合唱団たちばな

平野淳一の作品をうたうジョイント・コンサート


曲目解説


混声合唱組曲ひとりぼっちの夏  作詩:立澤 保彦

 合唱団たちばなの委嘱により作曲、1983年11月15日 中央会館大ホールにおいて、指揮:岡本俊久、合唱:合唱団たちばな、ピアノ:清水裕子により初演されました。この合唱組曲のもとの詩を書かれました立澤保彦氏は、若干28歳の若さで病気のため他界されました。保彦氏が遺された命の証しとも言える詩と散文を、ご家族が遺稿集『ひとりぼっちの夏』として出版されました。きょうお聴きいただく組曲は、このご家族の保彦氏に対する深い愛情と、岡本俊久氏のひたすらな熱意と、合唱団たちばなのあたたかなご厚意によって生まれた作品です。
 岡本氏は、初演プログラムに次のようなことばを寄せています。その一部をお借りしますと……。

 遺稿集『ひとりぼっちの夏』は、保彦の成城学園時代からの詩と、病気と闘いながら書きつづった日記とを中心に構成されています。見方によっては、あまりにも刹那的に生きた一人の若者の馬鹿げた愚痴とも言えるかも知れません。けれども生前の彼を知る者には、自分の死を予感するが故に、いつも誰かを愛し、その愛故に、自分自身の存在(=生)を確認しようとしていたとも思われます。

第一曲「星」
若者特有の迷いだけではなく、そんな自分への迷いを感じるのです。
第二曲「君はレイラ」
恋の真最中、つかめそうでつかめない気分屋さん、そんな彼女を風にたとえたのでしょう。
第三曲「深紅のバラが朽ちる…」
若者の恋の悲しい結末。どちらからともなくはなれ、彼女への想いも醒めていきました。
終曲「ひとりぼっちの夏」
愛も終わり、病室に一人死と向い合い、のがれようもない孤独と闘いながら、尚自分の生を求める若者の姿があります。
 私は、本日この曲を初演するにあたって、単にひとつの愛の始まりから終わりまでの話ではなく、限られた時間をけんめいに生きた、あるいは生きようとした若者の姿を、少しでも感じていただければと思います。

(平野 淳一)


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