Program Note


J.S.バッハ クリスマス オラトリオ BWV248


 キリスト教では、12月25日から翌年1月6日の顕現日までを降誕節と呼びます。クリスマス・オラトリオは、1734年末からの降誕節の礼拝のためにバッハが作曲したカンタータの総称です。今日はその後半、第Ⅳ部、第Ⅴ部、第Ⅵ部をお聴きいただきます。
【第Ⅳ部】
 37番の歌詞にあるように、幼子は生後8日目にイエスと名付けられました。このことから12月25日から数えて8日目、つまり1月1日は主の命名日とも呼ばれています。この第Ⅳ部は、1735年1月1日の礼拝のために作曲され、各所にイエスの名が歌われます。
 39番のアリアにはソリスト/オーボエ/こだまの掛け合いがあります。ソリストの「私は(死を)喜んで受け容れてよいのですね?『然り』、救い主であるあなた(=イエス)自ら『然り』と言ってください。」との問いかけに、まだ生後8日のイエスが(こだまとして)”ja”と答えます。クリスマス・オラトリオの中でこの曲でだけ、イエスの声を聞くことができるのです。
【第Ⅴ部】
 星の光を見てやって来た、東方の占星術の学者たちが登場します。46番のコラールでは「あなた(=イエス)の・・・光を、私たちが永遠に見つめることができますように!」と唱い、53番のコラールでは「(私の心の部屋は)あなたの恵みの光がそこにわずかに差し込むやいなや、太陽で満たされた」と唱います。
【第Ⅵ部】
 この曲は顕現日である1735年1月6日の礼拝で演奏されました。58番で、占星術の学者たちはイエスにひれ伏し、黄金、乳香、没薬を献げるのですが、その直後、59番のコラールは「私はあなたが眠る飼い葉桶の傍らに立っています。・・・あなたが私に与えて下さったもの、・・・私の精神、思い、心、魂、勇気の全てを受け取ってください」と唱います。
 イエスの存在を恐れたヘロデ王は、学者たちに、イエスを見つけたら居場所を教えるよう求めますが、学者たちは夢のお告げに従いエルサレムには戻りませんでした。終曲64番のコラールでは、神の力に私たちが守られていることの感謝が唱われます。トランペットも加わり輝かしく響き渡りますが、そのメロディーはマタイ受難曲で何度も唱われる、ハスラーの受難のコラールです。イエスが、自らの受難によって人々を救うために生まれてきたことを、バッハは音楽で表わしたのです。

東京オラトリエンコール団内指揮者 秋吉 亮


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