Program Note


カンタータ 第147番《心と口と行いと生き方が》BWV.147

 ルカ福音書のマリアにまつわる記述は、バッハのカンタータの題材になっています。それがカンタータ第147番《心と口と行いと生き方が》です。 バッハにとって、ライプツィヒのトーマス・カントルとしての職務の中心が、毎週んお主日および祝日の礼拝のためにカンタータを作曲することだったと言っても過言ではないでしょう。 ライプツィヒの主要教会である聖トーマス教会と聖ニコライ教会にて、トーマス合唱団の選りすぐりの第1合唱団を率いてカンタータが演奏されました。 とりわけ最初の3年間、バッハは毎週自ら新作を作曲して上演する(つまり、年間にして約60曲!)という驚異的な仕事ぶりを見せました。 現存する200曲を超えるカンタータは、どれも非常に美しく、かつバッハのルター派信仰の強さを物語るものとなっています。
 このカンタータが初演されたのは、ライプツィヒに着任して間もない1723年7月2日のマリアの訪問の祝日のことです。 (その後、バッハの生前に2度再演が行われています。)ただし、このときに一から作曲されたわけではありません。ヴァイマールの楽師長だった1716年、待降節第4祝日のために作曲した原曲を改稿し、アリアの歌詞を祝日に合うよう変え、レチタティーヴォとコラールを新たに作曲して上演したのです。 詩はヴァイマールの宮廷詩人ザロモン・フランクが1717年に出版した『福音派の主日・祝日の祈り』から採られています。
 2部構成、全10曲からなります。トランペットのソロで華やかに幕を開ける冒頭合唱は、フーガによって「心と口と行いと生き方が」が強調され、それが救い主であるキリストの証となることが表されています。 続くテノールのレチタティーヴォで、マリアの賛美、そして対照的に罪深き人間への呼びかけへ。 第3曲のアルトのアリアは、オーボエ・ダモーレを伴い、イエスを信じるよう勧める内省的なアリアです。 第4曲のバスのレチタティーヴォで特徴的なことは、通奏低音の音型が描写的で、歌詞内容をよりありありと思い描かせるところでしょう。 ソプラノのアリアのあとに、かの有名なコラールが続いて第1部は終わります。このコラールは、マルティン・ヤーンのコラール《イエスよ、私の魂の喜びよ》の第6節を、ヨハン・ショップの旋律で歌うものです。 第2部冒頭の「助けてください、イエスよ」と始まるテノールのアリアは、3連符の通奏低音によって、その切なる思いが表れているようです。 そして第8曲のアルトのレチタティーヴォでは、マリアがエリザベトを訪問した際のイエスとヨハネの相似的な出会い、という重要な場面が描かれます。 ここには2本のオーボエ・ダ・カッチャ、つまりバッハがしばしば愛の寓意として用いた楽器が絡みます。 第9曲のバスのアリアで、再びトランペットとともに華麗にイエスへの賛美が歌いあげられます。 終曲は、第1部のコラールと同じ音楽がヤーンの第16節で歌われます。この穏やかで幸せに満ちた音楽で、カンタータ全体が閉じられるのです。

高野 昭夫(ライプツィヒ・バッハ資料財団国際広報室長)


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