合唱団たちばな

第20回 演奏会


2016年5月29日に行なった「第20回演奏会」のプログラムを紹介します。

ごあいさつ
 本日はお忙しい中、「合唱団たちばな」第20回演奏会にご来場いただき、誠にありがとうございます。
 「合唱団たちばな」は、1978年4月に都立国立高校音楽部のOB,OGを中心に産声をあげました。翌1979年に名称を正式に「合唱団たちばな」とし、指揮者に岡本先生を迎え、本格的な活動を開始、同年11月に第1回演奏会を開催しました。以来、邦人現代曲を中心として、古典から現代音楽、ポピュラーまで幅広い曲目で演奏会を開催してまいりました。
 発足以来38年が経過し、今回第20回の演奏会を開催することができました。ならしてみると、2年に1回演奏会を開催してきたことになります。この38年を振り返ると、合唱団発足時には団員は大学生が中心でしたが、その後若手社会人中心の合唱団、中堅社会人中心の合唱団となり、今や還暦が近づいてきた社会人中心の合唱団になってきています。気がつくと、団員の子供たちが合唱団発足時の団員と同年配になってきており、感慨深いものがあります。この間、岡本先生には1回も欠けることなく、毎回指揮をお願いしております。
 さて、本日の演奏会は、第20回の演奏会を契機として初心に帰る意味を込めて、第1部では懐かしい小山章三の無伴奏作品を3人の指揮者によりお届けします。第2部以降は団員にとって手強い曲ばかり並びますが、一同、心を込めて精一杯歌わせていただきます。
 「合唱団たちばな」が、今後還暦を過ぎた社会人中心の合唱団となっても活動を継続できますよう、皆様のご支援を引き続きよろしくお願いいたします。


♪♪♪ プログラム ♪♪♪
1st Stage …… 3人の指揮者による 小山章三作品集


混声合唱組曲 「信濃の秋」
 1 旅のおもい
 2 藁焚くけむり
 3 河原の月

混声合唱組曲 「三つの秋のうた」
 1 港
 2 秋晴れ
 3 たき火

混声合唱組曲 「三つのゆうべの歌」
 1 雨と野茨の夕べ
 2 故郷
 3 祭
作 曲

指 揮
作 詩



指 揮
作 詩



指 揮
作 詩


小山 章三

秋吉  亮
勝  承夫



岡本 俊久
江面 幸子



松島  豊
大木 惇夫
大木  実
北原 白秋
2nd Stage …… 混声合唱組曲 「レモン哀歌」
 T あどけない話
 U 山麓の二人
 V 千鳥と遊ぶ智恵子
 W レモン哀歌
作 曲
作 詩

指 揮
ピアノ
平吉 毅州
高村光太郎

岡本 俊久
米良 賀代
3rd Stage …… Birthday Madrigals

 1 It was a lover and his lass
 2 Draw on, sweet night
 3 Come live with me
 4 My true love hath my heart
 5 When daisies pied


作 曲
作 詩




指 揮
ピアノ
John Rutter
William Shakespeare
John Wilbye
Christopher Marlowe & Sir Walter Raleigh
Sir Philip Sidney
William Shakespeare & George Peele
秋吉  亮
米良 賀代
4th Stage …… 混声合唱とピアノのための組曲「静かな雨の夜に」
 1 夢
 2 かつてもっていた
 3 十八歳
 4 天の断片
 5 静かな雨の夜に
作 曲
作 詩

指 揮
ピアノ
松下  耕
谷川俊太郎

岡本 俊久
米良 賀代



曲目紹介
3人の指揮者による 小山章三 作品集
 昭和から平成へ元号が変わって、もう28年も経つんだなあ。
 第1ステージに登場する三人の指揮者は、いずれも昭和生まれの昭和育ち。もちろん青春時代は(たぶん)音楽(合唱)三昧の学生生活を送っていた。
 そして、この三人が今日披露する合唱曲は、やはり昭和生まれ、昭和育ちの、日本を代表する作曲家、小山章三が作曲した作品である。
 この時代の合唱曲を歌うと、本当にあの時代の映像が、なぜかカラーではなく、セピア色でフラッシュバックされる。
 ススキが揺れる信濃の川原。海の見える小さな漁師町。山あいの田舎の村etc…。
 どれをとってもレトロな懐かしい景色である。都会では、まして平成時代の今日では殆どお目にかかれない情景がそこにある。
 カラオケなんて無い時代に、古ぼけたピアノの回りに集まり歌い合った。その頃を思い出し、やさしく、ていねいに、あたたかく歌いたい。日本語をみなさんに伝えたい。
 そんな思いを抱きながら、三人三様のこころを込めて―――。
<なんだぁー。まったく曲目解説になってないじゃん!>(松島 豊)


混声合唱組曲 「レモン哀歌」
 「レモン哀歌」は、彫刻家で詩人の高村光太郎の有名な詩集「智恵子抄」の中の一つの詩の題名である。
 高村光太郎の妻智恵子は、統合失調症の末に昭和13年肺結核で死んだ。光太郎自身も後年同名の病気で身罷っている。その愛と狂気と死の記録である「智恵子抄」の中の4つの詩を、平吉毅州はこの魂を揺さぶるような劇的な合唱曲にしたのである。
 「智恵子抄」は映画、戯曲、能、小説、オペラなどに脚色され、歌曲や歌謡曲にさえなった。NHKテレビでも一昨年2度特集番組が放映された。合唱曲では、他に清水脩や鈴木輝昭が作曲している。光太郎と智恵子の愛と死に捧げられた数々のオマージュ。
 人は皆、愛し愛されることで、その寄る辺ない命を支えられているのではないか。「愛とは、存在するいっさいの根源に遡る道である」と言った愛の哲人。光太郎は智恵子と語り、抱きしめ、口づけし、智恵子の死後も智恵子と共に生き、やがて智恵子は光太郎にとって「万物」となり「永遠」となり、光太郎の智恵子への愛は自らの存在そのものとなったのである。
 どうしても冷静には歌えない曲なのだ。歌っているうちに何かがこみ上げてくる。そうなれば、もう、私たちは、作曲家の仕掛けに身をゆだね、こみ上げるままに素直に歌うほかないと思う。
(荒木孝一)


Birthday Madrigals
 作曲はジョン=ラター(John Rutter、1945年ロンドン出身。現代イギリスを代表する作曲者、指揮者)。
 この曲は、ジョージ=シアリング(George Shearing、1919〜2011、ロンドンで生まれアメリカで活躍した、盲目の伝説的ジャズピアニスト)の75才のお祝いとして、チェルテンハム バッハ合唱団の指揮者であるブライアン=ケイの招待によって作曲され、1995年、作曲者自身の指揮によって初演された。歌詞はいずれも、イギリスでマドリガル(多声の合唱曲。多くは世俗曲)が多く作曲された時代、つまり16世紀後半から17世紀前半にかけての詩から採られている。
  1. “It was a lover and his lass” William Shakespeare (1564〜1616)の喜劇「お気に召すまま」第5幕第3場より、恋人たちの春を歌う。
  2. “Draw on, sweet night” 作詞はJohn Wilbye (1574〜1638) 彼自身、マドリガル作曲家として著名であり、このDraw on, sweet nightも代表作である。大人の歌。
  3. “Come live with me” Christopher Marlowe (1564〜1593)作詞の「若き羊飼いが恋人に贈る熱き思い」を男声が長調で歌うのに対し、女声がSir Walter Raleigh (1554〜1618)作詞の「ニンフから羊飼いへの返し歌」を短調で歌い、羊飼いをたしなめる。その掛け合いが5回繰り返され、最後は・・・
  4. “My true love hath my heart” 作詞はSir Philip Sidney (1554〜1586)。愛する彼の心と私の心とを取りかえて、としっとりと歌う。
  5. “When daisies pied” 1節と2節の歌詞はWilliam Shakespeare (1564〜1616)の喜劇「恋の骨折り損」第5幕第2場より。3節はGeorge Peele (1556〜1596)による。少年少女に「この歌詞はどーゆー意味?」と聞かれたら答えに窮するだろう。
(秋吉 亮)


混声合唱とピアノのための組曲「静かな雨の夜に」
 楽譜巻頭に作曲者も記しているが、
 〜〜〜曲は5つの曲から成っている。テキストにさせていただいた谷川俊太郎さんの詩は、どれも氏が若い頃の作品であり、4編を『十八歳』という詩集から、1編を『二十億光年の孤独』という詩集から選ばせていただいた。どの詩も美しく、心打つものばかりだ。どの曲も、詩の美しさを際立たせよう、と思いながら書いたものである。どうか、美しい詩を噛み締めながら、じっくりとこの組曲に取り組んでいただきたいと思っている。〜〜〜
 ハイ、カシコマリマシタ!!と、素直に取り組んではみたものの、道は険しく厳しいのは世の常。微妙な響きの音を探り探り、自由自在に変化する拍に呆然としながら・・・・・・シンジュク・シブヤ・シンオオクボと時にはナンジャモンジャの暗号を唱えながら練習した日々。
 谷川俊太郎さんが17〜18歳の頃、只々止まらぬ衝動からノートに書き続けていた詩の世界を表現できるか?
 そう、そして私たちは、終曲「静かな雨の夜に」を心穏やかに歌って皆様にお届けしたいと思っております!!!
(中司浩子)


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