「アートたけしのモロトピア/知られざるマッドメン」

(月刊スサノオ 1994年12+1月号より再録。ただし一部改稿)



 「マッドメン」の初出は、1975年発行の少年チャンピオン増刊8月号で

した。



 残念ながらこの初出誌は持っていません。後に東京三世社の「少年少女SF

マンガ競作大全集」に再録されたもので伺い知ることができるのみです。しか

し「雑誌への再録には加筆訂正しない」という、他の作品のパターンもあるの

で、この再録作品と、初出作品はほぼ同一のものといっていいと思います(お

持ちの方がいらっしゃったらご教示願います)。



●ジャンプスーパーコミックス版「徐福伝説」所収版

 再録版と同じものです。



●少年チャンピオンコミックス「オンゴロの仮面」所収版

 本作はオンゴロシリーズの第1話として位置付けられ、再構成されていま

す。オリジナルにはなかった一樹おじさんの登場シーン、新宿ビル街の見学シ

ーン、コドワから波子へのブタの歯の首飾りの受け渡しシーンなどが追加され

ました。

 首飾りは「鳥が森に帰る時」でもらうはずなのだから、ちょっとヘンではあ

ります。ただ一方で、「鳥が森に帰る時」は、この単行本シリーズ全2巻には

収録されておらず(出版社が違っていたという事情もある)、当時諸星さんと

しては「鳥が・・・」を別世界の話として捉えていたフシがあります。第2巻

の表紙裏では「いつかまた続編を・・」というようなことを書いておられまし

た。コドワと波子は神話のループを抜けて楽園へ旅立ってしまったのだから、

普通に考えれば続編も何もないはずです。多分マッドメンには、「オンゴロ」

系列の世界と「鳥が・・」系列の世界があり、続編は後者に続く形で書かれる

のだろう、と勝手に考えていたのは私です。

 で、肝心の件に入りますが、本作にはン・バギが登場しません! かわりに

登場するのは、妖術によって電信柱が化けた蛇です。

 しかしこの仕打ちは全国津々浦々のン・バギファンの総スカンをくらい、何

故カットしてくれた、第一蛇はコドワの敵悪霊アエンの象徴なのだから、話が

おかしいじゃないか、といった抗議が殺到したとかしなかったとか(想像)。

という訳か知りませんが、なんと次の



●少年チャンピオンコミックス「オンゴロの仮面」第6版以降所収版

 では、なんとン・バギが復活してしまいます! ページを同一に納める都合

でもあったのでしょう、せっかく付け加えていた都会のビル街のシーンなどは

カット。同じ単行本の別版で内容を変えてしまうとは、天才のこだわりの、な

んたることか!



●秋田コミックス・セレクト「マッドメン」所収版

 ン・バギは戻ったまま。上記第6版以降を下敷きにしています。また、他の

内容も多少差し変えられています。ある部分では、オリジナルに戻したものも

あります。



●ちくま文庫「完全版『マッドメン』」所収版

 上記のものとまったく同じです。

 ところで本の出来としてみると、この「完全版・・」はちっとも完全ではあ

りませんでした。先に書いた続編に関する私の深読みにもかかわらず(泣)、

「鳥が森に帰る時」が追加され、全作が1冊の本で読めるようになった、とい

う意味では、「完全」だったのかもしれませんが・・・

 もともと各作品が変則的に配列されていた少年チャンピオンコミックス版

を、無理矢理時系列に沿って配列して、「鳥が・・」を無造作につっこんでみ

ました、的な作りです。少年チャンピオンコミックス版では構成の都合上入っ

ていた注釈的なページをそのまま残すものだから、知らない読者は随分混乱

し

たはずです。諸星さん自身からのクレームでもあったのでしょう、案の定第2

版以降では、その不要になったページが抜かれています。

●中央公論社版「マッドメン 諸星大二郎作品集」所収版

 ン・バギを残しながらも、少年チャンピオンコミックス第5版以前にあった

ビル街シーンなどが復活しています。第5版以前と第6版以降の良いところを

繋ぎたした感じです。現時点において最も「完全」に近いものであるといえる

でしょう。

----------ここまで



補足:

 諸星野会議室では書かなかったけれど、中央公論社版でわざわざ「最も『完

全』に近い」と書いたのには理由があります。中央公論社版では、少年チャン

ピオンコミックス版のところで書いているような首飾りの受け渡しシーンが二

重にある問題が、「鳥が・・・」の方をさりげなくカットすることにより、一

見解決されています。しかし、このカットされたシーンを、後に波子が回想し

てしまう! もしさらなる新版が描かれるなら、真っ先に改稿される部分では

ないでしょうか。





 リスト以外にも、書きたいことがいっぱいあるのですが・・・

 今日はこのへんまで、ということで。



 アートたけし

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