだが、できればまた来てみたいものだと思う。

夜から相方お勧めの「八雲立つ」(樹なつみ/白泉社)にハマる。つづきが読みたい....。

十九日

夜、青年医師で宴会。
帰り際にふと今週木曜日がカンファレンスでのプレゼンテーションであったことを思い出す。うぐぅ。
あさっては当直だし、明日でやらんといかんのか....。

二十日

メーヴェ模型のテスト飛行ねぇ....。
ナウシカの映画を見た後で、自由に大空を飛び回るメーヴェ(Möweとつづると原語になるらしい)にものすごく憧れたけれど、現実に作ろうとするひとはすごいと思う。
いつか、ひとが自家用飛行機で飛び回るような時代が来るのだろうか。(わ、なんか「イカロスの誕生日」みたいな世界だな。)

二十一日

一人受け持ち増加。腎不全精査。──やっぱりBiopsyしたほうがいいかなぁ。

夜は当直。ぼつ、ぼつ、と呼ばれて一つずつこなしていく感じ。
前回もあったけれど今回もじんましんの人が来る。多いのだろうか?

二十二日

当直は夜半過ぎからほとんど呼ばれず。──朝方目を覚まして心配になったのはお約束。

夕方よりカンファレンス。慢性膵炎の症例について。あんまり準備がきちんと出来なかったけれど、なんとか無難に終わる。

二十三日

金曜日定例の往診。この日は看護婦さんの方が早めに終わって欲しいとのことで、人数も少し多めだったのでちょっと早めに切り上げる感じで進めたら、先週とおんなじくらいの時間。
なんでだろうね。

行きがけの道では「琉伽のいた夏3」(外薗昌也)を読み、「ネバーランド」(恩田陸)を読了。
恩田陸の学園ものの独特の雰囲気は好き。

二十四日

この日は休業日。出勤する相方を見送った後、二度寝。久々の幸せ。
起きると昼近くて、あわててコインランドリーで洗濯してから地元へ戻った。
帰る途中の読書は「"大リーガー医"に学ぶ」(松村理司/医学書院)。以前舞鶴には実習に行ったこともあるので、興味深く読んでいく。読みごたえもあって続きは後日。

二十五日

朝から奥多摩方面へドライブ。初めはおいらん淵を目指したのだけれど、遠いということで日和り(死)、鳩ノ巣渓谷へ。鳩ノ巣駅前の無料駐車場に車を止めて、まずはそばを食べて腹ごしらえ。
渓谷に降りていくと、鳩ノ巣小橋というつり橋が目に入る。下の多摩川はけっこう流れも急で、流されるので遊泳禁止の看板も嘘ではなさそう。水も綺麗。
もともと歩くつもりでなく来ているのでちょこっと歩いてから水神様の方へ行き、双竜の滝を眺めてから喫茶店へ。名前忘れてしまったけれど、店先の犬小屋には「馬力:ワン馬力」の文字が。(^^;
お茶飲んでケーキ食べて帰ってきた。

二十六日

この日は自宅を出発して研修先へ。片道一時間半。遠い....。(ラッシュを耐えるサラリーマン諸氏から非難ごうごうな音)

「大リーガー医に学ぶ」を読了。舞鶴市民病院での外国人医師招聘の経験をまとめたもの。外国人医師から学んだことが縷々まとめられ、最後に著者の考えが述べられている。
外国人を招けばいいというものではないし、そもそもそこまでのことが出来ない病院の方が多いけれど、そこで教えられた身体診察・医学知識・思考法を感じることくらいは本を読むことで感じることが出来たと思う。

夜は相方と一緒にちょっと張り込んで夕食。フランス家庭料理、といった感じか。

二十七日

午前中、「SARSかもしれない」という患者の診察をする羽目に。──結果から言えば、呼吸器症状はなく、感染流行地域への渡航もない。発熱があるけれど、それはさまざまな病気で起こりえる。
じゃあなぜ、といえば、勤務先に海外渡航をする人が多く外国人も出入りするからとの由。それにしても、別に感染地域に渡航した人がいるわけでもない。果ては「そういえば先日アジア系の人に道を聞かれた」‥‥風評被害とか偏見とかも激しく流行している気が。

二十八日

入院患者さんに腎生検を施行。太めの針を腎臓に刺して組織の一部を採取する。
とーぜん出血の危険はあるのだが、今回は普段より多めに出血して一瞬肝を冷やす。危ないところだった....。

二十九日

夜、地元へ帰りしなに「アイオーン」(高野史緒/早川書店)を読む。とーぜん医者的には同業者の存在が気になるところ。続きが楽しみ。

三十一日

多忙な日。
朝一で受け持った入院患者は痴呆もあって症状がとりにくいのだが、食欲不振に加えて腹痛もありそうで、念のため、といって緊急CTとか撮ったりしていた。症状が訴えられない場合にはどうしても検査に頼らざるを得なかったりする。
その後地元に戻って当直。引き継ぎの時点ですでに四人入院準備中ということでげんなりし、そうこうしているうちに呼吸状態の悪い方が救急搬送されてきて挿管・人工呼吸器管理として集中治療室へ。
結局昼食が夕方になり、夕食が十時過ぎになるというような日になった。(食べられるだけマシという説も...。)  


Written by Genesis
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