アートたけしのモロトピア特別編 諸星大二郎クロニクル(5)



第四回COM新人賞発表(「ジュン子・恐喝」補足2)

 「COM」1971.5・6月合併号 1971.5.1発行





第四回COM新人賞



 受賞者 芥 真木

 受賞作 「序曲」(四十六年二月号ほか『COM』誌上発表の一連の作品に対して)



読者アンケート結果

 応募総数 65通

 芥 真木 52通

 諸星義影  9通

    他  4通





 以下、選考委員による推薦文から、一部を抜粋。





安定した芥さんを...... 赤塚不二夫・長谷邦夫

 

 将来性ということに関しては、諸星さんも芥さん以上のものを感じさせ、な

かなか優劣をつけるのに苦しみましたが、これだけの実力を持っている人なら、

もう一年『COM』誌上において常に上位を占めつづけ、来年度の本命受賞に

賭けてもいいと思いました。

 その大きなポイントはプロとしての絵柄の魅力をもう一歩、つけ加えてほし

いということです。





しいて諸星氏をとる 藤子不二雄



 正直いって、今回の選考には迷った。候補作二本のどちらにも決定的なポイ

ントがなかったためである。けっきょく<しいてどちらかを・・・・・・とい

うことになれば>という但しつきで、諸星義影さんの「ジュン子・恐喝」をとっ

た。

 今は平凡な幸せに生きている女のところへ昔のヤクザな男が現れる・・・と

いう話は、まことにありふれているし、話の発展にも新しい発見がない。だが、

ベタのないガサガサした線画のタッチが独特の生活感をよくだしていてストー

リーの欠点をカバーしている。

 諸星さんは、広い意味での生活派まんがをどんどん描いてもらいたい。





該当作ナシ...としたい つのだじろう

  

 芥さん、諸星君は現在の力では、新人賞を得て、まんが界に新風を送り込む・・・

という意味においては力量不足、もうひとつ力をつけてほしいし、今後に期待

したい!

 そういう理由から本年度は該当作ナシ・・・・・・が適当と考える。

 「序曲」「ジュン子・恐喝」の二編からいづれをとるか・・・・・・といわ

れれば、芥真木さん「序曲」が上位であろう。

 ストーリー構成、画面のすみずみまで行きとどいた密度の濃い神経・・・・・・

の点ではもんくなく諸星君をとるが、年度を代表する、年間新人賞・・・・・・

ともなれば、いかんせん絵が稚拙すぎる。





両作品を推す ちばてつや



 両者ともに新人賞に推せるだけの力は持ちあわせている。しかし、はかりに

かけてみると諸星氏の「ジュン子・恐喝」のほうが、ズシンと重く感じられる

のである。間の取り方とそのつなぎのテクニックや、女を浮き彫りにする感覚

は卓抜である。しかし登場人物に表情が乏しいのはおしい所である。いつでも

顔をしかめているのだ。潜在的なものを描こうとしているのだろうか。人間は

悲しいときでもうれしくてももっと複雑な顔をしているものだ。





真のまんがを求む 石森章太郎



 あえて芥真木さんを推す。

 両者とも一長一短であるが、リアルさという点では「ジュン子・恐喝」のほ

うが上である。

 諸星氏を推さないのは、諸星氏の作品がよければよいほど、まんがでしか表

現できない世界から遠ざかってしまうのである。芥さんの作品には、まんがで

なくては表現できないものを、より多く描かれているのである。

 諸星氏はリアリズムに徹している。しかしこういう作品はよくできればでき

るほど読者を憂うつにさせるし、心理描写が観念的になってしまうのだ。





「結び目」を推す 手塚治虫



 芥さんの作品の独特な味を買いたい。三作のうちでも「結び目」を推薦した

いのだが......

 諸星氏は若さに似あわず、冷たすぎるのである。なぐり描きだけはしないで

ほしい。





=おせっかい情報=

 なんといきなりの番狂わせ! 諸星氏は、第四回COM新人賞を受賞してい

ませんでした。受賞者は芥真木氏。

 受賞作品として、また選考作品として、ノミネートされていた「序曲」以外

の作品を挙げているのは掟破りのような気がします。

 手塚治虫のコメントも冷たすぎます。後年の、「スーパー鼎談」でのあの変

わりよう、ライバル視は、一体・・・?





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