アートたけしのモロトピア特別編 諸星大二郎クロニクル(2) 「ジュン子・恐喝」 28ページ 「COM」1970.12月号 1970.12.1発行 「ぐらこん」第十七回月例新人賞入選作(COM新人賞候補)。諸星義影 名義。 以下は、つのだじろう氏によるコメント。 みごとです。作者が二十一歳とは思えない。おとなの世界の微妙な心理を、 かなり巧みに描いています。むりに酒を強いるクダリ、男が逃げるとき、けと ばされたバケツが階段をころがる音、雨の母子づれ・・・・・・なんでもないような ことなのですが、いずれも眼に見え、耳に聞こえるようです。ぼくは自分のア シスタントにこの絵を見せ表現の研究をするようにシッタしたほどです。 絵はまだ稚拙・・・・・・ともいえるし、素朴であるともいえます。現在のプロ作 家の画風に荒らされることなく、自分の持ち味をそのまま自分の要求に従って 描こうとしています。けしてきれいな線とはいえませんが、それが、うらびれ た街、女の心の中、とマッチしています。ただ、斜線の描きこみすぎには注意 しなければなりません。一カット一カットには効果はあっても、全体に同じ力 の量で描いていくと、コマの流れの中に、息をつくところがなくなってしまう のです。しかし、この絵にはひとコマひとコマに作者の意図が含まれており、 生きて息づいていることは確かです。 欲をいえば、回想シーンが多くて、本筋となるべき現在のストーリーが、や や薄らいでしまったこと。過去のことをくどくど描くより、現在の動きの中 で、過去をチラリとみせるように整理、構成すれば、もっと読者に肉迫したの ではないでしょうか。 また、雨の中のおばさんにしても、その場での情緒を出すために使われてい るにすぎないのです。雨の中と、最後のシーンで主人公ふたりに触れること で、読者の心にチクリと針をさすのだけれど、伏線にはなりきっていないので す。もっと深い役づけをしてもらいたかった。 さらにつけ加えると、主人公の女の子に、夜の世界に住む生活のアカくささ が出ていればなおすばらしいものになったと思います。 とにかく秀作です。 =おせっかい情報= この作品はのちに第四回COM新人賞を受賞。 「諸星大二郎全作品リスト」では、その感想が1970年12月発売のCOM?号 に載ったとある。が、年間新人賞の発表は1971年4月号誌上。よって感想掲載 も同号と推定。ここにお詫びして訂正いたします。これって、(1)でも書い たなあ(^^;)。 「ぐら・こん」の「今月の投稿者」の中には金子修介の名が。えっ、あの金 子修介? =蛇足= 「諸星大二郎クロニクル」って、「クロニクル」を日本語にしてツメると、 「諸星年代記」なんですね。「火星年代記」と一字違い。いや、ただそれだけ なんですが・・・ アートたけし NIFTY-Serve JAD01710 kv9t-kwmr@asahi-net.or.jp
★アートたけしのモロトピア 諸星大二郎クロニクル(4) 第四回COM新人賞受賞追伸(「ジュン子・恐喝」補足)に 続く