歳時記:師走の項

一日

ちょっと朝のんびりして「まろうどエマノン」(梶尾真治/デュアル文庫)読了。雰囲気に酔いながら読了した。
その後、病院へ行ってスライド作りなど。過去に報告された症例報告の中で、自分の例と似たようなものがあるかどうかをチェックしていく。──もちろんコンピューターを使用はするが。医学中央雑誌検索というシステムがあるので、それに病名をぶち込んで、引っ掛かってきたものをチェックしていく。最終的には現物を読んでいかないと内容の判別は出来ないのだけれど。
それで、引っ掛かってきた報告の中に当院で購読していない雑誌に載ったものがあるということで、思い立って慶應大学病院の図書館へ。受付で名前を書くだけで(医療従事者なら)入れるということでなかなか使いでがありそう。必要な文献を急いで探して、複写をお願いして。収穫に満足しつつ帰った。(ここで既に夕方になっている)
帰ってからスライド作りに再度とりかかり、終わってから病棟まで顔を出して帰った。帰宅は11時過ぎ。もちろんすべてが自主出勤。

慶應行きの往復の間に「ふたつのスピカ3」(柳沼行/MFコミックス)と、「虹北恭助の新冒険」(はやみねかおる/講談社ノベルス)を読了。
こういうゆったりした作品はいい息抜きになる。特に「虹北恭助」にでてくる映画キチガイの「若旦那」なんかがいい味を出している。

二日

三重へ出張。行き帰りの道中で「ハッピー・バースデー」(新井素子/角川書店)を読了。久しぶりの新刊を堪能した。感想をLXで書いたりもしていたのであとで公表するつもり。
ほかに「虹北恭助の新新冒険」(はやみねかおる/講談社ノベルス)を読了。

出張の目的は研修用の各種シミュレーターの見学。かなりリアルな人体模型やら、心電図も出る人形やら、いろいろなメカを見学してきた。

三日

帰ってきたところでひとり受け持ちが増える。肝炎なのだろうか。いまのところ原因不明。精査加療目的、ということなのだが、まずは診断だな....。

六日

──この数日間、かなりハード。
調べなきゃいけないことが多かったということと、発表を控えて準備が大変だったということと。患者さんも調子が良くない人がいたし。
夜に再度予演会で発表し、「だいぶよくなりましたね」とお褒めなどいただいて少し幸せになった。これで発表の方はめどがついたな。

七日

午前中救急外来。あまり呼ばれずに、自分の仕事をしていた。

夜、一年目の先生方の研修総括会議(の二次会)。何をしてたって、喰って飲んでいたのだが。
今年から研修のスタイルを変更しているのだけれども、慣れない中でよく頑張ってくれたと思う。直接指導にあたった訳ではないけれど、成長してきている後輩を頼もしく思う。

八日

発表。(当院のN先生曰く「お稽古」だが)ネタ的にややマイナーだったせいか、あまり突っ込んだ質問も出ずに終了。たかだか十分程度の発表だったけれど、やっぱり疲れた。
その後はコミケットの拡大準備集会。猿丸さんに久方ぶりにお会いしたりして。カタログを持って帰ってきたのだが、約一年ぶりのカタログチェックをかける時間はどこにあるのだろうと自問してみたりする。

行き帰りで「冬になる前の雨」(矢崎存美/光文社文庫)読了。読み終えてからぞくっとするような、そういう怖さを備えた作品が多い。いちばん気に入ったのはやはり表題作かな。詩的なわりと美しいシーンがありながら、追いつめられた気持ちが描かれていて。

九日

午前の救急はあまり呼ばれず。ベッドがほとんどなく、入院が出来ないことと無関係ではないだろう。──病床が過剰とか不足とかいうのは需給関係を無視しては話が進まないと思うのだけれど、需要と供給の面からの議論は聞かれない。何故だろう?

夜は当直。──ひとり急変があって、主治医の先生を呼ぶ。挿管してレスピレーターをつけて。──予後は、どうだろうか。

十日

昼過ぎ、調子の悪かった患者さんが急変する。呼吸が促迫し、血圧も低下。集中治療室へあげて、人工透析を開始。それでも一向によくならず。
打てる手を打って、じっと見つめていく。それでも、良くなる兆しは見えない。夜、呼吸も弱くなってきたため人工呼吸を始める。そのまま、経過を見届けるために泊まることにした。

十一日

朝方、最期を見届ける。
入ったときから厳しい状況ではあったが、もう少し何か手だてがあったのではないかと考えてしまう。どのような手がある、と具体的に思いつく訳ではないのだけれど、もう少し何かの手だてがあったのではないか、他の先生が診ていたらもしかしたら、という思いは消えることはないと思う。

今週から一年目が同じく消化器での研修を始めている。午後は回診ということで、プレゼンテーションがあったのだけれど、自分より上手いプレゼンテーションで、ちょっと劣等感。

十四日

朝目を覚ますと九時。歯医者の予約にちょっと遅れてしまった。
歯の治療の後で軽く病棟を回って、その後青年医師の発表会。先日の発表のネタを使い回す。ま、けして珍しいことではないのだけれど。

比較的早く終わったので、古本屋に行ってしばし立ち読みなど楽しむ。(かなり久しぶりかも....)

十五日

夜から当直ということで午後から病院へ行こうかと思っていたのだけれど、そのままうだうだしてしまって、相方の蔵書から「ALEXANDRITE」(成田美名子/花とゆめコミックス)など引っ張り出して読み出してしまう。
読み終わらないのでそのまま残りを抱えて病院へ。当直の合間に読み切ってしまった。

十六日

当直は入院も多くて結構ハード。その中からひとり受け持ち。悪性腫瘍(おそらく末期)ということで、あまり出来ることは多くないだろうけれど。出来るだけのことをしてあげたい。

診断がつかなくて悩んでいた人の病態に糸口が。もしかしたら診断がつくかもしれない。

夜、帰ってきてリンク集のメンテナンスなど始めて、ときめきくらぶを久しぶりに再訪すると「少女漫画家占い」なるコンテンツを発見する。好きな少女漫画家さんを三人入力すると、あなたにお勧めの漫画家さんを占います(^^;)というものだけれど、わたしの場合上位に上がったのは「桑田乃梨子・佐々木倫子・萩尾望都」といった面々。うーん「動物のお医者さん」も「ポーの一族」も好きだけどな。
とりあえず、根拠としているリサーチの内容が知りたくなったりした。

十七日

午前、往診の看護婦さんから電話。先週の往診で採血をしたら強い貧血の人がいたとのこと。あわてて連絡をとって救急外来へきてもらい、検査をして、即日入院。ご本人はいたってお元気だったので迷ったのだが、在宅往診で診るにはちょっと貧血が強すぎると診た。
医者にかかっていても、別な病気を見落としていることは少なくない。

十八日

午後回診。患者も少なくなっているのでさくっと終わり、結構早めに帰れた。(それでも八時半だが)
夜は相方と外食。久しぶりでお酒を飲んだ。

十九日

医者の仕事の中には、できる限りの治療をしてその人の生を充実させるという仕事の他に、人の死をできるだけ本人や家族も納得のいく形で迎えられるようにするというような──引導を渡す、という仕事も含まれている気がする。少々傲慢な言い方になるかもしれないが。
先日入った患者さんの家族に病状説明。予後の悪いことを伝え、急変時の対応について訪ねたら、本人がしたためた手紙があると差し出された。曰く、もしものときには自然の生命力を支えるだけの対応にして欲しいとのこと。その気持ちに沿うような対応をすることを約束した。
最期の時はだれにでも来るけれども、その時をどのように迎えるかと考えておくことは、必要なことなのだろうと改めて強く感じた。

二十日

夜、医局の忘年会。飲んで食ってビンゴゲームなんぞやったりして。
二次会はカラオケ。「宇宙戦艦ヤマト」をささきいさおばりの迫力で歌いこなすDrがいたりして、大いに盛り上がった。
わたし的にはJoySoundにZABADAKの「Easy going」や「休まない翼」が入っていたのを発見したのが収穫だった。

二十二日

相方と買い物に出て、その後結婚式の二次会に参加というプラン。買い物の方ではカバンを買ったりメガネを買ったり。そのあとさだまさしのギター譜(そのうち歌うオフ会で使えたらいいななどと企んでいる)やら「ADVANTAGE」のCDやらを買い込む。結構散財したなぁ....。

その後某人の結婚式の二次会。何でも一次会は帝国ホテルだったそうで、はー豪華だねぇと感心してみたり。新郎新婦とは@niftyのFCASEの学生部屋出身者同士ということで、久しぶりにそちら系の人々ともお会いした。
終わってから帝国ホテルのスイートルームに場所を移して、FCASE学生部屋OB会状態でしばし語る。某大学で研究員をしている人やら某大学病院救急部所属医局員やら看護職やらと所属もいろいろで、その分話題も多岐にわたる。そーいえば以前「普通の医者になっちゃだめだー!」と強調されたこともあったなあなどと懐かしい話題も出る。詳細はもちろんこんなところに書ける内容ではないので割愛する。
ルームサービスをとってみるとワゴンの上に乗せて恭しく運んできてくれたのでさすがは帝国ホテルと感心した。

二十三日

夜から当直。
連休の間に入院が大量に入っていて、細かなトラブルがいろいろと。呼吸状態が悪化するようなのはのんびり待たせるわけには行かないのだけれど、そういう待たせられない種類のトラブルがあちこちで起こるのはかなりストレスフル。疲れた。

二十四日

連休中に入った発熱・肝障害の人をひとり持つ。指導医曰く「年明けまでに退院させればいいんだよ」──そういわれましても。

午後は外来。風邪の人が多い。あんまり多いので、終わってから「新世紀のかぜ診療」(JIM)なんて特集号を医局で見つけて読んだりしていた。

二十五日

夕方、研修終了を前にして総括。消化器科は約三ヶ月研修していたのだけれど、正直再履修かなぁという感じ。やり残したことがいろいろあるなと思う。
指導医からは患者さんの把握に弱さがあるとのお言葉。そこがしっかりすれば後はいいと言われたけれど、さて、どのように鍛えていこうか。

「強救戦艦メデューシン」(小川一水ソノラマ文庫)読了。戦場でできる医療なんて、これほどにも無力だ、と思う。

二十六日

のんびりした一日。サマリを書いたりなんだりがメイン。
夜はすこうし早く帰ってnamazuをいじる。以前バージョンアップしたあとろくに設定もしていなかったのだが、インデックス作成の時に文字コードの判定を誤るらしく日本語の文章の検索が出来ない状態になっていたため修正。どの辺りを直せばよさそうかのめどをたてた。

二十七日

午前中往診。ひとり発熱と食思不振・黄疸を呈していて、採血をして持って帰ると予想通りにデータが悪化していて、即日入院となってしまった。──これで二ヶ月間で三人も入院患者が出てしまった。うち二人は安定していると思っていたんだけどなぁ。

夜は当直。聖戦前に疲労をため込む形。(違) これで体調崩したら、スタッフから袋だたきだな....
当直の最中にライトノベルファン度調査などを見つけてつい読みふけってしまう。(投票したかったな....)
そのデータを用いたまつもとかなめさんのクラスター分析や主座標分析の結果もなかなかおもしろい。
わたしの位置がどの辺と考えてみると、かなりつかみづらくて、これはつまりもう少したくさん読めってことですかね(爆)

二十八日

当直終了後、有明聖戦に参戦。相方を引きずっていく。
一日目はあまりチェックしているサークルもなく。「猫の地球儀」のパロディ小説なんかを見つけていた。他には救護室のスタッフから「ダブったから」と売られた「ヒカルの碁」の同人誌など。

夜は救護室のお食事会。おいしい中華をいただいた。
その前に一度上野へ出て、白山堂でメガネを受け取る。レンズがほぼ真円に近いかたちのフレームで、形が気に入ったのだがかけてみるとどこかコミカル。ま、遊び系中心ということで。

二十九日

聖戦二日目。
チェックしてみるとこの日が主戦場という感じ。創作小説・SFジャンルなど。でも、事前にチェックしていなかったので、以前に買ったところで続きを買おうと思っていたところの名前が出てこず。ちょっと残念、かな。
小熊さんのところに行ったおり、喫煙者の行く末をリアルに話していたら、お隣の方はスモーカーであったり。気分を害されていたらごめんなさいというところ。しかしまぁ、健康とは中庸の中にあるのかもしれずと思ったりした。

救護室的には胃腸炎が大はやり。吐く・下すがなくても、腹部のむかつきがある人の熱を計るとだいたい37'7℃くらいの発熱が。胃腸薬のませて「早く帰りましょうね」と諭すこと多数。
のどの痛みや咳で動けなくなることはないけれど、吐いたり下したりすると脱水も重なって動けなくなるんだよね....。

三十日

この日は実家でもちつき。これまではあっさりぶっちぎっていたのだが、さすがに諸般の事情がでてくるため参加。
妹夫婦も勢ぞろいして、母親の従兄弟(だれかこの関係を一言で言い表す言い方を教えてください)や再従姉妹もきた。一日で合計六臼のもちを制作、のしもちや鏡餅などに化けた。昼はあんこやきなこ、辛味餅など。
夜は当直。週末から大量の入院があり、調子の悪い人もありで大忙しだった。

三十一日

大晦日。
当直明けのあとは、午前中病院にとどまって業務を片づけてから帰宅。 その後は正月準備。ちょっと買い物して、外食して。紅白など見てから眠りについた。  


Written by Genesis
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