歳時記:十一月の項

二日

‥‥‥信じられないほど、今週は忙しかった気がする。おかげで日記を書く暇もなかった。
今当直中で(苦笑)、今月から本直(一人立ち)なのだけれど、その記念すべき初日はかなり平穏に過ぎた。やはりわたしは運がいいのだろうか(笑)。

四日

多少のんびりと休日を過ごす。
加納朋子「掌の中の小鳥」(創元推理文庫)読了。わたしにしては珍しくミステリなのだけれど、文体や話がそこはかとなくファンタジー。「ななつのこ」(創元推理文庫)もそうで、題材も話の展開も超自然なところはないのだけれど、話の全体を通して感じる雰囲気がなんとはなしにファンタジック。

六日

夜、研修委員会。
国試合格後、病棟で働き始めてからの五ヶ月を振り返ってのまとめをし、今後の研修に向けてのことを話し合った。改めて振り返ってみると、半年前の自分とは大違いだと感じる。もちろん至らないことなど山ほどあるけれど、身につけたこともたくさんあると感じる。
今後に向けての課題も出された。さて、仕切り直しである。
まずは日常業務に加えて、たまっている退院時サマリーの作成だな.....(自爆)

八日

なんだか今週は妙に忙しい。一つには少しでもサマリー作成の仕事をやっておこうと遅くまで残るせいだけれども。
一応タイムカードなどもある(けれども別にこれで遅刻欠勤等を判定しているわけではない)のでできるだけ押すようにしているのだけれど、今週は午前様が2回に23時台が2回。なんか研修医みたいな生活だなぁとか(ぉ 思ってみたりする。

十一日

せっかくの日曜日、のんびりと惰眠をむさぼっていると電話が鳴った。
出てみるとどこぞの会社からの電話で、要は節税をしませんかとのこと。源泉徴収でとられている税金の半分くらいは返ってきますとか言ってたんだが.....ほんとかねぇ。
医者の収入構造はかなりゆがんでいて、本業よりアルバイトの方が儲かるということになっている。本業の方では暮らしていけないからみんなアルバイトをやるのか、それは定かではないが。
「ウチの親父殿よりいい給料をもらっていて、その上節税に精を出す気はありません」と言ってやったら返す言葉がなかったようだった。

十三日

風邪をひいたらしい。喉が痛んで、時折咳やくしゃみが出る。職場ではインフルエンザワクチンの予防接種が行われていたのだけれど、そんな状態だったので延期とした。
そろそろローテーションの変わり目が近いということで、何となくわさわさした気分。年度末という感じだろうか。

十四日

午前中は救急外来、これが午後までかかり、その後病棟の仕事をやっていると当直の時間になってしまうというハードスケジュール。
以前「つく」医者とそうでない医者がいるという話を書いたけれど、看護婦さんにもそういう巡り合わせがあるという。今日の救急外来の担当の看護婦さんは「わたしつくのよ」という人。その言葉の通り、午前十時過ぎから二時過ぎ(つまり引き継ぎの時間)まで引きもきらずに患者が訪れる。その中にはS状結腸捻転なんて一歩間違うと大変なことになる病気まで含まれていて冷や冷やものだった。
ちなみに午後もやっぱり大繁盛で、とどめにCPA(来院時心肺停止)の患者が搬送されてきたという.....。

そいでもって本日当直。
この日の特徴はICUの重症患者のことで呼ばれることが多かった(ような気がする)ことだろうか。人工呼吸器管理下の患者の血圧が下がってきたとか、同じく人工呼吸器管理下の患者の心電図モニターに不整脈が出始めたとか。ひたすら一緒に当直の先輩医師に頼っていた気がする。

十五日

当直てん末の続き。
なんとか患者さんの状態が落ち着いたところで寝に行く。三時間近く寝ただろうか。
幸福な眠りを醒ますポケットベル。寝起きの頭で枕元の電話器を掴む。救急外来からだ、入院かな、などと思いつつ電話をかけると、電話に看護婦さんはたった一言。
「挿管するので来て下さい」
つまりは救急で来院した患者さんが即座に挿管する必要があるほど悪かったらしい。慌てて救急室に下り、ERチックな(^^;救急処置を行ったのち、ICUに入室となった。

この日の特記事項。
当直明けであんまり寝られなかった割に、昼過ぎのカンファレンスで寝なかったことは誉められていいと思う、うん。(死)

二十一日

医局にはADSLが引かれているのでときどき趣味の画像なぞ見ていたりする。(死)
そんなわけで、侍魂からたどって「先行者」のムービーなんぞをネタにして雑談していたりしたのだけれど。
そこに通りかかった某若手整形外科医師に「こんなんあるんですよ〜」とお話したら。「う〜んこれ(先行者)、整形外科的にはいちおうしっかりしてるんじゃないかな〜」とのお答え。
‥‥‥そーゆー観点から問題にしていいのだろうか。(^^;
ちなみにこの先生女性だけれど、「整形外科医になってから、ゴリラの大きなぬいぐるみを買ったのよ」との逸話を披露してくださり。曰く、包帯巻くのやシーネ固定の練習に使ったのだそうだ。「五本指があるぬいぐるみってあんまりないでしょ?」とのことでしたが.....。

二十四日

週末ということもあり、家族揃って父親の誕生祝い。妹の彼氏などもそろってわいわいと中華料理を楽しんだ。
‥‥‥料理は美味しかったのだが、食べている途中で少々顔のこわばる感じや腹部不快感を感じ。不快感は飲み過ぎたせいかも知れないが、顔のこわばる感じは三叉神経の走行に沿うような感じがあって、もしやこれがチャイニーズレストラン症候群というやつだろうかと考えていたりした。
そう思いつつ料理は全部平らげたのだけれど。

終わってから家に戻り、そのあと妹の友人(と彼女の旦那)らと一緒にボウリングに行く。なんだか思うようにスコアがのびない日であった。

二十八日

水曜午前は救急外来。もっともこの日はお客さま(違)も少なく、穏やかな午前。
まったりしながら業務をすすめて、昼食をとりに行き、医局へ戻る途中でベルが鳴った。「おしっこが出なくてお腹が痛い、という人が来てます」とのこと。
実はつい数日前、泌尿器科のDrを講師に「泌尿器科的救急疾患への対応」をレクチャーしてもらったばかり。おしっこが出なくて、膀胱に溜まって張ってしまっている(専門用語では尿閉という)についても話があったばかりで、記憶もまだ新しい。
対応の仕方が分かっている病態であるならこちらも気が楽。いくつか問診をとって、腹部エコーで本当に尿が溜まっていることを確認して、尿道カテーテル挿入を試みる。難なく入って尿が出だすと、苦しそうだった患者さんの表情がすっと楽そうになる。
ああよかった、と思う一瞬だった。


Written by Genesis
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